【インタビュー】来日直前!ルーファス・ウェインライト単独独占インタビュー

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――オペラ以外にも、クラシックの祭典である“BBC Proms”に出演したり、オペラ歌手のレネ・フレミングとコラボしたり、色んな形でクラシック界への接近を見せています。自分が受け入れられつつあるという実感はありますか?

ルーファス:幾つかのことが起きていると思うんだ。まず、クラシック音楽界そのものが以前とは違う状況にある。オーディエンスがどんどん高齢化している上に、殊にヨーロッパの経済危機で、業界に流れ込むお金も減った。今や政府の補助はカットされて、違法ダウンロードの問題もあるしね。そんな中、クラシック音楽界には僕を崇拝してくれている人がいる。僕をもっと引き込みたいと思っている人がいる。僕がちゃんとクラシック音楽を理解していて、心底愛していることを、彼らは知っているから。でもその一方で、僕の闖入を不快に思って、嫌悪感を抱いている人たちもいる。それも最初から予期できたことだけどね。僕自身、自分が果たして今後偉大なクラシック作曲家になれるのか否か、全く見当がつかない。少なくともベートーヴェンやストラヴィンスキーのレベルには絶対到達することはないだろう。そういうタイプの天才的な作曲家じゃない。でも、オペラの世界に貢献できるものを僕は持っていると思う。オペラは、知識階級に乗っ取られてしまっている気がするんだよね。一般の人たちから切り離されている。そういうオペラの世界に、僕の居場所はあると思うんだ。弦楽四重奏曲は恐らく書かないだろうけど、オペラはまだまだ書き続けるつもりだよ。

――同時にポップ・ミュージックも作ってゆくつもり?

ルーファス:うん、ポップ・ソングはずっと書き続けているからね。ポップ・ミュージシャンとしてのキャリアについても僕にはセオリーがあって……僕が最後にアルバムを発表してからすでに2年が経っていて、次のアルバムを作るのはまだ2年くらい先になりそうなんだけど、今はすごく健全な状況にあると思う。これからは、じっくり曲を熟させる時間を設けたいんだ。時間をかけて、それぞれの曲が、存続させるだけの価値があるか否か見極めたい。毎年のようにアルバムを発表して、その度にツアーをして、またアルバムを発表して、衣装を変えて、整形をして……というサイクルには陥りたくないんだよね(笑)。とにかく、一定のクオリティを保ちたい。音楽の真価が見えてくるまでには時間が必要なんだよ。今はそういう時間を自分に与えているんだ。

――じゃあ次回のポップ作品の方向性はまだ見えていなさそうですね。

ルーファス:ああ。でもここしばらくは、シェイクスピアのソネットを元にしたアルバムの制作を進めているんだ。これらもポップ・ソングと呼べるんじゃないかな。歌詞はシェイクスピア作ってことになるけど、そういう意味ではゆっくりとポップに戻りつつある。心配はいらないよ、僕は帰って来るから!

――あなたはレネやデボラ・ヴォイトのようなオペラ歌手から、ロビー・ウィリアムスやビリー・ジョエルまで、実に幅広いアーティストと共演・共作しているわけですが、誰と歌っていても違和感はない?

ルーファス:僕には奇妙な能力があって、目を閉じると……歌う時にしばしば目を閉じているんだけど、目を閉じると音楽の宇宙に没入できるんだよね。だからレネと歌っていても、ロビーと歌っていても、僕には同じこと。それに僕は、自分の直感に従っているだけ。なにも計算しているわけじゃなくて、完全に無意識なんだ。ようは、あまり考え過ぎない人間なのさ(笑)、そのほうが楽だから!究極的に、僕は今も自分を基本的にポップ・パフォーマーだと、シンガー・ソングライターだと捉えている。でもオペラが僕を呼び寄せたんだよ。だからとりあえず『Hadrian』を仕上げて、様子を見ようと思っている。僕のセオリーでは、もし『Hadrian』が『Prima Donna』よりもいい作品になったら、今後もオペラを書き続ける。『Prima Donna』のレベルを超えられなかったら、それでも僕はハッピーさ。『Prima Donna』を愛しているからね!(笑)そして、自分が少なくとも1本、素晴らしいオペラを作ったという自負がある。『ニーベルングの指環』は絶対書けないにしても、僕に多くを与えてくれたオペラに、何らかの形でお返しがしたいんだ。

――フォーマットに関係なく、あなたの音楽に共通する要素はあると思いますか?

