【インタビュー】Derailers、デビュー作『A.R.T』リリース。Ai Ishigaki、Ju-ken、Rueedが起こす化学反応

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新しいものと古いもの、経験値の高さによる安定感と無邪気な欲求、激しさと緩やかさ、ロックにレゲエにブラックミュージック、さらにアナログとデジタル。一見相反する要素の見事なまでの融合は、メンバー3人の間で起きたとてつもない化学反応のたまものだ。

なにしろ、それぞれにバックボーンがまるで違う。レゲエシーンで知らぬ者はいない希代のヴォーカリスト、Rueed。THE MAD CAPSULE MARLETS脱退後、数々のアーティストのライヴサポートやプロデュースで活躍してきたギタリスト、Ai Ishigaki。そして、同じくロック界を代表するベーシストのひとりとして、多くの現場に参加しているJu-ken。いずれも音楽業界では超がつくほどの有名人だが、この3人がバンドを結成したというニュースは、その実体の予想がつかないぶんだけ大きな話題となった。Derailers(ディレイラーズ)はつまり、生まれながらにして磁石のように多くの期待と好奇心を引き寄せている。

そして、満を持して発表された1stフルアルバム『A.R.T』は、その期待値をはるかに上回るものだった。自由であることが音楽の使命であるならば、これは紛れもなく“正しく”音楽である。ジャンルの枠を超え、すべての音楽ファンに届かんことを祈るばかりだ。

◆無理を承知でIshigakiにバンドをやりたいと。
ま、いい顔をしていなかったですけどね、今からか?みたいな(笑)


──では、月並みなところから、結成の経緯などを。

Ju-ken(B):まず、僕がIshigakiにバンドやりたいやりたいって言ってて。僕はそもそも、これだと思える自身のバンドでデビューしたことがないんです。年齢的にも今が最後のチャンスかなと思って、どうしてもバンドをやりたかったんですね。

──それは無邪気な理想として?

Ju-ken:いや、むしろシビアな感じで(笑)。ベーシストとしては長いことこの業界でやらせてもらっているので、アーティストのスタンスだったりとか、人気の波とかいろんなものを見ていて、だからこそ今が最後かなと思ったんです。それで、無理を承知でIshigakiにバンドをやりたいと。ま、いい顔をしていなかったですけどね、今からか?みたいな(笑)。まぁ、いちからバンドを始めるのが大変なことは、十分にわかっていましたけどね。

Ai Ishigaki(G):まぁ、最初は僕もバンドでデビューしていて、そこで遺してるものの大きさを自分で認識していたので、それを超えるものができなければ新しいバンドをやる意味はないなと思っていたんですよ。それが、Ju-kenの申し出をちょっと躊躇した一番の理由ではあったんです。ただ、年齢も重ねてきたので、昔ほど“こうじゃなきゃ”っていうのはなくなったんですけど、それでもバンドの大変さはわかっているんでね、すぐにいい返事はできなかったんですよね。でも、どうせやるんだったら、無難なことをやりたくないけど大丈夫? ロックとかイヤだけど? って(笑)。

──Rueedさんはもともとお知り合いだったんですか?

Rueed(Vo):いや、全然。話が突然やって来ました(笑)。渋谷でライヴがあって、そこにたまたまAiさんが遊びに来てくれたんです。

Ishigaki:そのときは喋ってないんだよね。直後に、ツイッターだったかな、フォローして。

Rueed:Aiさんがまずフォローしてくれて、こんなロックな人にフォローされることなんてそうないぞ!? と思って、フォローバックしたら、DMが来たんです(笑)。

──なんというイマドキな話(笑)。

Ishigaki:DMでナンパしたという(笑)。でも、そのとき観たステージのインパクトが本当に大きかったんですよ。Rueedの声が持つ可能性も感じたし、もうこいつしかいないんじゃないかと思って。で、連絡して会ってみよう、と。

Rueed:ただ、そこから音楽として形になるまでは、けっこう時間がかかったんです。

Ishigaki:普段、3人が別々に活動をしているってこともあるんですけど、最初にミニアルバムの『Track“0”』を作ったときは、それぞれがトラックを作ってやりとりするっていうやり方だったので、なかなか顔を合わせることもなく。

◆今あるものを出して、それが結果的に僕らの色になればいいなと思って
だからまぁ、好きなことやりました

──そもそも結成時点で、方向性についての話はしなかったんですか?

