【インタビュー】ドラゴンフォース、最速にして濃密「速過ぎる、コーラスが大袈裟、ギター・ソロ過剰…そういったことだろ?(笑)」
イギリスを活動拠点とする多国籍型バンド、ドラゴンフォースが通算6作目にあたるニュー・アルバム『マキシマム・オーヴァーロード』を発表した。スピーディかつテクニカルで非常に情報量の多い、彼らならではの超絶メタル・サウンドにはさらに拍車がかかり、まさに他の追随を許さぬものへと快調に進化を遂げている。今回は、この作品のリリースに先駆けて去る6月中旬に来日していた両ギタリスト、サム・トットマンとハーマン・リのインタビュー記事をお届けする。今回はまずその前編。音楽と同様に密度の濃い彼らとの会話をお楽しみいただければ幸いだ。
◆ドラゴンフォース画像
――各国をプロモーションでまわっているそうですね。察するに、時差ボケに悩まされているのでは?
サム:間違いなくイエス!(笑)
ハーマン:俺はOKだけど。
サム:あらかじめ言っておくけど、仮に俺が眠そうな顔をしているとしても、それはインタビューが退屈だからではないから誤解のないように(笑)。コーヒーを飲んでも目が醒めきらないというか……。
――しかしどうあれ、自信作を引っさげてプロモーションで各国をまわれるというのはバンドにとって喜びであるはずですよね?
サム:そうだね。すごくクールなことだ。プロモ・トリップはハード・ワークでしんどいという人もいるけど、俺にとってはワーキング・ホリデイみたいなもんだ。しかも日本に来るのは毎回楽しいからね。友達にも会えるし、こうして話す機会もたくさんある。滞在そのものを楽しめるんだ。そしてもちろん、このアルバムの出来についてもハッピーな気分だしね。
ハーマン:とはいえ、自分たちが満足できていないアルバムなんて出したことはないわけだけど(笑)。もちろんこれからも出さないし。
サム:もちろん。満足できていないものを自分たちのもとから手放すことはない。それが納得のいく仕上がりになった段階でやっと「出していいよ!」ということになるんだ。
――過去15年間、そうした満足のいく作品ばかり、今作も含めて6枚出してきたというわけですね。今作については、劇的な変化を遂げているというよりは、“変わらないまま進化している”という印象を受けたんですが、当事者としての感触はどうですか?
ハーマン:その通りだと思う。何故なら俺たちは、独自のスタイルを築くために何年もの年月を費やしてきたからね。ドラゴンフォースは他のバンドがやらないようなことをやるバンドだし、自分たちならではの特徴的サウンドというのがある以上、それを維持していくべきだ。そこがいちばん重要だと思う。進化として自覚しているのは、リフが従来よりもヘヴィになっていること。あとは「スリー・ハマーズ」や「シンフォニー・オブ・ザ・ナイト」のように、いつもとは少しばかり違ったテーマの曲があることかな。
サム:うん。俺自身、自分が好きなバンドのサウンドが変わっていくさまには幻滅させられることが多々ある。変化ってものを全面的に否定するわけじゃないけど、大概はガッカリさせられてしまうんだ。もちろん、何故そうして変化していくのかはわかる。同じようなものばかりプレイし続けるのは退屈きわまりないことだからね。だけど俺の場合、何か違ったものを聴きたいと思ったときは、違うバンドを聴くんだ。それに俺たち自身、こういった自分たちなりの音楽をプレイすることをいまだに楽しめている。さほど変わりばえしないようであってもね(笑)。そこにいつもかならず付加価値があるし、それが興味を持続させてくれる。それに、どうあれ俺たちは速い曲がやりたいし、相変わらずビッグなコーラスが好きだし……全員がそういう音楽スタイルでやるのを楽しんでいるんだ。
――つまりこの作品は、自分たちに対して正直であるということの証拠でもある。
サム:間違いないね。好きな音楽のテイストも基本的に変わっていないし。もちろん個人的には新しいものもたくさん聴いているけど、昔から親しんできた音楽について「もうこんなものは聴きたくない!」みたいな感覚を抱くことはない。これまで好きだったものは、ずっと今も好きなままだからね。
ハーマン:俺たちの場合、音楽的な嗜好が変わるんじゃなく、そこに好きなものが追加されていくんだ。たとえば今、メタルコアが大好きな人たちのなかにも、数年後に「もうヘヴィなものなんか好きじゃない」ということになる人はいるだろうと思う。だけど俺たちは音楽のスタイルを変えたりしないし、そこに何かを加え続けていくんだ。
――ただ、“変わらずに進化し続けていく”というのはたやすいことではないと思うんですよ。それを実践していくうえで重要なのは何だと思います?
