TASCAM、最大6入出力、24ビット/192kHz対応のUSBオーディオインターフェイス「US-366」

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TASCAM「US-366」は、最大6入力または6出力のUSB 2.0対応オーディオインターフェイス。24ビット/192kHz対応で2系統のマイクプリアンプを搭載、ギター入力もOK、デジタル入出力も備えるなど、さまざまなソースに対応可能。さらに内蔵DSPミキサーによるエフェクトや、ニコ生やUSTREAMに対応できるSTEREO MIX機能も搭載。DAWソフトとしてSteinberg「Cubase LE6」も付属する。1万6千円台という低価格でここまで備えるオーディオインターフェイスはなかなかない。仕様的にも非常にユニークなこの製品。さっそくチェックしてみよう。

◆TASCAM「US-366」拡大画像

■さまざまな環境で柔軟に使える入出力

本体ボディは堅牢なアルミ製。フットプリントはCDケースとほぼ同じで、厚みは140mm。前面には2系統のアナログ入力とヘッドフォン端子を用意。入力はXLR端子のマイク入力と標準フォーン端子のライン入力(INPUT 1はギター入力対応)。背面にはUSB端子、光と同軸のデジタル入出力端子(出力はS/PDIFとプロ向けのAES/EBU対応)、RCAピンのLINE I/O、標準フォーン端子の出力(TRS、バランス)、フットスイッチを接続するREMOTE端子を用意。デジタル入力は光と同軸いずれかを選択して利用することになる。

注目はRCAピンのLINE I/O。この端子は底面のスイッチにより入力と出力を切り替えられるのだ。ある時は6IN/4OUT、ある時は4IN/6OUTという使い方が可能。多チャンネル対応といっても、入力と出力のどちらかだけでいいというケースは多いはず。コネクタを配置するスペースやコストを考えれば、切り替え式というのはなかなかよく考えられた仕様だ。さらに電源ONの状態で切り替えOKなのも便利なところ。レコーディングとミックス作業を行ったり来たりするような制作環境でも重宝する。


▲前面パネル。XLRのマイク入力と、フォーンのライン入力を各2つ、中央にはヘッドフォン出力を装備。INPUT 1はギターにも対応。


▲背面にはデジタル入出力、入出力が切り替え可能なLINE I/O(LINE 3/4)、メインの出力(OUT 1/L、2/R)、そしてリモート端子を備える。電源はUSBバスパワー。

続いて上面。まずは左上からINPUT 1/2(前面の入力)のレベル調整つまみと、緑色の点灯で信号が来ているかがチェックできるSIGインジケーターと、過大入力時に赤く点灯するOL(オーバーロード)インジケーター。その右は本機の入力端子からの信号とパソコンの出力信号のバランスを調整するMON MIXつまみ、そしてヘッドフォン端子の出力を調整するPHONESつまみが並ぶ。スイッチは、左側、NPUT 1つまみの下にあるのが、INPUT 1に接続したソースに合わせてMIC/LINEまたはGUITAR(ハイインピーダンスのギターやベース時)を選択するもの。右側のスイッチはINPUT 1/2のマイク端子に48Vのファントム電源を供給するためのもので、専用のインジケーターも用意する。下中央の大きなダイヤルは背面のライン出力のレベルを調整するもの。そして、その右のMIXER PANELボタンはパソコン画面上にミキサー画面を表示するためのもの。これについては後述する。


▲前面入力用のレベルの調整にはインジケーターを用意。MON MIXはSTEREO MIXモード時は無効となる。INPUT 1用のマイク/ギター切り替え、コンデンサーマイク用のファントム電源スイッチも用意。右下がMIXER PANELボタン。


▲底面に用意された3つのスイッチ。動作切り替えは電源ON状態ですぐ反映される。
底面には3つのスイッチがある。まずは先に触れたデジタル入力の切り替えと、入出力切り替えのLINE I/O。そして、ミキサーのモードを切り替えるMODEスイッチがある。DAWソフトウェアを使う場合はMULTI TRACKに、インターネット放送をやりたい場合はSTEREO MIXに切り替えるというものだ(詳細は後述)。

