アナセマ、21世紀プログレッシヴ・ロックの最先端
アナセマの2年ぶりの新作『ディスタント・サテライツ』が6月4日に日本先行リリースとなる。日本盤の発売は13年ぶりのことだ。初回限定盤には高音質のステレオ/5.1chサラウンド音源を収録したBLU-RAY AUDIOディスクが同梱される。
◆アナセマ画像
1990年に結成、1992年にピースヴィル・レコーズよりデビューを飾ったアナセマは、1990年代のUKアンダーグラウンド・ゴシック・メタル・シーンの代表的存在として君臨した。ピースヴィルから4作のアルバムをリリース後ミュージック・フォー・ネイションズに移籍、この頃からオルタナティヴ/ポスト・ロック的なテイストを導入し、徐々にメタル色を薄めたモダンなサウンドにシフトしていく。
2004年にミュージック・フォー・ネイションズがレーベル事業を閉鎖したことによりく新作のリリースが途絶えてしまうが、その間断続的にツアーを行いつつ、彼らはレーベルにおもねらない活動スタイルを構築していくようになる。2008年に、ポーキュパイン・トゥリーのスティーヴン・ウィルソンが主宰するKscopeから約5年ぶりとなるアルバム『Hindsight』をリリース、以降はこのKscopeから作品を精力的にリリースしていくことになるのだ。
ここ最近はリリースも非常に活発で、ツアー活動も精力的に行われている。そうした活動の甲斐もあって、『Weather Systems』はヨーロッパ各国でチャート・イン、とりわけ東欧/北欧圏ではライブの動員も増加傾向にあり、バンド結成から25年近くを経て、音楽的にも人気の面でも現在が最も充実した時期にある。日本にも彼らの来日公演を待ち望むファンは多い。
Kscopeからリリースされている最近の作品同様、壮麗なオーケストラをフィーチャーした新作『ディスタント・サテライツ』のサウンドは、まさに“シンフォニック・プログレ”と言うべきものだ。とはいえビンテージなプログレッシヴ・ロックやハード・ロックのみならず、オルタナティヴ、ポスト・ロック、エモ、シューゲイザー的な要素も融合、それらを決して甘ったるさに流されることのないメロウなメロディでまとめ上げるセンスはやはり唯一無二のものだ。また、今作後半で特に顕著なのは、抒情的なメロディの一方で打ち込みを多用したインダストリアル/IDM/音響系的なテイストを大幅に導入している点だろうか。そういう意味では持ち前のリリカルなサウンドを生かしながらもさらなる新境地に挑戦している点も聴きどころのひとつと言える。
日本盤としてアナセマの作品がリリースされるのは『A Fine Day To Exit』(2001年)以来約13年ぶりとなる。その間に彼らのサウンドは大きく変貌しているが、“21世紀のプログレッシヴ・ロックの最先端”を行くそのサウンドで、この日本でも新たなファンを大いに獲得することになるだろう。
アナセマ
・ヴィンセント・カヴァナー(ボーカル/プログラミング/シンセサイザー)
・ダニエル・カヴァナー(ピアノ/ギター/シンセサイザー/ボーカル)
・ジェイミー・カヴァナー(ベース)
・ジョン・ダグラス(パーカッション/プログラミング/シンセサイザー/ドラムス)
・リー・ダグラス(ボーカル)
・ダニエル・カルドーゾ(ドラムス)
『ディスタント・サテライツ』
初回限定盤CD+BLU-RAY AUDIO 3800円+税
通常盤 2400円+税
1.ザ・ロスト・ソング パート1
2.ザ・ロスト・ソング パート2
3.ダスク(ダーク・イズ・ディセンディング)
4.エーリエル
5.ザ・ロスト・ソング パート3
6.アナセマ
7.ユア・ノット・アローン
8.ファイアーライト
9.ディスタント・サテライツ
10.テイク・シェルター
◆ワードレコーズ アナセマ『ディスタント・サテライツ』サイト