【ライブレポート】シンディ・ローパー、誰もが「元気をもらえる」歴史的瞬間の数々
1月11日、シンディ・ローパーのデビュー30周年を祝うスペシャル・コンサート<シンディ・ローパー30周年アニヴァーサリー・セレブレーション・ジャパン・ツアー>が大阪フェスティヴァル・ホールを皮切りにスタートした。30周年を祝う特別な公演ということで、セットリストも特別だ。
◆シンディ・ローパー画像
開演前、場内には『シーズ・ソー・アンユージュアル』が発表された1984年近辺のヒット曲が次々と流れ、シンディの30周年記念ライヴを訪れたファンの心は一気に1980'sへ。シンディの登場前から「シンディ・コール」が沸き起こり、それは本人が登場するまで10分以上にも渡って続く、ちょっと尋常ではない盛り上がりを見せていた。
客電が落ちると、大歓声の中、曲のイントロが始まる。詳しくはここでは書かないでおくが、あっと驚くサプライズがあるので、これから公演に行く方は是非お楽しみに。シンディは黒いコルセットドレス風のショート丈レザーのトップスに、赤と黒の中世王侯貴族風のトップスをレイヤード、ボトムにはラメのライナー入りの黒いスキニ―パンツとコンバットブーツをあわせた個性的なファッションで、頭には4つのかわいいい王冠を載せ、手には魔法の杖。まるでおとぎの国の魔法使いのような雰囲気か。
1曲目は「シー・バップ」。観客との掛け合い、そして途中のソロでは自らタテ笛(リコーダー)を吹くシンディ。ここからはデビュー30周年を祝うツアーに相応しく、デビュー・アルバム『シーズ・ソー・アンユージュアル』の楽曲を連発していく。2曲目「アイル・キス・ユー」、続いてプリンス作の「ホエン・ユー・ワー・マイン」、「ウィットネス」、そして小型のミラーボールを抱えて「オール・スルー・ザ・ナイト」とデビュー・アルバムから5曲続けて一気に演奏。その後、今晩最初のトークは「コンバンワ! 今日は来てくれてアリガトウゴザイマス。」と日本語を交えて挨拶すると、デビュー30周年を一緒に祝福するように観客から大きな歓声があがる。
ここで一息ついて、衣装チェンジ。ステージ上でナポレオン・ジャケットに着替え、近年の楽曲を織り交ぜていく。「近年色々なことをやってたんだけど、NYでブロードウェイの”Kinky Boots”というショー(ミュージカル)の曲を書いたの。ショーは、そのうちに日本にも来るし、オーストラリアやトロントにも行くのよ」と語ると、どうも当初のセットリストではそこでやる曲ではなかったようで、それに気付いたシンディはバンドに向かって「あ、曲の順番変えてもいい?」(笑)。この自由さもシンディならでは。トニー賞6部門獲得し今もなおロングラン、大ヒット中のブロードウェイ・ミュージカル『キンキー・ブーツ』のために書き下ろした「Sex Is In the Heel」と2008年『ブリンク・トゥ・ヤ・ブリンク』から「イントゥ・ザ・ナイトライフ」と2曲のダンス・ディスコ調の曲で世界観を変え、気分は一気にダンスフロア―な雰囲気に。
8曲目は「タイム・アフター・タイム」。実は今回のバックバンドには凄い人物が参加しているということもシンディ・ファンとしてはチェックしておかなくてはならないだろう。「タイム・アフター・タイム」の共作者でもあり、フーターズのメンバーだったロブ・ハイマンがキーボードで参加、マネージャー曰く、いつも一緒にできるような人ではないので、今回日本に一緒に来れてよかったと語っていました。シンディもステージで彼を紹介。「実は、今日はこの次の曲を書いたRob Hymanも一緒にいるの。なので、今日はみんなが最初にこの曲を聴いた時みたいなサウンドにおそらくなると思うわ。」と語り、ロブと絡みながら「タイム・アフター・タイム」を歌うという贅沢な瞬間も。
