球体型のドラムやボーカロイドキーボードが登場、ヤマハのデザインイベント・レポ
ヤマハとヤマハ発動機は、7月3日~5日に六本木ヒルズで「Two Yamahas, One Passion~デザイン展2015~」を合同で開催、2015年春にフランスの「第9回サンテティエンヌ国際デザインビエンナーレ2015」に出展した「project AH A MAY(プロジェクト アーメイ)」の作品や、両社のデザインコンセプトモデルなどを展示した。
「project AH A MAY」(プロジェクト アーメイ)は、楽器のヤマハと、モーターサイクルのヤマハ発動機それぞのデザイン部門がお互いのデザインフィールドを交換して、条件や制約にしばられることなく、それぞれが培ってきた作法や考え方でデザインを提案しあうというプロジェクト。「AH A MAY」は「YAMAHA」を逆から読んだもので、ヤマハがバイクをデザインし、ヤマハ発動機が楽器をデザインするといったユニークな試みが見られた。このほか、両社のデザインコンセプトモデルや製品も展示。デザインコンセプトモデル12作品のうち6作品が日本で初披露、1作品が世界初披露となった。本稿では、楽器関連の作品を中心に紹介する。
中でも注目を集めたのが、スネアやシンバルといったパーツをプレイヤーの上下左右を取り囲むように配置した球体型のドラム「RAIJIN(God of the Thunder))」と、バイクの2人乗りさながらのスタイルで演奏するマリンバ「FUJIN(God of the Wind))」のヤマハ発動機デザイン本部による日本初披露となる2作品。3日に行われたメディア懇親会では演奏も披露、その姿はまさに「風神」「雷神」を思わせる迫力。
▲「RAIJIN(God of the Thunder))」は「ドラムの中で暴れるまわるように演奏できる球体は、演奏者を中心に噴出するエナジー、増幅する音世界を視覚化する」という作品。演奏はFuncussion(ファンカッション)の佐藤さん。
▲「RAIJIN」は足元にバスドラムのペダルが4つあり、どの方向を向いていても踏めるよう配置。カウベルやタムも配置されている。中に入って実際に叩いてみると想像以上の高揚感が味わえる。
▲マリンバの「FUJIN(God of the Wind))」は、モーターサイクルの二人乗りさながらの奏法で、「お互いのスイングやギャップが有無偶発性を活かしたスリリングな演奏が楽しめる」のがコンセプト。プレイヤーを取り囲む鍵盤は回転可能、共鳴管は前部のみに配置されている。演奏はFuncussionの林さんと小池さん。
一方、楽器のヤマハのデザイン研究所は、37鍵ショルダータイプのボーカロイドキーボード(試作品)を出展。歌詞データあらかじめ転送しておき、右手の鍵盤でメロディを奏でると歌い出す、楽器というより音ゲー感覚で楽しめるガジェット的な作品。歌詞はiPhoneからBluetoothで転送。左手では歌詞を進める・戻る(ミスタッチでもリカバー可能!)ボタン、サステインボタンやピッチベンドを操作可能。鍵盤右の2のダイヤルではVib/Por/Bre/Bri/Genといったボーカロイドのパラメータの設定可能(1つで設定項目を選択、もう1つで値指定)。たとえば、ビブラートを設定しておけば、鍵盤を押した強さによりビブラートがより深くかかる。音量や歌詞選択(5種から選択)のダイヤルも用意。エンジンはVOCALOID2相当で、鍵盤を押して発音されるまでのレスポンスは非常によく、気持よく演奏ができた。機能やレスポンス、ボディの質感も含めそのまま発売しても問題ないように思える出来。残念ながら発売予定はないものの、近日中に試験的に池袋のカラオケJOYSOUNDで楽しめるようになるとのこと。
▲黄色、白、水色、ピンク、のカラバリが揃ったボーカロイドキーボード。カラーによりダイヤルなどのパーツの数、配置が異なるのは制作時期によるもの(白が最も初期のもの)。デモ担当者は、ボーカロイドキーボードに歌わせることでカラオケの採点で最高95点を叩きだしたとか。なお、ボーカル音源以外の楽器音は非搭載、あくまでも「1人のボーカリスト」として制作されている。
▲ボーカロイドキーボードの液晶には歌詞が表示され、発音する文字も確認できる。春のニコニコ超会議2015への参考出展時からも改良が続けられ、ピッチベンドのリボンの位置が浅くなるなど、より演奏しやすくなっているという。
▲出展作品中最もおもしろかったのが、ヤマハデザイン研究所によるコンセプト作品2種。「Show Me!」(左2点)は、ステージの観客から見える視点を演奏者がチェックできる「家具」。45度の角度がついた鏡には楽器を持った全身を映すことができる。「Take on Me」(右)はステージモニター型の木製の箱。片足を載せてライブの気分が味わえる。
▲ヤマハデザイン研究所による電動アシスト自転車「O±O (ゼロプラスマイナスゼロ)」(左)は、充電スタンドに設置し、自らこいで充電した電気を家族とシェア、電池を持ち出して楽器を楽しむというライフスタイルをアシスト。電気をイメージした銅製のパーツとシックな革をあしらった自転車にあわせ、特別な色で仕上げたサイレントギターとポータブルスピーカーも展示。右はモーターサイクル「√(ルート)」。ライダーの目の前から計器類を排除したことで、視線の先が風景と一体となるという作品。シートからタンク上まで流れるようなフォルムのモチーフは馬。どちらも日本初披露。
▲ヤマハ発動機デザイン本部による「01GEN」(左)と「02GEN」(右)。「01GEN」はデザインフィロソフィー「Refined Dynamism(洗練された躍動美)」に基づいたデザインコンセプトモデルの第1弾で日本初披露。「02GEN」は、人と車いすのライフシーンに新たな豊かさを提案する電動アシスト車いすのデザインコンセプトモデル。
▲「03GEN」は、「未来への期待、レーシングマシンへの憧れ」「歴史が培った様式への敬意、最先端に接する高揚感」というモビリティが潜在的にもつ楽しさを2つのテーマで提唱したデザインコンセプトモデル。日本初披露の「03GEN-f」と世界初披露の「03GEN-x」の2モデルをラインナップ。
▲テーブルにはヤマハのライティングオーディオシステム「Relit(レリット/LSX-170)」(製品)が配置され、しだいに暗くなる会場の雰囲気アップに一役買っていた(左)。3日に行われたメディア懇親会にはヤマハ デザイン研究所所長の川田学氏(写真右・右端)、ヤマハ発動機デザイン本部本部長屋明浩氏(写真右・左端)によるトークショーも開催、RAIJIN、FUJINとのセッションも披露された。
▲会場となったのは六本木ヒルズの大屋根プラザ(左)。偶然通りかかった人が足を止め、展示品や演奏の模様を写真に収める姿が多く見られた(右)。
この記事の関連情報
【インタビュー】「演奏データを未来へ残す」という、規格外れのヤマハのイノベーション
【コラム】BARKS烏丸哲也の音楽業界裏話033「ライブの真空パック」
【俺の楽器・私の愛機】1689「公立高校への進学を条件に」
Guild、トラベルサイズのアコースティックギター『TRAVELER』が登場
ヤマハ、アコギのフラッグシップモデルにコンサートスタイルが登場
2024年の楽器・作品・プレイヤー」を決定する<楽器店大賞 2024>スタート
島村楽器、ヤマハ電子ピアノ『SCLP-8450』『SCLP-8350』のオリジナルカラーを9/5発売
【俺の楽器・私の愛機】1622「ヴィンテージ」
【俺の楽器・私の愛機】1619「母に借金して買ったレブスター」