ルーファス:究極的に僕はロマンティックな人間なんだよ。コード・チェンジの重要性を信奉しているし、初期の作品ですら、当時のシーンで聴こえていた音楽とは一線を画していた。ロックンロールじゃなくて、アリアに根差した曲を書いていたからね。だから要するに……ロマンティックな人間であり、オペラを書くにしろポップ・ソングを書くにしろ、ロマンティックな作曲家なんだ。

――最近、映画音楽も手掛け始めたと訊きましたが、以前から興味を持っていたんですか?

ルーファス:映画そのものには、幼い頃に『オズの魔法使』を観て以来ずっと情熱を抱いてきた。映画は大好きだよ。そして映画のための音楽を作ることに素晴らしさは、実際に存在するとは限らないキャラクターについて、曲を書けるってことにある。僕自身の人生や身辺で起きていることに終始するんじゃなくて。ほかの人たちがどんな風に感じているのか探り出す訓練にもなるし、相手は主に架空のキャラクターだから、普段よりもイジワルになれる(笑)。もっと率直になれるよね。自分自身のことでも、自分が知っている人たちのことでもないから、辛辣な表現も使えるんだ。それに映画監督やハリウッドの業界関係者の中には、僕とコラボしたいという人が結構いて、求められたら応えるしかないからね。

――あなたの映画音楽を我々が耳にし始めるのは、いつ頃になりそうですか?

ルーファス:う~ん、2年後くらいにどっと耳にすることになるよ。随分先の話だけど、一種の爆発が起きると思っていてくれていいから(笑)。映画音楽!ポップ!オペラ!全部一気にやって来る。僕にはもうひとつセオリーがあるんだけど、40代はオペラを書いて、50代はミュージカルでも作って、60代は黙ろうって考えていたんだ(笑)。黙って、絵でも描こうかなって。だからまだまだやるべきことは色々あるよ。

――コラボしたい監督はいますか?

ルーファス:ラース・フォン・トリアーの大ファンだから、彼には興味がある。素晴らしいと思うな。あと、キャメロン・クロウと今コラボしていて、ほかにも、パリのオペラ座バレエ団の芸術監督バンジャマン・ミルピエと何かプロジェクトをやるかもしれないよ。

――家族を持ったことで、アーティストとしての世界観だったり、表現したいことだったり、何か心境に変化はありましたか?

ルーファス:あると思うし、つい最近も面白いことがあったんだ。娘は普段は母親とロサンゼルスで暮らしているから、僕が会いに行ったり、もしくはこっちに来てくれたりしていて、この夏もしばらく僕の家に来ていたんだ。そうしたらある日、本当にびっくりするような、素晴らしいことを言ったんだよ。ここでは教えてあげないけどね。なぜって僕はすかさずその言葉を拝借して、曲をひとつ書き上げたんだ(笑)。ちゃんとクレジットするし、印税は彼女にもあげるつもりだから!とにかく、近いうちに僕と娘が共作した、“ウェインライト・コーエン”の名を冠した曲が世に出ることになるから、楽しみにしていて。まだ4歳半なのに、その辺の大人よりもよっぽど考えていることは上だよ(笑)。

――かつてのあなたは「自分は結婚するタイプじゃない」と言っていましたが、40代に突入した今、家族持ちになっています。若い頃は、40代の自分をどんな風に想像していましたか?

