【ライブレポート】ザ・ローリング・ストーンズ「サンキュー、サンディエゴ!」

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ザ・ローリング・ストーンズが<ZIP CODE TOUR>をキック・オフ、USツアー初日を飾ったサンディエゴ公演に潜入した越谷政義氏から到着したレポートを紹介しよう。

TEXT by Mike Koshitani(越谷政義)


1962年夏、ザ・ローリング・ストーンズはロンドンで結成された。1963年6月レコード・デビュー以来、若干のメンバー・チェンジはあったがミック・ジャガー、キース・リチャーズという4歳の時に砂場で知り合ったふたり、ザ・グリマ―・トゥインズが中心になってシーンのトップを転がり続けている。世界最強ロックンロール・バンドは、彼らに与えられた称号である。2012年に50周年を迎え、ますますその活動に拍車がかかる。最長老のチャーリー・ワッツのドラミングも冴え渡る、ストーンズ・サウンドの屋台骨なのだ。新参者ロニー・ウッドと言われていたけど、振り返れば6月でもうストーンズ40年選手だ。



そんなストーンズが15年の初仕事として<ZIP CODE TOUR(郵便番号公演)>と銘打ってUSツアーを開始した。5月20日、ロサンゼルス/フォンダ・シアターでハリウッドのスーパーセレブ、超ラッキーなファン数百人、飛び切りのカリフォルニア・ガールズを前にウォーミング・アップ・ギグ。そして24日、92101、サンディエゴ/ペトコ・パークで郵便番号公演の幕は切って落とされた。サポーティング・アクト、ゲイリー・クラーク・ジュニアのブルース・フィーリング溢れる素晴らしいライヴに続き、午後9時32分、40,000人を超える大観衆を前にワン・アンド・オンリー、キースのあのギターでスタートする「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」。始まった。その熱気が広いスタジアムを包み込んだ瞬間、もう120パーセント、ヒートアップ。ミックが取り憑かれたようにシャウトし、早くも花道中間点まで進み、両手を突き出すあのポーズ。

JJF終了後のミックの挨拶にかぶるように、ロニーがまだ水を飲んでいるというのに、キースは2曲目のイントロに入る、「イッツ・オンリー・ロックンロール」。ミックは前曲以上に動き回る。凄いぞ、今夜は!観客も負けてはいない、<♪I Know It's Only Rock'n Roll But I Like It♪>大合唱だ。

そして、1972年アルバム『メイン・ストリートのならず者』から「オール・ダウン・ザ・ライン」。ミックのノリノリ・ダンスを見ながらキースが笑顔をみせる。ブラス・セクションも加わってのパワフルなロックが往年のファンをうならせる。そう、サンディエゴの観客は日本以上に年齢層がぐっと上だ。ベロTを着こんだ、60代、70代のカップルがわんさか、ダンス・ダンス・ダンス。こっちもオーヴァー・シックスティだけど負けないぞ。

続いても2枚組LP『メイン・ストリート~』から「ダイスをころがせ」、このグルーヴ、文字には出来ない。もうストーンズが僕らを完全に包み込んでしまう。ストーンズ・ライヴ・スタンダードと呼びたいダイナミックな傑作だ。ホノルル・インターナショナル・センターで初めてこの2曲を味わってからもう42年も経ってしまった…。


続いてミックの作品だということがストレートに分かる「ドゥ―ム・アンド・グルーム」。ここに最近作をもってくるあたり見事、ミックの構成力に改めて脱帽だ。彼のアップ・テンポのダイナミックなロックが炸裂する。70歳をすぎてこの素晴らしき作品を完成させる、その才能たるや恐るべし。何回かこのナンバーを体験したけど、ズバリ、サンディエゴ・ヴァージョンが最高の出来映えだ。