そして、ここでまたシンディがいきなり思いついたように「「Yeah Yeah」やる?あ、でもウクレレ持ってる?トランクにあるから持ってきて」ということでスタッフがあわててウクレレを取りに行く。待ってる間には「(ウクレレ待っている)その間に、靴ひもを直していいかしら?”チョットマッテクダサイ”(日本語)…。」「そういえば、ハワイの”ジェイク(シマブクロ)”っていう凄いウクレレ・プレイヤー知ってる?彼には絶対聞かせられないけどね…」などなど呟きながら、やってきたウクレレを抱えて自ら演奏し始める。その9曲目は元々セットリストにはなかったデビュー盤からの「ヒーズ・ソー・アンユージュアル」。そして続けてデビュー盤と同じように「イェー、イェー」へとなだれ込む。今、デビュー盤『シーズ・ソー・アンユージュアル』を聴くと、POPアルバムでありながら、どこかしらNEW WAVE的でもあるのだが、この「イェー、イェー」はその最たるもの。オノ・ヨーコばりの雄叫びを聴かせてくれた。
11曲目ではおなじみのイントロから全米チャート最高位第2位大ヒット曲「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」へ。近年はちょっと異なったアレンジでアレンジしていたが、今回はオリジナル・ヴァージョンのサウンドを再現しつつ、最後は「Hey Now」へとなだれこむ。ステージから降りて行き、観客の皆さんとコール&レスポンス。会場中が一体感となり最高潮の盛り上がり。シンディも日本語で「アリガトウゴザイマス!」
ここで再び衣装チェンジ。前回見せてくれたようなフリンジ袖の革ジャンにステージ上で着替える。「私が子供のころ、日本の曲がラジオでかかってて、60年代かしらね。そのころアメリカではゴジラがはやってた。」といって「スキヤキ(上を向いて歩こう)」を軽くアカペラでハミング。観客の皆さんの助けを借りながら少し歌う。
「昔私が歌手になりたての時、誰かから『シンディ、お金は全てを変えるんだよ』って言われたの。その時私は『そんなことないわ』って思ってたんだけど、大人になって色々なことを経験して、それが本当だってわかったわ。」と語りデビュー盤のオープニング・ナンバーで「マネー・チェンジズ・エヴリシング」へ、これで遂に『シーズ・ソー・アンユージュアル』全曲演奏が完結。
本来であればここで一度引っこんでアンコールと言うことになったのだが、この日のシンディは戻らずにそのまま続けていく。セカンドアルバム『トゥルー・カラーズ』から「チェンジ・オブ・ハート」、そして近年のライヴの定番曲でもあり誰もが力をもらえる「シャイン」へ。その後バンドがはけて、キーボードのスティーヴとシンディだけがステージに残る。
「この話をずっとしたかったけど、残念ながら貴方達の言葉を話せないからちょっと難しいなと思っていたの。でも私の気持ちはわかってくれるかな…」といって今の旦那さんのデヴィッドについて話し始める。「私の新しい旦那の方のデヴィッドが、自分のストーリーと曲を書いたらいいよって言うから、曲とアルバムを作ったの。」
そして突如予定してた曲を変更し1993年「ハット・フル・オブ・スターズ」に。
「この曲は「Hat Full of Stars」という曲なんだけど、子供のころ、帽子を持ってて、それを空に掲げてみたの。星がとてもきれいで、その帽子に空を詰め込んでみたの。そして、この帽子を持ってたら、いつか私にぴったりの人が現れた時、彼にもこの帽子をかぶってもらったら、私の見た美しい星を彼も見れるんじゃないかって思ってたの。YOKO ONOに教わったこともちょっとあったわ。そしてこの曲「Hat Full Of Stars」という歌を書いたの」と切々と語り、当初予定のなかった、非常に珍しいキーボード一本での「ハット・フル・オブ・スターズ」を演奏。心に染み入る素晴らしいヴァージョンだった。
そして、最後はもちろん「トゥルー・カラーズ」。こちらもキーボードとシンディの奏でるダルシマーでシンプルに、そして、美しく。静かにショーは締めくくられた。最後に「Thank you、サヨナラ、マタネ」と日本語を交えて挨拶しステージをあとにした。
シンディはライヴでは日本の観客の皆さんとコミュニケートをとりたくて、できるだけ日本語で話したい気持ちはあるものの、なかなか覚えられないんだそう。でもそんなシンディの気持ちは会場中のすべての人たちに伝わっていたと思う。「新しいお客さんの前で演奏する時って、皆それぞれ違うから、いつも同じショーにはならないのよね。日本語もトライしたんだけどあまりうまくならないわ。1996年に(神戸で)福娘に選ばれた後、(日本語の)本ももらったけど、全く役に立たなくて。実はアメリカでも多くの人が私の言っていることが分からないのよ…でも私は話し続けるんだけどね(笑)」