ルーファス:っていうか、そもそも30歳になる前に死んでいるって確信していたんだよね(笑)。若い頃の僕は、ボヘミアンでニヒリスティックな生き方に身を捧げていたから。でもその後、若くして死ぬのはイヤだと思うようになった。それも、オペラに負うところが大きい。というのも、偉大なクラシックの作曲家はみんな、太った老人になってから傑作を書いていることに気付いたのさ(笑)。そういうチャンスを逃すのはもったいないからね!だからもう少し長生きすることに決めて、今ではこうして夫と娘がいて……なんていうか、40代になってようやくラヴとか親になることとか健康な肉体とか、人生が授けてくれる素晴らしいものごとを手にしたわけなんだけど、悲しいことにどんどん時間が早く過ぎてゆくんだ。どんどん加速してゆく。そしてふと悟るのさ、「なんてこった、もう人生の後半に突入しているんじゃないか!」とね。だから今は……特に母を亡くしてからは、ほかの人たちと同様に、自分に与えられた時間に限りがあることを強く意識していて、終わりが来る前に、できる限りのことをしなければという思いが強まるばかりだよ。

――若い頃はすごくこだわっていたのに、年を取ってどうでもよくなったことはありますか?

ルーファス:う~ん……おかしな話かもしれないけど、僕は何かを手放すってことはしない人間なんだよ(笑)。僕に強い印象を刻んだ宗教的コンセプトがひとつあって、それはヒンズー教のコンセプトで、年を取るにつれて人間はどんどん人格を増やしてゆくというもの。単一の存在じゃないんだ。確か7つの人格になるんだっけ?つまり、最終的にはまるで大きな木みたいにどんどん枝分かれして、それが伸びていって、若い頃の人格もずっとそこに残る。17歳の孤独な少年もいるし、40歳の分別のある父親もいるし、時には5歳の子供のような気分の日もあるかもしれない。そういうふり幅の広さを、すごく興味深く感じるんだ。知るべきことは全て知り尽くして、世界の頂点に立っているような気分になったかと思えば、1時間後には、出発点に逆戻りした気分になったりして。

――じゃあスターダムを欲する気持ちも消えていない?

もルーファス:ちろんさ!今もグラミー賞が欲しいし、アルバムを売って何百万ドルも儲けたいと思っている。そういう経験はまだしていないからね。僕の場合は、ツアーのほうがお金になる。でもそういう風に、自分が持っていないものを手に入れたいという欲望や欲求や渇望を抱き続けることが、生きる活力になるんだ(笑)。好奇心を刺激してくれる。だから僕は決して満足したくないのさ(笑)。

――最後に、日本でのライヴはどんな感じになりそうですか?今回はソロなんですよね。

ルーファス:ああ。基本的にはピアノの弾き語りで、ギターも少し弾いて、僕の全キャリアから広く曲を拾って歌う予定だよ。『Prima Donna』のアリアやフランス語の曲も含めて。『Vibrate~』の収録曲もたくさん披露するつもりだし、このツアーで日本に行けることを楽しみにしているんだ。ほら、僕はデビューしてすぐに日本に行って、ファースト・アルバムは日本で結構ヒットしたんだよね。確か、ヨーロッパよりも反応が良かったはず。それ以来何度か来ているんだけど、あの最初の日本への旅は僕にとって、重要な体験になった。全く違うカルチャーの国で、僕の音楽に興味を持って耳を傾けてくれる人がいることを知ったわけだからね。僕にとってそれは永遠に、神聖でパワフルな記憶であり続けるだろうな。だからありがとう!

――日本に来ると毎回必ずやること、行く場所などはありますか?

ルーファス:東京ではよく歌舞伎座に行ったものだけど、新しい歌舞伎座にも行ってみたいんだよね。そして、大阪で何日か過ごす予定だからお寺なんかを回る時間もありそうだね。あとはとにかく食べまくる(笑)。可能な限りヘンテコな食べ物を探すよ!

ライブ・イベント情報

9/30(水) 梅田クラブクアトロ
一般発売 8/1(土)~
お問い合わせ:大阪ウドー音楽事務所 06-6341-4506 udo.jp/Osaka

10/1(木) 東京国際フォーラム ホールC
一般発売 8/1(土)~
お問い合わせ:ウドー音楽事務所 03-3402-5999 udo.jp


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