サム:自分たちにとっていちばん重要なものが何かを見極めることじゃないかな。俺たちの場合、楽曲自体が何よりも重要なんだ。俺たちがいつも大掛かりなコーラスをやるのもそのためだよ。実際、5枚も6枚もアルバムを作ってきた後で、過去にやってきたことを繰り返すことなく良い曲を作り続けていくというのは大変なことだよ。だけど俺たちの場合、いつも誰かから目新しいアイデアがごく自然に出てきたりする。何故そういうことになるのかを説明するのは難しいけど、いつも自然にそうなるんだ。
ハーマン:俺も同感。結局は、何を維持すべきかを見極めるというのがいちばん重要だと思う。で、それを見極めるためには、自分たちのことを好きじゃない人たちが言うことにも着目すべきなんだ。ドラゴンフォースを好きじゃない人たちが常に言うのは、曲が速過ぎるとか、コーラスが大袈裟過ぎるとか、ギター・ソロ過剰だとか、ゲーム・ノイズみたいな間抜けな音が嫌だとか……そういったことだろ?(笑)でも逆に言えば、そういった人たちがドラゴンフォースを嫌う理由として挙げている要素こそ、俺たちの音楽をドラゴンフォースたらしめているわけだよ。そうした要素が、このバンドを他とは違うものにしている。そして、みんなと違うことをやっていると、それはたいがい好かれる理由にも嫌われる理由にもなる。だけどそこで他のバンドたちに合わせようとせずに自分たちらしくあり続けることで、「ああ、このバンドはこういうものなんだな」と受け止めてもらえるようになるんだ。
――面白い話ですね。やっぱり誰でも、ポジティヴな反響だけ信じたいところというのがあるはずじゃないですか。だけどそういった良くない反響というのも、ある意味、自分たちを客観的に見るための鏡になり得るわけなんですね。
サム:ふふふ。確かに。
ハーマン:今作のプロモーションでヨーロッパをまわったときに現地のスタッフに説明しようとしたのも、俺にはこのバンドを好きじゃない人と話をする必要があるということ。このバンドが好きじゃない人からのインタビューを受けるべきだと思ったんだ。何故かといえば、ドラゴンフォースを好きじゃない人たちが普段からインターネット上で一方的に言っているさまざまなことについて、答えたかったからさ。ネット上では言葉のやり取りができないけど、「ここが良くない」「ここが酷い」と実際に言ってもらえれば、俺はそこで反撃することができる。それが的を射ていない言い分である場合にはね(笑)。何かを嫌いになるときというのは、かならず理由があるはずなんだ。嫌いだと言い切るなら、理由が言えなくちゃおかしいだろ? 俺たちはそれを知りたいんだ。俺はただ座って質問に答えるだけじゃなく、そうやって何かにチャレンジしたかったんだよ。
サム:もちろん人の数だけ考え方はあるはずだし、誰からも好かれたいと思っているわけじゃない。だけど、ちゃんと理由があって何かが嫌いな場合はともかく、わけもなく「くだらない!」と斬り捨てる人たちというのがいるだろ? それは理由になってないと思うんだ。単純に、その人の好みに合わないというだけのことだけでしかない。もちろん俺だって、あらゆる種類の音楽が好きだとは言えないけど、そんなときは「自ら進んで選ぶものではないが、出来が良いことは認めるよ」といった言い方をする。
ハーマン:2年ほど前だったかな。ある評者が酷いレビューを書いていたんだ。ドラゴンフォースがどれほど酷いバンドか、いかに俺たちのアルバムが聴くに堪えないものか、いかにその人自身がこのバンドを嫌っているかが書き連ねられていた。そこで俺は宣伝担当に、その評者を連れてこいよって言ったんだ。インタビューをしようじゃないか、とね。もしも本当にそのアルバムについて何かを言いたいのなら、コンピュータの陰に隠れてないでこっちに来いよってね。その本人はえらくビビったみたいだけど(笑)、俺はそういった人たちと向き合うことを恐れちゃいない。誰だって自分の言動には責任を持つべきじゃないか。何らかの形で自分の考えを書くんであれば、ちゃんとその理由を書かなきゃ駄目だと思う。