その日の観客のノリを見ながら、臨機応変にセットリストも、やり方も変えていくから、どのショーも違って見えるのが、シンディのライヴの魅力。そして全力投球でぶつかってきてくれる姿は、たとえ言葉が通じなくても、伝わってくる。何かを感じることができる。まさに誰もが「元気をもらえる」ような、それがシンディのライヴの最大の魅力だ。
シンディ・ローパーのデビュー30周年を祝うスペシャル・コンサート「シンディ・ローパー30周年アニヴァーサリー・セレブレーション・ジャパン・ツアー」は大阪、金沢、そのあと1月15日名古屋公演が行なわれ、福岡、仙台を経て、1月20日は遂に東京は7年振りの日本武道館公演が行なわれる。歴史の中で確実に見逃してはならないコンサートというものがある。今回のシンディはまさにそんなコンサートであると思う。
<2015年1月11日(日)大阪公演@フェスティヴァル・ホール セットリスト>
2.I'll Kiss You アイル・キス・ユー(『She's So Unsual』)*
3.When You Were Mine ホエン・ユー・ワー・マイン(『She's So Unsual』)*
4.Witness ウィットネス(『She's So Unsual』)*
5.All Through the Night オール・スルー・ザ・ナイト(『She's So Unsual』)*
6.Sex Is In the Heel セックス・イン・ザ・ヒール
7.Into the Nightlife イントゥ・ザ・ナイトライフ(『Bring Ya To The Brink』)*
8.Time After Time タイム・アフター・タイム(『She's So Unsual』)*
9.He's So Unusual ヒーズ・ソー・アンユージュアル(『She's So Unsual』)*
10.Yeah Yeah イエー、イエー(『She's So Unsual』)*
11.Girls Just Want to Have Fun ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン(『She's So Unsual』)*
12.Money Changes Everything マネー・チェンジズ・エヴリシング(『She's So Unsual』)*
13.Change Of Heart チェンジ・オブ・ハート(『True Colors』)
14.Shine シャイン(『Shine』)
15.Hat Full Of Stars ハット・フル・オブ・スターズ(『Hat Full Of Stars』)
16.True Colors トゥルー・カラーズ(『True Colors』)
*『She's So Unsual』収録曲全10曲演奏(注:セットリストは毎回変わるため、毎回全曲演奏するかどうかは未定)
名古屋公演:2015年1月15日(木)センチュリーホール
開場 18:00 / 開演 19:00
[問]キョードー東海 052-972-7466 http://www.kyodotokai.co.jp
福岡公演:2015年1月16日(金)福岡サンパレス
開場 18:00 / 開演 19:00
[問] キョードー西日本 092-714-0159 http://www.kyodo-west.co.jp/
仙台公演:2015年1月18日(日)仙台サンプラザホール
開場 17:00 / 開演 18:00
問) キョードー東北 022-217-7788 http://www.kyodo-tohoku.com/
東京公演:2015年1月20日(火)日本武道館
開場 18:00 / 開演 19:00
[問]キョードー東京 0570-550-799 http://kyodotokyo.com
更なる詳細は以下のサイトで御確認下さい。
http://cyndi-japantour.com
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