【インタビュー】コンチータ「自分をよく知ること。その上で自分を100%信じて」

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2014年ヨーロッパをはじめ世界中で話題になった“ヒゲの美女”コンチータが、いよいよ日本でもデビュー。アルバムのリリースに合わせ、初来日を果たした。

◆コンチータ画像

まずはそのルックスで注目される彼女だが、のびやかでパワフル、感情に満ち溢れた歌声は、最初は懐疑的だった人々をも魅了。ユーロヴィジョン・コンテストで満点を続出し優勝した。その歌声同様、しなやかでインスピレーションに溢れる人柄の彼女に話を聞いた。

――ユーロヴィジョン・コンテストでの優勝、そしてデビュー・アルバムの発表、おめでとうございます。今回、初来日なので、まずはあなた自身について訊かせてください。

コンチータ:もちろん。

――どんな子供時代でしたか?

コンチータ:いつも愛に囲まれてた。ものすごく美しい子供時代だったわ。田舎で育ったの。両親が小さなホテルを経営してたのよ。

――常に、ホテルのお客さん…知らない人たちに囲まれていたのですね?

コンチータ:その通りよ。楽しかった。小さい時から、みんなを喜ばせるのが大好きだったの。両親を手伝って、料理を運んだりしてたわ。それに…、すごく自信に満ちた子供だった。自分の思うとおり、好きな恰好して幼稚園へ行くような子だったわ。イジメにあう前の話ね。わたしね、こういう持論があるのよ。誰もが生まれたときは自信にあふれているのに、ティーンエイジャーになると、それが失われてしまう。残りの人生は、その失われた自信を取り戻そうとしてるんじゃないかって。ティーンエイジャーの時期って、誰にとってもタフよ。わたしにとっては、特に簡単なことではなかった。小さい村に育ったでしょ、早いときから自分は他の男の子たちとは違うってわかったわ。ティーンエイジャーになったとき、それまでなんでもなかったのが、急に、女の格好をしてる男ってレッテルを貼られるようになった。そう呼ばれるようになってから、わたしの人生は辛いものになったわ。自信がなくなったのよ。でもね、この過去の経験でいろんなことを学んだわ。間違っているとか、できそこないだとか言われたけど、本当の自分を理解するようになって、今は、間違っているのはわたしじゃない、間違っているって思う社会のほうが間違っているんだって、自信を持って言える。そこに到達するまでにはちょっと時間がかかったけどね。でも、あの辛い時期でも、いつだって家族はわたしを応援してくれていた。

――自分は他の子とは違うと気づいたのはいくつのとき?


コンチータ:そうね…、幼稚園のときでさえ、両親からそんな恰好で行くのかってよく言われてた…。でも、はっきりと自分は違うんだってわかったのは10歳のころだと思う。

――これまで、いわれのない差別や不当な扱い、誤解などを経験してきたと思いますが、子供のとき、そういうものにはどう対処していたのですか?

コンチータ:まず自信を失ったわね。わたしは孤立なんかしたくなかったの。みんなに溶け込みたかった。だから、黙っていたわ。ホントはそんなことなかったんだけど、気にしてないってフリしていた。それが、唯一わたしができる応対だった。

――人と違うというのはいいことだと思うのですが、ティーンエイジャーのときってありのままの自分を受け入れるのも難しいし、周りから浮くのも嫌なんだと思います。ティーンエイジャーだけではありませんが、いまそういう葛藤を抱えている人たちへアドバイスをいただけますか?

コンチータ:よく、訊かれるんだけど、難しいのよね。自分が経験したことや役に立ったことは言えるんだけど…、でも、いま振り返ってみて思うのは…、こう考えるのが難しいのはわかっている。でもね、物ごとは必ずいい方向に向かうわ。良くなるのよ。それに、どんなことが起きようが、自分を受け入れサポートしてくれる人たちが必ずいる。このことは、信じて。そして、自分をよく知ること。その上で自分を100%信じて。自分が自分を信じなきゃ、誰もあなたのことを信じてなんかくれない。時間はかかるし、大変よ。楽しいときばかりじゃないから。でも、少なくともわたしはこう考えてきたし、自分を受け入れ信じることで救われたわ。

――ありがとうございます。では、音楽に興味を持ったのは、いつ?

コンチータ:ディズニー映画が大好きだったの。音楽と歌がね。7~8歳のときだったかな、自分が歌えることに気付いた。シャーリー・バッシーの『007 ゴールドフィンガー』のテーマ・ソングを初めて聴いたときだったわ。誰が歌っているのかも、どこの言葉なのかもわからなかった。でも、感動したの。それで、彼女のマネをし始めた。そうしているうちに、自分の声がいいことに気付いたのよ。いつかステージに立ちたいって思うようになったわ。

――当時のあなたにとって、音楽は現実の世界からの逃避でもあった?

コンチータ:そう、逃避でもあったし、自分…、自分の感情を表現する手段でもあった。そういう意味では、助けにもなったし健全なものだった。今でもそうよ。わたしにとってセラピーみたいなものね。

――コンチータが誕生したのは、いつ?

コンチータ:2010年だと思うわ。14歳のときから女装していたんだけど、ちゃんとしたものじゃなかった。もちろん、14歳だからヒゲもなかったわ(笑)。2010年、友達からバーレスク・ショウに出てくれないかって頼まれたの。毎週のことだった。やるって引き受けて、メイクし始めたとき、その日まだヒゲを剃ってなかったの。鏡にうつったその姿を見て、これいいじゃないって思ったのよ。そのときね。

――ユーロヴィジョン・コンテストに出演して、非難されたりアンチが出てきたときはどう思いましたか?