なお、TASCAMのオーディオインターフェイスのラインナップには、「US-366」の兄弟機として「US-322」というモデルも存在する。こちらはデジタル入出力なし、アナログ入力は前面の2系統のみ、フットスイッチ用のREMOTE端子なし、24ビット/96kHzまで対応という違いがある。価格差は3,000円程度。環境に合わせてチョイスしたい。

■MULTI TRACKとSTEREO MIX、2つのモード

「US-366」が搭載するはDSPミキサーには2つのモードが用意される。前述のとおり底面のスイッチで切り替えが可能。「MULTI TRACK」モードは音楽制作におけるDAWソフト使用時に使うもの。「US-366」の各入力音を独立した信号としてパソコンに送られるので、マルチトラックでのレコーディング(最大6チャンネル同時録音)ができる。各入力音とパソコンからの再生音を内蔵ミキサーでミックス、さらにリバーブエフェクトをかけることで好みの音でモニタリングができるのもポイントだ。ボーカル録音時にはリバーブがあった方が歌いやすい人は多いはず。録音データにはリバーブは含まれないので、ミックス時に困ることもない。

もう1つの「STEREO MIX」モードは、インターネットの生放送などに使うモードで、各入力からの音にパソコンからの音をミックスした状態で録音ができるというもの。録音トラックは2チャンネル分となるが、パソコンの再生音を外部入力といっしょに再度録音できるのがミソ。パソコンの音楽再生ソフトでのBGM再生とマイク入力のナレーションをいっしょに録音する、ゲームの音に合わせて実況する、といった使い方が可能になるのだ。また、「STEREO MIX」モードではリバーブ音込みの収録が可能。生放送でもリバーブによるリッチなサウンドが提供できるというわけだ。


▲入力音を個別に録音できるMULTI TRACKモード(左)と、入力音を再生音とまとめて録音するSTEREO MIXモード(右)。

■DSPミキサーでエフェクトやルーティングをコントロール

これら2つのモードをフルに活用するために用意されるのがパソコン上で動作する「ミキサーパネル」。ドライバーソフトといっしょにインストールされるもので、「US-366」本体のMIXER PANELボタンを押せばすぐに画面に現れる(もう一度押すと消える)。この操作は思いのほか快適だ。背面のLINE I/OスイッチやMODEスイッチの状態によって、画面上のチャンネル数がリアルタイムで切り替わり、信号の流れが把握できるので、「US-366」を初めて触る場合でもさほど迷うことなく使えるはず。


▲MULTI TRACKモードでLINE I/OをINPUTに設定すると、デジタル2、アナログ4チャンネル分のフェーダーが左に表示される。


▲LINE I/OをOUTPUTに設定。デジタル2、アナログ2のフェーダーを表示。LINKボタンでステレオペアにすることも可能。


▲STEREO MIXモードでLINE I/OをINPUTにした時の画面。右のComputerチャンネルが2つになり、ここにもリバーブも加えることができる。


▲パソコンからの出力チャンネルをどの物理チャンネルに出すかを設定する画面。デジタル出力のフォーマットやフットスイッチの設定もここで行う。

エフェクトの設定もこの画面で行う。用意されるのは入力信号にインサートするダイナミックエフェクトと、各チャンネルにセンド・リターンでかけられるリバーブの2種類。ダイナミックエフェクトはコンプレッサー、ノイズサプレッサー、ディエッサー、エキサイター、EQの5種類からいずれかを選択。インサートできるチャンネルも1つのみとなる。ギターなら音の粒を揃えるコンプレッサー、ナレーションなら「サシスセソ」発音時のノイズを抑えるディエッサーを使うのが定番だろうか。同時使用が1チャンネル(LINKボタンを押せばステレオチャンネルでかけることも可能)、1種のみなのが寂しいところだが、あるとないでは大違い。ここはうまく活用する方法を考えよう。

一方のリバーブは各チャンネルごとにセンド量が調整可能。マイクはリバーブをかけるが、楽器の入力にはかけないといった使い方も可能だ。種類はホール、ルーム、ライブ、スタジオ、プレートの5種。プリディレイ、リバーブタイムのパラメーターも用意されるので、幅広い音作りが楽しめる。