――確かに。僕自身もその言葉は受け止めたいと思いますし、今後は僕の記事が嫌いだという人たちの言い分にも耳を傾けてみようと思います(一同笑)。ところで今回の進化の理由について考えてみると、まずひとつ思い当たるのがマーク(・ハドソン/Vo)の件。前作は彼にとって加入後初のアルバムだったわけで、バンド側としても彼に何が期待できるのかを正確には把握できていなかったはずだし、何が起こるのかを試していたような部分もあったはずですよね? 当然、それも二作目となれば違ってくるわけで。
サム:その通りだ。前作について言えば、収録曲の多くはシンガーが誰になるのか定かじゃない段階にあるうちに書かれたものだった。それ以前は、前のシンガーの声域がどこからどこまでかも把握できていたし、どのあたりのキーが声質的にいちばん魅力的かもわかっていた。ただ、それを踏まえながら、魔法のようなことが起こることを期待してメロディを付けても、彼はそのメロディをコンスタントに正確には歌えなかったりしたけど(笑)。前作でのマークについても同じようなところはあった。だけど今はマークの許容範囲というのも理解できているし、メロディの組み立てもずっとイージーになってきたよ。誰もが彼のボーカル・パフォーマンスがベターになっていると指摘してくれているし、俺自身もそう思っている。もちろん“慣れてくれば向上する”というのは誰の場合でも同じだろうけども。前作もいいアルバムだったとは思っているけど、あれを完成させるのはハード・ワークだった。それに対して今回の作業は、もっと心地好かったよ。
ハーマン:マークの進歩というのは、俺たち他のメンバーの進歩よりも客観的にわかりやすいものだと思う。というのも、最初の機会と二回目というのには大きな違いがあるし、そこで最大級の変化が生じることになるのは当然だからね。俺たちが長い時間経過のなかでゆっくりと進化してきたのとは、少しばかり違うんだ。でも実際、彼はこのバンドでのライヴ経験からもいろいろと学んできたし、今回のレコーディングでは彼自身の判断でヴォーカル・トラックを録った部分というのもあった。前作の頃は、彼しかいないときにヴォーカルについての判断を下すなんてことはあり得なかったよ。俺たちがその場にいてチェックすることが不可欠だった。
――今回、お2人はコンダクターとして徹底的に指揮するまでもなかったわけですね?
サム:さほど指図はしなかった。もちろん重要な箇所では口を出したけども、マークに委ねる部分というのも当然のようにあったし。前作の制作時は、スタジオでギターを弾いている時間よりも、マークのヴ―カル録りに立ち会っている時間のほうが長かったと思う。なかなか骨の折れる作業だったよ。ただ、デモを彼に歌ってもらって、それをどんどん素晴らしいバージョンへと改良していく過程というのもクールだったけども。
取材・文:増田勇一
ドラゴンフォース『マキシマム・オーヴァーロード』
2014年8月13日 日本先行発売
DVD付スペシャル・エディション WPZR-30584/5 / \3,124(ex.tax)
通常盤WPCR-15817 / \2,457(ex.tax)
※日本盤のみボーナス・トラック1曲追加収録
※日本盤のみ初回限定特典として3Dジャケットを封入
※通常盤に加え、ボーナス・トラックやボーナスDVDなどを付けた限定スペシャル・エディションも同時発売
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