そして今ツアー、1971年にローリング・ストーンズ・レコード第一弾アルバムとして発表された『スティッキー・フィンガーズ』がスーパー・デラックス・ヴァージョンとしてリリースされるのを機に、毎回数曲をコーナーで取り上げている。この日は3曲(あのファースト・シングル・ナンバーは除く)。まずは前座を務めたゲイリーがゲストとしてジョイン、「ビッチ」。最初はちょっぴり緊張気味だったけど、中盤から後半、キースやロニーとギター・バトルしてぐっとリラックス。一方ミックのまたまたハイテンションのノリ、この日ウン十回目の脱帽…。

チェンジ・オブ・ペース、「ムーンライト・マイル」。1970年の夏の終わりから秋にかけてのストーンズ欧州コンサート・ツアーは列車移動。ミックはホームシックにかかり、夜空の月を眺めて、家に帰りたい…、そんな気持ちのなかで浮かんだのがこの楽曲。ミックのカントリー・ハウス、スターグローヴスに戻り、ミック・テイラー、チャーリーも協力して完成、レコーディング。その際チャーリーはマレットを使ったが、この日のステージでも当時を彷彿とさせるかのようにマレットで叩いていた。とてもオリエンタルなムードを噴出しているこのナンバー、ワーキング・タイトルを「The Japanese Thing」といった。エンディングでミックとキースが仲睦ましくギターを弾いているシーン、特にキースがミックの肩に手をかけたところに感激。この日のコンサートのハイライト・シーンだった。


そして『スティッキー~』からもう1曲、「キャント・ユー・ヒア・ミー・ノッキング」、40ウン年前に初めて耳にした時、私「ブラック・マジック・ウーマン」のシングル盤(もちろんレコード)のライナーを書いたもんで、サンタナみたいとどっかに記したような…。実にパーカッシヴ、コーラスのバナード・ファーラーがボンゴでも頑張っている。そしてロニーのギターが鋭く光っている。その演奏ぶりにミックも大満足。

そしてインターネット・リクエストから「ストリート・ファイティング・マン」。笑顔を見せてのキースとチャーリーの演奏ぶりが印象に残る。ロニーはしっかりくわえタバコ姿に戻っている…。

1960年代後半の名作が続く「ホンキー・トンク・ウィメン」、このイントロもパーカッシヴでバナードほかコーラスのリサ・フィッシャー、キーボードのチャック・リヴェールも打楽器。そしてチャックのローリング・ピアノはまたまた冴える。キースとの絡みをもう一度観たいものだ。それにしてもミックは元気。花道からメイン・ステージへと戻る時のあの軽やかなスキップ。そんな彼のシャウトするこのナンバーはロックのスタンダード、完璧な出来。ティム・リースとカール・デンソンのブラス・セクションもいい味を出している。


バンド・イントロダクションの後はキース・コーナー。1989年のスティール・ホイールズ/USツアーでは観客のトイレorオカワリビール購入タイムになっていたけど、今回はしっかり「キ~ス!」。ヨーロッパや日本同様、キース絶賛ボード持参のファンも見かけた。アルバム『スティール・ホイールズ』からの秀作「スリッピング・アウェイ」。キース節をじっくりと堪能する。そしてエンディングでは、腰を落とし膝をついてのいつものあのポーズ。思わず拳をにぎりしめてしまう。

そしてキースの挨拶&次曲紹介、「Can't Be Seen with You」、イントロをポロリ。ロニーが飛んでくる。曲が違ったのだ。でも、キース・リチャ―ズ!何度もこんなシーンに遭遇したことがある。動じないミスター・ストーンズ。改めて1970年代後半ナンバーから気骨あふれる「ビフォア・ゼイ・メイク・ミー・ラン」。演奏中に右肩を上にあげるあのお得意のしぐさも見せてファンを狂喜乱舞させる。

ライヴは後半に突入、ミックのブルース・ハープから展開していくドラマティックな世界を描いた「ミッドナイト・ランブラ―」。ヴァリエーションに富んだテンポで楽曲は進む、観客とのコール&レスポンス、会場が完全にひとつになっていく。チャーリーのドラムスがいつも以上に響き渡るのがこのストーンズ・ブルースなのだ。