Ishigaki:Ju-kenと僕だと、たぶんロックなイメージしかないじゃないですか、対外的に。そういうことにこだわらずに、普通に好きなことやりたいなっていうところで、特に何をやりたいとか、こうじゃなきゃイヤだっていう決まりはなかったですね。今回のアルバムに関しては、なんとなくのアイデアがそれぞれにあって、そこにみんなで肉付けをしていく作業をしました。

Ju-ken:聴いてくれる人に何が引っかかるかわかんないし、とりあえずカラフルに作ってみたいとは思っていたんです。BPMしかり、コードしかり、なるべくアプローチを散らして作ろう、と。でも、思い描いていたのはそのぐらいですかね。今あるものを出して、それが結果的に僕らの色になればいいなと思って。だからまぁ、好きなことやりました(笑)。

──華やかで、とても拓けた印象の作品でした。Ju-kenさんとIshigakiさんのパブリックイメージを考えるに、おそらく多くの人がゴリッとロックなものを想像しがちだと思うんですけど。

Ju-ken:うん、僕らもそういうイメージを持たれているとは思ってた(笑)。でも、よかったです、華やかな印象を持ってもらえて。

──アルバム中盤の、緩やかで音と音の隙間が生かされた感じは、私が知る限りのJu-kenさんのベースや、Ishigakiさんのギターではないですもんね。

Ju-ken:僕が若いときにすごい聴いていたのがブラックミュージックだったりするんだけど、素の自分を出せた感じはしていますよね。僕が呼ばれる現場では、なかなか出せないカラーだったりするんで。

Ishigaki:コンセプトがないのがやっぱりよかったよね。収録候補の曲が、実際の収録曲の1.5倍ぐらいあったんですけど、その前に一度ライヴを演っていて、そのときのお客さんの反応だとかで、こういう曲もあったらいいよねとか、そこから作った曲もあるんです。

──それがDerailersの初ライヴだったんですよね。ずばり、どうでした?

Ishigaki:ええ、いい緊張感を……与えることができました(笑)。

◆Rueedはレゲエだし、Ju-kenと俺はどうしてもロックなイメージだろうし
それぞれのお客さんが集まってるから会場にハテナマークが浮かんでた(笑)

──オーディエンスをハラハラさせた、と(笑)。

Ishigaki:こっちももちろん緊張していたんですけどね、何か会場にピーンと張りつめたものがありました。みんな、右手と右足が一緒に出ちゃうようなぎこちなさで(笑)。自分でも思いましたよ、俺どんだけステージ踏んできたと思ってんの?って、それなのにこれ?って(笑)。

Ju-ken:緊張したねぇ(笑)。ま、たぶんね、例えば僕がサポートしてる○○さんなら、こういうパフォーマンスをすればすごくカッコいいショーになるなって、客観的にわかるし、そのための一部になろうと思えるんですよ。でもDerailersはね、はじめて演るし、客も俺らの何を見に来てるのかわかんないし、何を見せればいいのか定まってなかったんですよね。ほんと闇雲に演るしかなかったというか、足踏み出したところに地面がないんじゃないかぐらいに思いましたから。

Ishigaki:3人それぞれのイメージが違うっていうのも、お客さんが戸惑ったところなんだろうな、と。Rueedはレゲエだし、Ju-kenと俺はどうしてもロックなイメージだろうし、 それぞれのお客さんが集まってるから会場にハテナマークが浮かんでた(笑)。

Rueed:俺はもう基本的にはバンドといっても、レゲエのダンスホールバンドしか経験がないんで、Derailersみたいな形のバンドで歌うのははじめてなんですよ。それだけでも緊張しますよね。

Ju-ken:すっげぇ緊張してたよね(笑)。

Rueed:2ステージやったんですけど、1回目終わっても全然ホッとしないという(笑)。

Ishigaki:あんなRueedは見たことないってぐらい(笑)。


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