【ライヴレポート】WEAVER、ゲス乙女との対バンで「いつもこんなに盛り上がってたっけ!?」

WEAVERが2015年3月31日、恵比寿リキッドルームにてゲスの極み乙女。を迎えた自主企画ライヴ＜WEAVER Special Live 2015『Guess What!? We Have A Guest!! WEAVER × ゲスの極み乙女。』＞を開催した。その詳細レポートをお届けしたい。

◆WEAVER × ゲスの極み乙女。画像

なにしろ、いきなりなのだ。対バン形式のライヴイベントにおいて、バンドが入り交じってセッションを行うのは、だいたい本編を終えた後のアンコールの場面と相場が決まっている。それなのに、のっけから2人して出て来るんだもんなぁ。

場内の灯りがゆっくりと絞られ、派手なSEと共にゲスの極み乙女。が登場！と、誰もが思ったはずなのだが、ちょっとはにかみながらふらっとステージに表れたのはWEAVERの杉本雄治と、ゲスの極み乙女。の川谷絵音。事前に申し合わせたおそろいの白シャツを着て（靴も偶然に同じだったとか）、共にアコースティックギターを抱え、にこやかなるセッションの始まりだ。この2人、生年月日が同じだからという縁から親交を深めてきて、今日が念願の初共演、バンド同士も初競演。スピッツ「大宮サンセット」、荒井由美「ひこうき雲」を絶妙なハーモニーで聴かせると、会場が静かに沸き立った。意外なオープニングアクトにざわめきつつ、誰もがこれから始まるライヴにさらなる期待を膨らませる。これは、ありきたりのイベントとはちょっと違うかもしれないぞ、と。

WEAVERのデビュー後初となる自主企画イベント＜Guess What!? We Have A Guest!! WEAVER × ゲスの極み乙女。＞。一見するにミスマッチなようだが、実はピアノアレンジひとつで楽曲に多彩な表情をもたらす両バンド。ピアノロックの真髄を味わうべく、多くのオーディエンスが恵比寿リキッドルームに集まった。オープニングがいきなりのセッションで、みんなちょっと度肝を抜かれた感がなきにしもあらずだったが、WEAVER発信の企画は要するに一筋縄ではいかないということなのだろう、まるで彼らの音楽みたいに。

さて、まずはゲスの極み乙女。1曲目「猟奇的なキスを私にして」から、アグレッシヴなアプローチで会場のボルテージを加速度的に上げていく。強引に、無遠慮に攻め入ってくる感じの、その無邪気さがどうにも聴き手の心を掴むし、シニカルでヘヴィネスあふれるサウンドの奥底に、ひりひりとした繊細さを感じさせるのも彼らの本質的なるものだ。無機的なようでいて、いつしかエモーショナルに発せられる川谷のラップや、ちゃんMARIによる感情的な振れ幅の実に大きなピアノの音色が（ある意味とっても女の子っぽい！）、楽曲をどんどんカラフルに彩っていく。ああ、楽しいなぁ。

この日は、ニューシングル「私以外私じゃないの」も惜しみなく披露。うなるギターにドライブするリズム、そして饒舌なピアノ。キャッチーなメロディーの向こう側に、確かにゲスの極み乙女。ならではのアヴァンギャルドな世界観が構築されている。今この曲が“コカ・コーラ”のCMソングとして全国に発信されていることを思うと、ついほくそ笑んでしまう。

ギュンギュンに音を鳴らして、ぐんぐん攻め入って、全10曲と短い時間ながら彼らはオーディエンス全員をしっかり巻き込んで、オーラスまで駆け抜けた。観ているだけで息切れしちゃうような1時間。会場はもう存分に温まっている。

WEAVERはだから、最初からトップギアで行く。杉本が第一声を発した刹那、ぱっと視界が拓けて、風が吹き抜けたような感じすらした。本来とびきりメロディアスな「夢じゃないこの世界」がいつにないダイナミズムを内包していて、フロアが見るからに沸き立った。

「やばいー！　いつもこんなに盛り上がってたっけ!?」──杉本

いやいや、盛り上げているのはあなたたちです、と心でツッコんでみる。とくに「管制塔」のライヴアレンジの完成度の高さといったら。杉本が聴かせる超絶リフ、奥野翔太と河邉徹による怒濤のリズム、楽曲が生まれ持ったスケール感はそのままに、音の構成がさらに濃密になった印象だった。

現在開催中のツアーのために書き下ろされた「さよならと言わないで」、5月20日にリリースされるシングル「くちづけDiamond」といった新曲も、WEAVERらしいポップなアプローチでありながら、よりエネルギーに満ちあふれた仕上がりだ。ここのところ、彼らのライヴを観るのは大会場が多かったせいもあるのだろうが、この日はいつも以上にバンドの強さや熱、骨っぽさが前面に出ていたように思う。

そして、極めつけはやはり「Free will」。ライヴバンドとしてのWEAVERの礎みたいな曲で、ステージで演奏するたびに成長し、違った表情を見せる。奥野と河邉のドラムバトルに、瑞々しく絡んでいく杉本のピアノ、見どころいっぱいのパフォーマンスはいつ観ても圧巻だ。

そのずば抜けたアレンジ力を駆使して、前回のツアーでも好評だった“MASH UP”をこの日もアンコールに用意していた。WEAVERの楽曲のサウンドに他のアーティストの歌メロを合わせてしまうという、ある意味ではかなりの力業だが、この3人にはお手の物。この日は「心の中まで」とゲスの極み乙女。の「猟奇的なキスを私にして」をマッシュアップ！　2曲を合わせていくだけでも驚きなのに、途中「あったかいんだからぁ♪」やら「カノン」やらも巧みに混ぜ込み、気づいたらメンバー3人でピアノを連弾していたりして、ああ、面白いことこの上ない。

まさに充実のツーマンだった。WEAVERにもゲスの極み乙女。にも、新しい刺激がもたらされたに違いなく、この企画自体が成熟していったらますます面白いことになるんだろうなと、次への期待がおのずと膨らむ。第二弾、早く観たい！

文◎斉藤ユカ





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