【インタビュー】吉澤嘉代子、「自分じゃない誰かに歌うことができるようになった、それがすごくうれしい」

◆綾小路さんはアドリブも入れてくださったんですね。
やっぱりすごい人だなぁと、感動しました。


――そして、エレキの音が効いたレトロな雰囲気を醸し出す「ブルーベリーシガレット」。こちらは氣志團の綾小路翔さんが楽曲に参加されていますね。

吉澤：子どもの頃、「ブルーベリーシガレット」（※たばこの箱を思わせるパッケージのラムネ菓子）っていう駄菓子が好きだったんです。それで「ブルーベリーシガレット」を曲の題材しようと考えたときに、“不良少年に憧れる女の子のドタバタ劇”というアイデアが浮かびまして。“女子のドタバタ劇”は私のオハコなので、けっこうスパッと書けたんですよね（笑）。曲が完成して、コーラスは自分でやるか、誰かにお願いするかって話になったときに、“憧れの不良少年”ということで、「綾小路翔さんと一緒に出来たら最高だよね」という話しになりまして。ダメ元でお手紙を送り、お願いしたんところ、快諾していただいたんです。

――ど頭から綾小路さんのセリフに痺れましたし、お二人のセリフの掛け合いもユーモアたっぷりで（笑）。これは綾小路さんに「こうしてください！」みたいなオーダーをしたのですか？

吉澤：曲全体の構想やセリフは私が書き起こしてお渡ししたんですけど、でも綾小路さんはアドリブも入れてくださったんですね。それがとても素敵で。やっぱりすごい人だなぁと、感動しました。

――ちなみに、吉澤さんは少女の頃、不良少年に憧れていたんですか？

吉澤：いえ、基本的は図書館にいそうな、おとなしそうな人が好きですね。

――魔女に憧れを持っていたというところから、王子様とかヒーローとか、そういうものに憧れるイメージなのですが。

吉澤：あ、昔はピーターパンのことを本気で好きでしたけどね（笑）。


◆自分じゃない誰かに歌うことができるようになった。
それがすごくうれしい。


――今作のもうひとつのリード曲、「泣き虫ジュゴン」。歌詞の世界観も素晴らしいですが、メロディーも普遍的で、とてもいい曲です。


吉澤：これは17歳の時に書いたのですが、大人になってからもう一度、17歳の自分に宛てて書きなおした曲です。インディーズ時代にリリースした『魔女図鑑』に収録された曲なのですが、今回、リード曲になるにあたり、新録しました。『魔女図鑑』時代に歌入れしたときは、歌詞を当日まで書いていたんですね。曲を書いたままレコーディングが進んだので、曲に入り込んで歌えたこともあって、すごく良かったなと。だから、今回、撮り直すことが不安だったんです。なぜなら、前回は17歳の自分に向けて歌ってたものが、今回は誰に向けて歌えばいいのか、よくわからなくなっていて。そんなとき、デビューからのこの1年、自分の支えになってくれたお客さんが浮かんで……お客さんに向けて歌おうと思うようになったんです。すると、スッと歌うことができたんですね。……あ、これはインタビューの冒頭の話につながります。前に録ったのと今回録ったのでは、歌に違いがある。その違いは、“お客さんに向けて歌っているから”ですね。ちゃんと気持ちを込めて歌うこともできた。私は自分じゃない誰かに歌を歌うことができるようになった。それがすごくうれしいです。

吉澤嘉代子『箒星図鑑』

――お客さんにとっても、大切な歌になるのではないかなと思います。では、アルバムに収録された最後の曲、「23歳」。少女の頃を描いてきた今作アルバムを締めくくる曲の歌詞には、“ここからはもう 大人の世界”と綴られていますが、この曲にはどんな心境が込められているのでしょうか。

吉澤：初めてワンマンライブをやるにあたり、来てくれたお客さんに対して、“どうおもてなしができるのかな？”と考えたときに、“自分の裸の部分を伝えるには、人間が伝わるライブをすることだ！”と思い、今の自分を切り取った曲を書いたんです。曲のほとんどは、主人公を立ててストーリー仕立てに書いているんですね。“これは吉澤嘉代子のことを歌った曲だと思ってくれていいですよ”みたいな曲を出すのは、まだすごく怖かったんです。でもワンマンライブで披露するときに「また聴きたい」って言ってくれたお客さんがいたので、今回収録してみました。

――なるほど。では、今後も“今の吉澤嘉代子の歌”というのが生まれてくるのでしょうか？

吉澤：うーん……これから書く曲の構想はあるのですが、まだそれが実現するかどうかはまだわからないんですけどね。でも、これまでのように自分の少女時代をモチーフにした曲とはまた違った曲を歌っていきたいなと思います。

――最後に、5月にはこの『箒星図鑑』を引っ提げてのワンマンライブツアーがありますが、どんなライブになりますか？

吉澤：今回のツアーは5公演ありまして、今まででいちばん本数が多いツアーになるんですね。今回もしっかりとコンセプトを立ててお届けしようと思っていますので、楽しみにしていてください。

Text by RISA TERACHI（BARKS編集部）





◆吉澤嘉代子　オフィシャルサイト