ブルースの後はディスコ、1978年のダンサブル・ヒット「ミス・ユー」。当時、新宿や六本木のディスコのDJブースにはこのナンバーの12インチ・シングル・レコード(尺は8分半!)がスタンバイ、もちろんヘヴィー・ローテーションだったのだ。スクリーンに映し出されるメンバーの演奏シーンもそんなナイト・フィーヴァー・ムードを演出している。ダリル・ジョーンズのベースがすっごくファンキー…。

そしてアカデミー賞/最優秀長編ドキュメンタリー賞受賞の映画『バック・コーラスの歌姫(ディーバ)たち』に出演していたリサとミックの絡み合うソウルフル&セクシーな「ギミ―・シェルター」。リサの花道で歌い上げるソロ・パート、何度味わっても素晴らしい。

そして、オープニングでなくたってやっぱりこのナンバーが始まると飛び跳ねてしまう、「スタート・ミー・アップ」。ロニーのギターがまたまた冴える。ミックは花道先端での♪Never×3 Stop♪パートでダンス!ダンス!

続いてステージ両サイドから炎が噴き出て「悪魔を憐れむ歌」。赤&黒のガウンを身にまとったミックが観客を巻き込むように盛り上げていく。これまた1960年代後半のストーンズ・スタンダード。我が国ではシングルA面ソングとして登場。東大安田講堂事件一ヶ月後に発売された(昭和44年)。ステージ中央でのロニー/キース/ダリル3人そろってのシーンが印象的。


ラスト・チューンは『スティッキ-~』からのファースト・シングル「ブラウン・シュガー」。エキサイティングな雰囲気をダイレクトにエクスプロージョンさせていく。ミックはステージの端から端まで走りまくりながらシャウトする。ここでのサックス・ソロで故ボビー・キーズを思い出す。彼とは何度も食事をしたり、酒を飲み交わし、1950年代から1960年代初頭にかけてのロックンロールをいろいろと勉強させてもらった。模型飛行機も大好きだった。最後にゆっくり話したのは2014年3月、東京公演終了後の深夜、宿泊先ホテルのバー…。そんなボビーのソウルをサンディエゴ出身のカール・デンソンは受け継ぎ頑張ってプレイ。キースもその演奏ぶりを称えるよう彼の前へと進む。そして観客との定番となっている<♪Yeah Yeah Yeah ~ woo!♪>をステージ・センターで3回、花道先端で3回(毎回ノートに正の字を書きこんでいる、40年前から…笑)。ブラボー!

でも観客はもっとストーンズ!アンコールに入る。ステージの両サイドにカリフォルニア州立大学ロング・ビーチ校チェンバー・クワイア、見事なコーラスで「無情の世界」。マット・クリフォードのフレンチ・ホルンが楽曲導入部分をより盛り上げていく。アコギを携えてミックがしっとりと歌い始める。そして、タイトル・パートのところでは観客もコーラス、実にドラマティック。そしてテンポがぐっと早まりスケール・アップした大作としてのイメージを全面に噴出しながらフェイドアウト。

そして最後の最後は「サティスファクション」、彼らの名をアメリカでぐっとポピュラーにした記念すべき大ヒット、1965年にUSチャート1位を記録。20世紀を代表するロック・スタンダードをザ・ローリング・ストーンズはシャウトし演奏し続けているのだ!ミックの「サンキュー、サンディエゴ」で午後11時47分、炸裂する花火とともにZip Code Tour初日のステージは終演。感激!(Notes by Mike Koshitani)

