【ライブレポート】オリビア・ニュートン・ジョン「ロックンロールのやり方でいかない?」
さらには「カントリー・ミュージックはお好きですか?」と客席に呼びかけながら、自身の最初のヒット曲である「イフ・ノット・フォー・ユー」(ボブ・ディランの楽曲のカヴァー)を皮切りにカントリー/フォーク系の楽曲をメドレー的に披露したかと思えば、「クライ・ミー・ア・リヴァー」や「悲しみのクラウン」といったカヴァー曲も。前者はジュリー・ロンドンの1950年代のヒット曲であり、以降はバーブラ・ストライサンドからジョー・コッカー、エアロスミスに至るまでに取り上げられてきたナンバー。そして後者は、フランク・シナトラやジュディ・コリンズらにも歌われてきたミュージカル楽曲だ。これらのカヴァーを披露するにあたり、オリビアは、イギリスに生まれオーストラリアで育った彼女が、十代なかばで英国に戻って歌い始めたことを語り、「60年代のロンドンのクラブの雰囲気で」などと口にしていた。
お気付きの読者も少なくないはずだが、今回のショウはまさに、そうした彼女の歌い手としてのルーツから、カントリー歌手として成功をおさめた時代、銀幕デビュー以降のさらなる活躍といった、変化に富んだ歴史を網羅するものとして構成されていた。「愛は魔術師」の時には背景に、同楽曲と同じ長さにまとめられたヒストリー映像が流されていたし、映画の映像素材なども随所に使用。もちろん彼女のキャリアにおける最大のヒット曲である「フィジカル」も登場した。しかも、最初のうちはこのセクシー・ソングをボサノヴァ風のアレンジでしっとりと聴かせながら、途中でオリビア自身が演奏を止めさせ、「ロックンロールのやり方でいかない?」と提案し、あくまでアッパーにこの曲を披露してみせるという凝りよう。その場面では、それまで大人しく着席していたオーディエンスも、さすがにほぼ総立ちになっていた。