【インタビュー】高崎晃 vs マーティ・フリードマン、出会い~ギター~音作り~そして未来への15,000文字超ロング対談
1980年代半ばにLOUDNESSのギタリストとして世界進出を果たし、以降ワールドワイドにその名を轟かせている高崎晃。元Megadethのギタリストであると同時に、オリエンタル・テイストを活かした個性的なプレイヤーとして、各国で高い評価を得ているマーティー・フリードマン。両者揃って今年の初夏に最新アルバムをリリースしたことを受けて、BARKSでは2人の対談の場を設けた。両者の共通項や相違点、プレイ・スタイル、使用機材など、様々なことについて語り合ってもらったので、じっくりと読んで欲しい。
■1980年代にワイキキビーチでのんびりしてたらマーティが俺に声をかけてきた(高崎)
■僕はマジで高崎さんの大ファンだったのにまったく記憶にないんです(マーティ)
――お二人は、普段から親しくされているのでしょうか?
高崎晃(以下、高崎):いや、意外に感じるかもしれないけど、ほとんど会ったことがない。ただ、LOUDNESSが1980年代にアメリカ・ツアーをしていたときに、アメリカから日本に帰って来る途中にハワイに寄ったことがあって。ワイキキビーチでのんびりしてたら、まだ少年だったマーティが俺に声をかけてきたんだ。
マーティ・フリードマン(以下、マーティ):えっ? そうなんですか?
高崎:覚えてないんかい!(笑)
マーティ:……本当に申し訳ないですけど覚えてないです。
高崎:1980年代の半ば頃は、たしかハワイに住んではったよね?
マーティ:住んでいました。ハワイで生まれ育ったわけではなくて、父親の仕事の関係で何年かハワイにいたんです。
高崎:それで、自分はHAWAIIというバンドをやっているんだと声をかけてきて。ビーチで少し話をして別れたけど、その後どこかのホテルのラウンジで落ち合って飲み直したんだよ。
マーティ:本当にごめんなさい。記憶にないです。でもね、僕は本当に高崎さんの大ファンだったんですよ、マジで。HAWAIIは、LOUDNESSのパクリみたいなバンドだった気がするし(笑)。ハワイでは、バンドのメンバーを集めるのが難しいんですよ。それで、どうやって集めたかというと、LOUDNESSのレコードを聴かせて、それが弾けるかどうかをメンバー選びの基準にしたんです(笑)。
高崎:そんなにLOUDNESSを聴いてくれていたんだ。
マーティ:聴いていました。LOUDNESSの1枚目、2枚目、3枚目ですね。
高崎:じゃあ『THUNDER IN THE EAST』よりも前から?
マーティ:そうです。その3枚のアルバムは、僕の聖書みたいなものでした。
高崎:それで、なんで忘れてんのやろ?(笑)
▲『インフェルノ』 |
▲『ザ・サン・ウィル・ライズ・アゲイン~撃魂霊刀』 |
高崎:いや、俺に言われても(笑)。たしか、マーティだったような記憶が俺にはあるんやけど。もしかすると、HAWAIIはもう1人ギターがいた?
マーティ:いましたけど金髪でした。その頃の僕はまだ子供で、ちゃんとした人間じゃなかった(笑)。あれから大人になって、ちゃんと仕事をして、音楽の世界に入ったから、それからのことは覚えているけど。
――ちょっと不思議な話になっていますが、お二人は縁があるようですので、今回の対談を機に親交を深めていただければと思います。まずは、それぞれの最新作の話からいきましょう。マーティさんは5月2日に『インフェルノ』を、LOUDNESSは6月4日に『ザ・サン・ウィル・ライズ・アゲイン~撃魂霊刀』をリリースされました。
マーティ:今回のアルバムは、久しぶりに世界同時発売なんですよ。ここ5枚くらいは日本だけでしか手に入らなかったんです。そうしたら、世界中の人が欲しいと言ってくれたんです。それを知ったアメリカのレコード会社からお話をいただいて、新しいアルバムはワールドワイドでリリースされることになりました。なので、今回の『INFERNO』は、世界同時発売ということを意識して作ったアルバムです。僕は日本が大好きなことで知られているけど、日本の東洋的な味を入れ過ぎると、外国人にはハード過ぎて理解できないというか。冒険的な音楽が好きな人じゃないと、聴いてくれないんですよ。だから、東洋的な部分は控えめにして、僕の中の洋楽的な部分をフィーチュアするという考え方で作りました。
高崎:なるほど。じゃあ、マーティならではの和のメロディーとかは、今回はあまり弾いてない感じ?
マーティ:バレバレの和のメロディーではないけど、もちろん入れています。
高崎:それを聞いて安心した。ファンは、やっぱり聴きたいだろうからね。元々マーティは、どんな感じで日本の音楽を知ったの?
