L'Arc~en~Cielのtetsuya、ペインターとのコラボベース第二弾はアート

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■共通しているのはUKテイストなんですね
■無意識のうちにそういう作品へ向かったのかもしれない

tetsuya最新オリジナルベースESP Bardic GOOD VIBESは構想から完成まで約半年間を費やした。tetsuyaによるリクエストはkurryが発表した作品をBardicにそのまま描くというもの。アート性の高い最新ベースの製作過程についてkurryに訊いた。まずは第一弾となったBardic Tricolour/Bardic Union Jackの話から。※Bardic Tricolour/Bardic Union Jackの製品解説についてはこちらを参照。

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──tetsuyaオリジナルベースESP Bardicに、kurryさんのデザインが採用された経緯から教えていただけますか?

kurry:tetsuyaさんには僕の絵をいくつかご購入いただいたことがあったんですね。そういう経緯もあって、確か2011年の夏くらいだったと思うんですけど、楽器メーカーのESPを経由して、ベースをキャンバスとしたグラフィックデザインのお話をいただいたんです。

──その第一弾が2013年9月にリリースされたBardic TricolourとBardic Union Jackだったわけですが。この2本のデザインを製作するにあたってESPやtetsuyaさんとはどのようなやり取りが?

kurry:ペイントデザインに関しては、お任せという感じでした。ですから、tetsuyaさんが所有している僕の絵を教えてもらったり、tetsuyaさんの資料を集めたりして、まずイメージを膨らませることから始めていったんです。デザインとしてはUKっぽいものが好きなのかなとか、衣装は派手なものも多かったので色は明るいほうがいいのかなとか。最初に幾つかのデザインパターンを提示して、そこから細かく詰めていく作業でしたね。

──では、Union JackとTricolourという完成形に至るまでには試行錯誤も?

kurry:そうですね。最初は柄だけみたいな感じで、派手な色の組み合わせで考えたりもしてたんです。たとえば、もしライヴとかで使うのであれば、客席から離れてもわかるとかのほうがいいのかなと。だから、絵とか小さい柄よりはもう少し目立つようなものを考えていました。というのも、2011年12月の京セラドーム大阪のライヴ(<20th L'Anniversary TOUR L’Arc~en~Ciel>)をステージ正面から拝見したんですけど、数万人を収容する会場だから距離は少し遠く感じたんですよね。お客さんとして観に行って、やっぱりベースが目立つとかわかりやすいとか、そういうほうがいいんだろうなと。実は僕、騙し絵みたいなものが得意で。当初は、遠くからみたときと近くでみたときでは異なるトリックアートを作ろうかなとか考えながら。

──そういう過程のなかで、tetsuyaさんサイドから出てきたアイデアは?

kurry:やっぱり絵がいいっていう(笑)。僕も絵を描くことを仕事にしているので、当然なんですけど(笑)。もうちょっと絵が入ったほうがいいっていう感じでしたね。

──当初のアイデアのなかには、すでにユニオンジャック的なデザインがあったそうですね。

kurry:UKっぽいイメージからユニオンジャックも好きそうだなと。ただ、ユニオンジャックのほうは、あんまりにもそのモチーフがわかりすぎるよりも、デザインもちょっと飛び散ったような感じに。トリコロールのほうにはユニオンジャックと同じようにUKっぽいカラーを使っています。最終的にこの2パターンを作って、そのどっちかを採用する予定だったんですけど、結局両方作ることになったんです。

──Bardic TricolourとBardic Union Jackは、どちらも表面中央のフレイム調デザインとロゴが特徴的です。

kurry:そうですね。知り合いからは「なんで名前が3つ並んでるの?」って言われましたが(笑)、そこに深い意味はないんです。tetsuyaさんが好きな絵の雰囲気とか、UKのストリートアートとかからの発想で。“TETSUYA”ロゴのペイントをちょっと垂れさせているのも、そういうテイストからなんです。

──初期のデザインアイデアのなかにも、“t”を使っているものがありましたね。

kurry:なにかちょっとtetsuyaさんを象徴するようなものを入れようとは最初から思ってました。“TETSUYA”ロゴの額縁みたいなものも、tetsuyaさん自身がゴージャスなものが好きそうかもしれないというイメージで。

──kurryさんは通常、平面的なものに絵を描かれていると思うのですが、楽器、しかもその両面にデザインするというのはどうでした?

kurry:実は当初、表面だけのデザイン予定だったんですが、tetsuyaさんから全面デザインしてほしいというご要望があるとうかがいまして。で、ご本人が使用するベースには直接僕がペイントする予定だったんですが、すでに市販化する計画も進行していたようで、僕が全面のグラフィックデザインをして、それをESPの方が塗装するということになったんです。たぶん、この曲線部分とかの塗装は大変だったと思います(笑)。一度工場へ見学に行かせてもらったんですが、たくさんの専門家の人たちが関わって楽器を作っていて。僕からしたら、それが不思議な感覚で。すごく有名なミュージシャンの方からご依頼を受けて、たくさんの人たちが関わってひとつのベースを作っていくという。しかも、そのミュージシャンの方が数万人の前でそのベースを使っている。言ってみれば、僕は大阪のいち絵描きみたいなことをやっているわけですから、本当に不思議な感じがしました。

