この価格でこの高音質と使いやすさ、TASCAMのUSBオーディオ/MIDIインターフェース「US-2x2」「US-4x4」を試す
数多くのUSBオーディオインターフェースをリリースしてきたTASCAMから登場した「US-2x2(ユーエスツーバイツー)」「US-4x4(ユーエスフォーバイフォー)」は、24ビット/96kHzに対応した、音楽制作をターゲットにしたモデル。2014年9月に発売され、高音質ながら低価格、iOSにも対応、そしてユニークなルックスからすでに人気を集めている。
オーディオ入出力は「US-2x2」が2イン2アウト、「US-4x4」が4イン4アウトで、入力にはすべて高品位なマイクプリアンプを用意。MIDI入出力も各1系統を備える。シリーズには上位モデルとして、16イン8アウト搭載でバンド録音にも対応する「US-16x08(ユーエスシックスティーンバイエイト)」もラインナップされるが、今回は入門者にぴったりな「US-2x2」「US-4x4」をチェックしてみた。
■シンプルに使えるハイクオリティモデル
価格は「US-2x2」が1万円台後半、「US-4x4」が2万円台後半。TASCAMからは2013年に「US-366」というUSBオーディオインターフェースが発売されているが、こちらも1万円台後半で「US-2x2」とかぶる価格帯。どちらを選べばいいか迷う人もいるだろうが、音楽制作に使いたいなら迷わず「US-2x2」「US-4x4」だ。
「US-366」は以前、当TASCAMチャンネルでも取り上げているが、24ビット/192kHz対応、2イン4アウトまたは4イン2アウトのアナログ入出力(スイッチで切り替え、マイクプリアンプは2系統)に加え、デジタル入出力を装備。さらにDSPエフェクト、ミキサー、パソコンの再生音を録音できるSTEREO MIX機能も備えるなど、多機能なモデルとなっている。ただ、ステレオミックス機能などは音楽制作用というよりもUstreamやニコ生などのインターネット放送をターゲットにしたもので、DAWを使った音楽制作では必須とは言えない。
対する「US-2x2」「US-4x4」は、アナログ入出力のみでDSPも非搭載、機能的にはiOS対応とMIDI入出力搭載がアドバンテージとなる。そして、音質については「US-2x2」「US-4x4」は更なるこだわりを見せている。たとえばマイクプリアンプは放送局用のレコーダーに搭載されるものと同じグレードの回路であるディスクリート構成のUltra-HDDAマイクプリアンプを搭載(「US-366」はHDDAマイクプリアンプ)。コンデンサーマイクに対応するのはもちろん、ダイナミックマイクでも十分なレベルがかせげる仕様なのも注目。そして、ライン入力も可能、ギターを直接入力できる端子も2つあるので、ソースや機材のレベルを気にせずに、つないでツマミを回せばいい音が録れる。そんなシンプルな使い勝手が魅力だ。また、録音されたサウンドはクリアかつ色付けがなくフラット。再生も同様でリスニング用途にも十分使えるクオリティの高いサウンドが楽しめる。
ソフトウェアは、「SONAR X3 LE」(Windows対応)と「Live 9 Lite」(Mac/Windows対応)の2種類のDAWソフトウェアのライセンスが付属。購入してすぐにレコーディングが楽しめる。機能的には入門用だが、物足りなくなってきたら有償でのアップグレードも可能だ。
■クールで使いやすいデザイン
スペックに続き、本体をチェックしていこう。まず目に留まるのが、これまでのオーディオインターフェイスとは趣がまったく異なる、ハニカム構造のアルミ製サイドパネルに代表されるルックスだ。デザインを手がけたのは、WaldorfやMoogといった数多くのメーカーのシンセサイザーをデザインしたアクセル・ハートマン氏(ドイツdesignbox社)。頑丈な鉄製の黒いボディとあわせ、クールな印象を与えるデザインはかっこいいだけでなく、フロントパネルがわずかに上を向くことでケーブルの抜き差しやツマミの操作がしやすいのがポイント。下の方のつまみやスイッチも触りやすく、ストレスなく作業が行える。
▲サイドパネルにより、フロントパネルがわずかに上を向く特徴的なデザインにより抜群の使い勝手。
端子類はオーディオ入力がフロントパネル、出力がリアパネルにまとめられている。MIDIもリアパネルだ。入力にはそれぞれレベル調整ツマミを備えるほか、入力1、2にはMIC/LINEと、エレキギターやベースなどハイインピーダンスな機器用のINSTの切り替えスイッチを用意。コンデンサーマイク用のファンタム電源スイッチは、全入力共通のものが1つあるだけだ。入力端子は「US-2x2」がTRS標準/XLR兼用のコンボジャック、「US-4x4」はTRS標準ジャックとXLRジャックが個別に用意される。
▲US-2x2。フロントパネルの各入力には入力レベル調整ツマミのほか、信号入力とピークを確認できるインジケーターを用意。リアパネルの出力はパワードモニターの接続に適したTRSアナログバランス出力端子。リアパネルの電源端子はオプションのACアダプター用。
▲こちらは4入力4出力のUS-4x4。入力はXLRとTSR標準ジャックを個別に用意、どちらかを選んで接続する。ヘッドホン端子が2つあるのはUS-4x4のみ。ファンタム電源の供給は4入力一括での設定。