▲左はダイナミックエフェクトのコンプレッサー。右はリバーブで5種のタイプから選択可能。


▲ダイナミックエフェクトにEQを選択するとこの画面。エフェクトごとにパラメーターが異なる。

ミキサーパネルではこのほか、パソコンからの複数の出力チャンネルを、それぞれどの物理出力チャンネルにルーティングするかを設定することも可能。配線を変えずに複数のモニター・スピーカーで聴き比べるといったこともできる。アイディア次第でさまざまな使い方ができそうだ。

実際に使用する前はLINE I/Oスイッチによる入出力(LINE 3/4)の切り替えがリアルタイムでミキサーパネルに反映されるものの、DAWソフト側ではどうなるのかと心配だったのだが、それは杞憂だった。DAWソフト側ではミキサーパネルの設定にかかわらず、常に6チャンネル(3ステレオ)分の入出力が立ち上がっているので、チャンネル数の増減で不具合が起きるということはない。なるほどうまく作られていると感じさせられた。

◆     ◆     ◆

DAWソフトのユーザーには多チャンネルの入出力の搭載が、インターネット生放送などをやりたい人にはSTEREO MIXとエフェクト機能が魅力の「US-366」。さまざまな用途、環境で使えて音質も文句なし、そして価格も手頃。オーディオインターフェイスの購入を考えている人には有力な候補になること間違いなしだ。

<おもな仕様>
対応サンプリング周波数:44.1/48/88.2/96/176.4/192kHz
対応量子化ビット数:16/24bit(内部処理24bit)
アナログオーディオ入力
 マイク入力(INPUT 1/L、2/R):XLR-3-31(1:GND、2:HOT、3:COLD)、バランス
 ライン入力(INPUT 1/L、2/R):6.3mm(1/4")TRS標準ジャック(T:HOT、R:COLD、S:GND)、バランス
 ライン入力(LINE I/O 3-4):RCAピンジャック (LINE I/OスイッチをINPUTに設定時有効)
アナログオーディオ出力:
 ライン出力(LINE OUT 1/L、2/R):6.3mm(1/4")TRS標準ジャック(T:HOT、R:COLD、S:GND)、バランス
 ライン出力(US-366:LINE I/O 3-4): (US-322:LINE OUT 1-2) RCAピンジャック (US-366:LINE I/OスイッチをOUTPUTに設定時有効)
デジタルオーディオ入力:COAXIAL(DIGITAL IN) RCAピンジャック ※DIGITAL INスイッチをCOAXIALに設定時有効、フォーマット IEC60958-3(S/P DIF) / OPTICAL(DIGITAL IN) TOS (JEITA RC-5720C) ※DIGITAL INスイッチをOPTICALに設定時有効、フォーマット IEC60958-3(S/P DIF)
デジタルオーディオ出力:COAXIAL(DIGITAL OUT) RCAピンジャック、フォーマット IEC60958-3(S/P DIF) /
IEC60958-4(AES/EBU) / OPTICAL(DIGITAL OUT) TOS (JEITA RC-5720C)、フォーマット IEC60958-3(S/P DIF) /IEC60958-4(AES/EBU)
ヘッドホン出力:コネクター 6.3mm(1/4")ステレオ標準ジャック
USB:USB Bタイプ 4ピンコネクター、フォーマット USB2.0 HIGH SPEED
REMOTE:コネクター 2.5mm TRSジャック、RC-3F専用プロトコル(Mackie ControlまたはHUIエミュレーション)
電源:パソコンよりUSB経由で供給 (5V、最大電流500mA)
消費電力:2.5W
外形寸法:140(幅)×42(高さ)×140(奥行き)mm
質量:500g
動作温度:5~35℃
バンドルソフトウェア:Cubase LE6
付属品:ドライバーCD-ROM、USBケーブル(1.5m)、Cubase LE6 DVD-ROM、Cubase補足投げ込みシート、保証書

◆US-366
価格:オープン(オンラインストア価格:17,800円)


◆US-366 製品詳細ページ
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◆BARKS タスカムチャンネル
◆BARKS 楽器チャンネル
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