Live Photo by Mikio Ariga



セットリスト/商品情報

<アメリカ・カリフォルニア州サンディエゴ ペトコ・パーク2015年5月24日セットリスト>
・ジャンピン・ジャック・フラッシュ
・イッツ・オンリー・ロックン・ロール
・オール・ダウン・ザ・ライン
・ダイスをころがせ
・ドゥーム・アンド・グルーム
・ビッチ(ゲイリー・クラーク・ジュニア参加)
・ムーンライト・マイル
・キャント・ユー・ヒア・ミー・ノッキング
・ストリート・ファイティング・マン
・ホンキー・トンク・ウィメン
・スリッピング・アウェイ
・ビフォー・ゼイ・メイク・ミー・ラン
・ミッドナイト・ランブラー
・ミス・ユー
・ギミー・シェルター
・スタート・ミー・アップ
・悪魔を憐れむ歌
・ブラウン・シュガー
アンコール
・無情の世界
・サティスファクション

ザ・ローリング・ストーンズ『スティッキー・フィンガーズ』
2015年6月10日発売
(1)スーパー・デラックス・エディション<3CD+1DVD+1EP>
価格:19,980円(税込)UICY-77211 *輸入国内仕様/初回生産限定盤
・3CD + 1DVD + 1EP
・1CD: オリジナル・アルバム 2009年リマスター
・ボーナス・ディスク1:10曲入り
・ボーナス・ディスク2:『ゲット・ヤー・リーズ・ラングス・アウト』*「レット・イット・ロック」を除き未発表
・DVD:ライヴ・アット・ザ・マーキー(曲目後述)*初商品化
・「ブラウン・シュガー/ワイルド・ホース」7インチ・シングル盤
・実物ジッパー付120ページ・ハードバック・ブック
・ポストカード・セット(5枚)
・ポスター
・Band Cut Out(切り抜き)のミニ・レプリカ
・プリント
(2)デラックス・エディション<2CD> 価格:3,950円(税抜)UICY-15382/3 *デジパック仕様 輸入盤のみ発売
・1CD: オリジナル・アルバム 2009年リマスター
・ボーナス・ディスク1:10曲入り 全曲未発表
・デジパック/24ページ・ブックレット
DISC 1 Original Album
1.ブラウン・シュガー
2.スウェイ
3.ワイルド・ホース
4.キャント・ユー・ヒア・ミー・ノッキング
5.ユー・ガッタ・ムーヴ
6.ビッチ
7.アイ・ガット・ザ・ブルース
8.シスター・モーフィン
9.デッド・フラワーズ
10.ムーンライト・マイル
DISC 2 Bonus tracks
1.ブラウン・シュガー(オルタネイト・ヴァージョン・ウィズ・エリック・クラプトン)
2.ワイルド・ホース(アコースティック・ヴァージョン)
3.キャント・ユー・ヒア・ミー・ノッキング(オルタネイト・ヴァージョン)
4.ビッチ(エクステンデッド・ヴァージョン)
5.デッド・フラワーズ(オルタネイト・ヴァージョン)
6.リヴ・ウィズ・ミー(ライヴ・アット・ザ・ラウンドハウス 1971)
7.ストレイ・キャッツ・ブルース(ライヴ・アット・ザ・ラウンドハウス 1971)
8.むなしき愛(ライヴ・アット・ザ・ラウンドハウス 1971)
9.ミッドナイト・ランブラ-(ライヴ・アット・ザ・ラウンドハウス 1971)
10.ホンキー・トンク・ウイメン(ライヴ・アット・ザ・ラウンドハウス 1971)
DISC 3 Get Yer Leeds Lungs Out*スーパー・デラックス・エディション
1.ジャンピン・ジャック・フラッシュ
2.リヴ・ウィズ・ミー
3.デッド・フラワーズ
4.ストレイ・キャット・ブルース
5.むなしき愛
6.ミッドナイト・ランブラ-
7.ビッチ
8.ホンキー・トンク・ウイメン
9.サティスファクション
10.リトル・クイニー
11.ブラウン・シュガー
12.ストリート・ファイティング・マン
13.レット・イット・ロック
DVD  *スーパー・デラックス・エディション
・ミッドナイト・ランブラ-
・ビッチ
7インチ・シングル盤 *スーパー・デラックス・エディション
A:ブラウン・シュガー
B:ワイルド・ホース

◆ザ・ローリング・ストーンズ・オフィシャルサイト
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