本機の入力端子からの入力信号(INPUT)とパソコンからの出力信号(COMPUTER)のバランスを調節するMONITOR BALANCEつまみはTASCAMのオーディオインターフェース共通の特徴。INPUT側に回せば、ダイレクトに入力信号のモニターが可能になる。Mac/WindowsでのDAW使用時はソフトウェアによるエフェクトをかけた後の音をモニターすることも多いので、通常はCOMPUTER側に回しきった状態で使うことになるはず。この場合でもパソコンからの出力の遅れて聴こえる、いわゆるレイテンシーの問題を感じることはない。とはいえ、リアルタイムなモニターができないソフトウェアを使う場合や、接続やソフトウェアの設定の際に音が出ない際の問題の切り分けには有効。パソコンのドライバーや設定ソフトで切り替えるオーディオインターフェースも多いが、本体ですぐに調節できるのはなかなか便利だ。
出力レベルの調整がライン出力とヘッドホンを個別に用意されるのも便利なところ。外部スピーカー使用時とヘッドホンの両方を切り替えて使う場合、レベル調整が共通だとけっこう面倒なのだ。
さて、ここまでは両モデル共通の仕様。「US-4x4」のみの特徴となるのが、ヘッドホン出力が2つ用意されること。友達を呼んで2人同時にギターやベースを練習・レコーディングしたり、プレイヤーとパソコンを操作する人が同時に別々のヘッドホンでモニターしながらレコーディングすることが可能だ(出力レベル調整ツマミは1つ)。また、電源に関しても両者で違いがある。「US-2x2」はバスパワーで動作、「US-4x4」は付属のACアダプターを使用する。後述のiOSデバイス接続にはACアダプターが必要となるので、持ち運び時の利便性とあわせ考慮のうえ選択するのがよいだろう。
■ドライバーとソフトウェアの設定もシンプル
ドライバーソフトウェアについては従来製品とは異なる専用のものが新たに用意され、設定も非常にシンプルになっている。「US-366」ではインストール時に途中でデバイスを接続する必要がある(Windowsの場合)ほか、多機能なだけに設定できる項目も多かったが、「US-2x2」「US-4x4」はいたってカンタン。通常はサンプルレートを設定するだけでいい。
設定画面で迷うとすればDirect Monitor Settingsあたりだろうか。これはモニター音をStereoまたはMonoで返すかを設定するもの。たとえばStereoにした状態でマイクやギター1本を録音しようとすると、Input 1の音がヘッドホンの左からのみ聞こえる状態になる。しかし、Monoにすれば左右から同じ音が聴こえるので録音はしやすくなる。このへんもDAWで使う分にはソフトウェア側で設定できる範囲だが、そうではないソフトを使う場合には重宝するはずだ。なお、Macの場合はドライバーのインストールは不要だが、モニターや出力のルーティング設定は専用ソフトウェアをインストールして行うことになる。
▲シンプルなWindowsの設定パネル。モニター設定や出力へのルーティングのほか、接続していない入力のノイズを排除する入力ミュート機能も備える。右下の「Auto Power Save On/Off」はスタンドアローンモード時に30分以上入力信号が検出されない場合に自動的に電源をオフにするもの。
▲こちらはMacの設定画面。設定項目はWindowsとほぼ同じ。サンプリングレートはOS側のAudio MIDI設定で行うことになる。
■iOSデバイスでも使用可能、スタンドアローンでマイクプリアンプとしても
Mac/Windowsだけでなく、iPhoneやiPadで使えるのも「US-2x2」「US-4x4」の大きな特徴。ACアダプター(「US-2x2」ではオプション)を本体に接続、iOSデバイスとはLightning-USBカメラアダプタやiPad Camera Connection Kit(いずれも別売り)を介してUSBケーブル接続すれば準備完了。驚くほどカンタンに録音・再生が行える。マルチチャンネルでの録音・再生も可能なので、対応アプリを使えば「US-4x4」なら4イン4アウトをフルに活用可能だ。
▲US-4x4でのiOSアプリの例。MultiTrack DAW(左)との組み合わせならソースとしてモノ×4またはステレオ×2から選択可能。Cubasis(右)では2系統のステレオ出力がミキサーに現れる(右下)。もちろんステレオ入力も可能。
さらにスタンドアローンモードも用意。本体の電源が入った状態でUSBケーブルがパソコンと接続されていない場合は、本機をマイクプリアンプとして利用することができる(「US-2x2」ではACアダプターが必要)。たとえば、多チャンネル入力対応だが、8入力のうちマイクプリアンプは4チャンネルの装備しかない単体レコーダー、オーディオインターフェイスでマイク入力可能なチャンネル増やするという用途にも使える。環境をグレードアップした後でもいろいろ活用できるというわけだ。
将来性という点ではソフトウェアへの対応も安心だ。バンドルされるSONAR、Liveのほか、Pro Tools、Cubase、Studio One、Garage BandといったDAWソフトウェアでの動作検証もされている。乗り換えた後も長く使えるはずだ。
◆ ◆ ◆
手頃な価格で高音質、操作もカンタンで使いやすい。しかも見た目もかっこいい。これから楽器やボーカルのレコーディング、音楽制作を始めたいという人には要注目の「US-2x2」「US-4x4」。TASCAMでは現在、レコーダー、オーディオインターフェイス製品を対象とした「GET ONE FREEキャンペーン」を実施中(2015年3月31日まで)だが、「US-2x2」「US-4x4」も対象となっている。先着でキャリングバッグやダイナミックマイクなどがプレゼントされるので、こちらもあわせてチェックしたい。
製品情報
価格:オープン(市場予想価格 17,800円前後)
◆US-4x4
価格:オープン(市場予想価格 29,800円前後)
◆US-16x08
価格:オープン(市場予想価格 41,800円前後)
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