コンチータ:こう言うのは失礼かもしれないけど、どうでもよかったわ。もちろん、耳には入ってくるし、直接何か言われたりもしたけど、まずは感謝しなきゃねって思った。注目してくれて、ありがとうって。もう何年も前に、人生ではいいことにだけ目を向けようって決めたの。簡単じゃないときもある。馬鹿げたことに出くわしたりするからね。でも、自分次第なのよ。批判の声に耳を傾けるのも傾けないのも。わたしは気にしないって決めたの。

――最終的にはたくさんの人があなたを受け入れ、優勝しました。そのときの気分は?

コンチータ:夢だったらどうしようって(笑)。バカなこと言うけど、それまでのわたしのキャリアは、負けばかりだったの。だから、勝つことに慣れてないのよ。

――でも、あなたはまだ若いし…

コンチータ:そうなのよ。でもね、いつも、“ああダメだ、まだ修行”みたいな感じだったの。そしたら、優勝しちゃったでしょ、ビックリしたわ。いまでもまだ信じられない(笑)。

――あなたが18歳のときのパフォーマンス映像を観ました。そのときの声も素晴らしかったけど、デビュー・アルバムではさらに良くなっていますね。


コンチータ:ありがとう。自分はステージの上でどう歌いたいかってことがわかったからだと思うの。17~18歳のときから歌ってきたけど、ステージではオープンでもなかったし、自信もなかった。で、このキャラクターを創り出して、今はステージでこうありたいと思う人物になれることができる。トム(本名)はコンチータより恥ずかしがり屋なのよ。

――コンチータを演じていると?

コンチータ:そうね。ステージではそうすることが間違いなく助けになっている。よりビッグな人物になれる。いい気分よ(笑)。

――素晴らしいシンガーだからこそ思うのですが、その外見、とくにヒゲがあなたの才能の邪魔になっているときはありませんか?音楽ではなく外見で判断されてしまうこともあるのでは?

コンチータ:それはいいのよ。わたしは音楽以外にもいろいろやっているし、興味を持っている。ファッションで自分を表現するのもそのひとつだし、スピーチするのも好きだし、自分のやっていること全てが大好きなの。だから、外見だけに興味を持つ人がいたとしても、それはパーティーへの招待状みたいなものよ。外見から始まって、“ああ、彼女はこんなこともやってるのか、何言うのか聞いてみよう”とか、“音楽聴いてみよう”ってなるかもしれないでしょ?

――アルバムの話に戻りますが、収録曲の中でとくに思い入れがあるものは?

コンチータ:難しい質問ね。もちろん(ユーロヴィジョン・コンテストで歌った)「Rise Like A Phoenix」には特別な思いがあるわ。わたしの人生を大きく変えたものだから。ほかのものも…、全部自分が選んだ曲だから、難しいわね。でも。「The Other Side Of Me」は特別よ。スウェーデンのソングライターが作ったものなんだけど、彼、ユーロヴィジョン・コンテストでわたしが優勝するのを観ていて、すぐにこの曲を書き始めたの。わたしが歌うかどうかもわからなかったけど、とにかく書かなきゃって思ったんですって。

――様々なタイプの曲がありますが、どれも高揚感があり元気をもらえます。曲を選んでいるとき、テーマはあったのでしょうか?

コンチータ:うーん…、1番の目標は、本物にしたいってことだった。メロディーも大切だったけど、わたしにとって1番重要なのは歌詞だった。自分の言いたいこと、感情に近いものを歌いたい、それが最大の目標だった。

――すでにいくつかの目標を達成していますが、次の目標は?

コンチータ:次の目標…、わからない(笑)。でも、いつかグラミーを受賞したいって思っている。だって、わたしはシンガーだもの、もちろんグラミーが欲しいわ。受賞できるかわからないわよ。でもね、そういう大きな目標を持っていて、そのために頑張っていけば、その過程でなにか素晴らしいことが起きるかもしれない。もしかしたら、グラミーよりそっちのほうが価値があるかもしれない。この先、何が起きるかわからない。だから、すごくワクワクしてるのよ。

コンチータのデビュー・アルバム『Conchita』の日本盤は7月1日に発売された。

Ako Suzuki


Debut Album『コンチータ』


2015年7月1日(水)発売予定
SICP-4462 ¥2,400+税
1.ユー・アー・アンストッパブル
2.アップ・フォー・エアー
3.プット・ザット・ファイアー・アウト
4.カラーズ・オブ・ユア・ラヴ
5.アウト・オブ・ボディ・エクスペリエンス
6.ホウェア・ハヴ・オール・ザ・グッド・メン・ゴーン
7.サムバディ・トゥ・ラヴ
8.ファイアーストーム
9.ピュア
10.ヒーローズ
11.ライズ・ライク・ア・フェニックス~愛は不死鳥のように~
12.ジ・アザー・サイド・オブ・ミー
13.ユー・アー・アンストッパブル(ファンクスター・リミックス)(日本盤ボーナストラック)
14.ユー・アー・アンストッパブル(ドラムス・オブ・デス・リミックス)(日本盤ボーナストラック)
15.ユー・アー・アンストッパブル(セヴンス・へヴン・リミックス)(日本盤ボーナストラック)
16.ユー・アー・アンストッパブル(エル・ティー・ビー・シー・リミックス)(日本盤ボーナストラック)
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