マーティ:ハワイは、どこに行っても日本の影響があるじゃないですか。日系人向けのラジオ局とかもあるし、日本の店とかもあるし、ハワイ出身のお相撲さんもいるし。そういう環境だから偶然ラジオで聴いたんですよ、日本の演歌を。演歌の歌い方にすごく惹かれて、こういうテイストを自分が活かせるようになったら、すごい武器になるなと思ったんです。その頃は、エディ・ヴァン・ヘイレンとかエリック・クラプトン、アル・ディメオラといったギタリストが人気だったけど、自分がそこまで上手くなるはずがないと思っていたから(笑)。でも、演歌のボーカルの揺らし方を自分のギターに採り入れたら、テクニカルなプレイに対抗できるヴォイスになるなと思ったんです。
高崎:それは、正解やったね。
――同感です。『インフェルノ』は、マーティさんのギター・プレイを堪能できることはもちろん、ギター・インストを中心としつつボーカル曲も入っていますし、曲調もバラエティーに富んでいて、インストゥルメンタルに馴染みが薄いリスナーも楽しめる内容になっていることが印象的です。
マーティ:僕は、ギタリストとして音楽を聴くことは一切ないんです。だから作品を作るときも、完全に聴いている人の感覚で作ります。すごく頑張って超素敵なフレーズを弾いて、超達成感があっても、録ったのを聴いたら“このカッコよさを理解できるのは3人くらいかな”って思うことがよくあるんですよ(笑)。だから、今はテクニカルなプレイで圧倒しようみたいな気持ちは一切なくて、リスナーとして自分が楽しめる音楽を作るようにしています。あと、一度やったことは、もうやらないということも心がけているので、作品を作るたびに新しいことを追究していくようにしています。LOUDNESSの新しいアルバムは、どういうテーマで作りましたか?
高崎:LOUDNESSは2011年くらいから、またアメリカ・ツアーをしたり、<MONSTERS OF ROCK>に出演したりするようになって。そうしたら、アメリカのマネージメントだったり、ロック・ビジネスに関わっている人達から、もっと本格的に世界に向けた活動をするべきだという意見を沢山もらって。それで、今回の新作はLOUDNESSのロックの真髄を、ここでもう一回見せたろやないかという感じで作り始めた。だからといって'80年代のLOUDNESSを、もう一度やるということではなくて。ごくごく自然体に、今の自分達が本当にいいと思える作品を作ることを目指した。
マーティ:ずっと前から聞きたかったことなんですけど、LOUDNESSのメロディー・センスは、あまり東洋的じゃないですよね。すごく洋楽っぽいんだけど、アメリカの耳で聴くと東洋的かなと思うメロディーになっている。そういうところは、意識しているのでしょうか?
高崎:意識してない。その辺は、自分が聴いてきた音楽のバックグランドが洋楽主体だったことが大きいかな。子供の頃は日本のフォークとかも聴いていたけど。自分の中に叩き込まれた洋楽のメロディーと日本人としての感性が混ざり合って自然と出てくるのが、ああいうメロディーなんだと思う。
マーティ:LOUDNESSは、すごくアメリカン・ロックだけど、全体なセンスとか全体的なメロディーの作り方は、僕らアメリカ人とは違っていて。それが個性だし、自然とそうなっているのは大きな武器ですよね。すごくオールマイティーな感じがする。育ったのは日本のフォークソングだけど、洋楽の一番カッコいい部分を知っていて、両方を融合させているわけだから。アメリカ人のミュージシャン達は、LOUDNESSがすごく羨ましくて、ヤキモチを焼いてると思います。“この日本人、アメリカ人より上手くロックできてるじゃん”みたいな感じで(笑)。
高崎:ハハハ(笑)。でも、LOUDNESSがデビューした頃に頭角を表し始めたデフ・レパードとかアイアン・メイデンといった欧米のバンドも世代的には俺らと一緒で、彼らが聴いてきた音楽や影響を受けたミュージシャンも似ていると思うんだよね。もちろん'60年代後半の音楽も通ってきているだろうけど、一番聴いていたのは'70年代のレッド・ツェッペリンだったり、ディープ・パープルだったりといったハードロックだったと思う。あとはプレグレとか。そういった同じところをベースにしてメタルを創った世代だから、楽曲やサウンドの方向性は自然と似通っていて。そこに日本人である自分達の感性やメロディー・センスを加えたのがLOUDNESSの音楽だよね。日本は他国の文化を採り入れたり、アレンジすることに長けている面があって。料理にしても中華料理からフランス料理からイタリア料理から何でも上手に作るし、日本人の好みに合わせてアレンジするのも上手い。そういうところが音楽でも発揮されて、器用に音楽を料理しているという感じなんちゃうかな。
マーティ:なるほどね。その感じは、よく分かります。
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