──なるほど。そして第二弾となるBardic GOOD VIBESが完成しました。このベースは2014年3月21日および22日に国立競技場で行われた<L’Arc~en~Ciel LIVE 2014 at 国立競技場>で実際に使用されていたもので、ご本人モデルにはkurryさんが直接ペイントしたそうですね。

kurry:はい、今回は僕が直接描いたもので、それが数万人の前で使用されたということは本当に嬉しいことです。

──Bardic GOOD VIBES製作に至る経緯を教えていただけますか?

kurry:もともと僕が描いて発表しているデザインがあって、それをそのままベースに描いてほしいというのが今回でしたね。たしか最初に幾つか送ったパターンのなかにラインを入れたものがあって、その雰囲気のものがいいという話になったんだと思います。で、ラインの色や太さや配置をどういう感じにするかに関して数パターン作ったという。今回は絵ありきで進めたデザインだったので、構想に1年くらいかかった第一弾と比較するとスムーズだったと思います。

──ペイント作業の部分は完全にハンドメイドで行われたんですか?

kurry:僕が描く手法のひとつに、ステンシルというのがあるんですね。言ってみればシルクスクリーンみたいな感じなんですけど、型を作ってエアガンで吹き付けていくような作業なんです。行程としては、ESPから真っ白なベースのボディが送られてきて、そこにまずラインを引くんですけど、大変だったのはこのラインのほうで(笑)。絵は平面だから、型にエアガンで吹き付けるだけなんですけど、ラインはボディを一周している。それも何本もあるので、1本1本マスキングテープを貼って塗って、という作業の繰り返しで、ラインがずれるわけにはいかないという(笑)。ハケで塗っていくとハケのムラが出てしまうのでエアスプレーで着色しています。

──確かに、ボディーの裏側へ回り込んでいる側面の着色は手間がかかりそうですね。で、このベースは裏側が凝っているというか、ユーモアもあるというか。

kurry:第一弾と同じように裏側にもデザインを入れたいということで。文字部分を反転させて、さらに後頭部のイラストを描き加えたんです(笑)。この後ろ姿は発表しているものではないんですよ。

──このベースのために描いたものというわけですね。

kurry:そうですね。この表面の絵は元ネタがあって、それを僕アレンジしたものなんですが、後ろ姿は完全なオリジナルです。

──この1年の間に第一弾と第二弾を含めて3本のデザインを発表したわけですが、また新たな構想が膨らんだりも?

kurry:第一弾にしても今回のBardic GOOD VIBESにしても、共通しているのはUKテイストなんですね。

──そもそもkurryさんの絵にはUKとか欧州からの影響が?

kurry:今も影響を受け続けているかといえばそうではないんですが、発祥みたいなものがそのあたりからなので影響を受けたことは確かです。tetsuyaさん自身がそれを求めているかはわからないし、無意識のうちにそういう作品へ向かったのかもしれない。当初、このお話をいただいたときは、いろんな人のギターとかベースのデザインを調べてみたんです。たとえばHOTEIさんといえば格子模様のギターデザインが思い浮かぶじゃないですか。最初はそんなところまで考えていなかったんですが、そういうものを作ってみたいという気持ちはあります。ですから、今度もし機会があれば、これまでとはまた異なるオリジナルなものもいいかもしれないとは思っています。

──では最後に、このベースを手に取る方々にメッセージなど。

kurry:この絵はtetsuyaさんのご依頼でベースにデザインしたものなんですね。だから、このベースを手に取ってもらえたらtetsuyaさんが好きな絵のひとつを持っていることと等しいのかなと思いますし、画家としては本当に嬉しいことです。

取材 文◎BARKS編集部 梶原靖夫 撮影◎田中和子(CAPS)

■<Painter kurry>
高校卒業後、数々の美大を受けるも全て不合格。
浪人するもまた不合格。
専門学校に入るも中退し、アパレル、内装、塗装系の仕事を経て、2005年よりアーティスト活動を本格的に開始。
2006年から関西を中心に数多くの個展、グループ展を経験。
2010年8月には大阪「EXCUBE」で開催した個展「FACE」は セールス、集客数ともに過去最高を記録。
国内最大のオンラインギャラリー「タグボート」主催、新人アーティストが集う"Next Generations"で作品販売額ランキング1位、作品販売数ランキング1位の2冠達成。
地下室や天井裏から飛び出して来たかのような作品が多い。
グラフィティアートにおいて、kurryが生み出す作品はまるで子供部屋から飛び出してきたように人の心を楽しく明るくハッピーにしてくれる。
大阪在住。特に受賞歴なし。

◆TETSUYA オフィシャルサイト
◆ESP オフィシャルサイト
◆kurry オフィシャルサイト

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