【インタビュー】テクノボーイズ・パルクラフト・グリーンファンド「『ウィッチクラフトワークス』という作品を大事にしていると同時に、テクノボーイズの音楽がこういう世界観なんだというのも出したかった」

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■僕達のやりたいことを媒介するものは何かと考えたとき
■アニソンというのは凄く良いんじゃないかなと思って


――TVアニメ『ウィッチクラフトワークス』エンディング・テーマ曲「ウィッチ☆アクティビティ」についてお伺いしますが、作詞は松井さんが担当しているんですか?

松井:そうですね、ほぼ。アイデアはみんなからもらいましたけど。

――曲作りの過程は?

松井:普段のやり方で言うと、それぞれ作ってきた曲を全員にまわして、最終的に石川が音をまとめるという作り方をしています。集まって作ったのは結成当初のごくわずかな間だけだったんですけど、今回は20年振りに集まって作りました(笑)。

――それはアニメの内容を踏まえて書かないといけないから?

松井:いや、ぶっちゃけるとただ単に時間がなかったからですね(笑)。

石川:これ、「明日までに作って」って言われたんですよ(笑)。


▲「ウィッチ☆アクティビティ」
――そんなことってあるんですか!?

松井:いや、それは割と日常的なことなんで特にビビらなかったんですけど(笑)。

石川:だいたいのイメージというか、言葉とかコンセプトが松井君の方から出て、そこから私がコード進行を作って。その後にビートをフジムラ君が入れていくという作業ですね。

松井:元々はカップリング曲の「Saturday Night Witches」を提出したんですけど、“カッコよすぎる”という理由でNGになったんです(笑)。

フジムラ:もっと可愛らしい曲が良いということで。クール過ぎたんでしょうね。

松井:歌っているのは作中のキャラクターの「KMM団」なんで、カッコ良いのは違うなということで。でも僕らは結構推してたんですよ。それで対抗馬として「ウィッチ☆アクティビティ」を出して、方向性が違う曲でコントラストをつけることで「Saturday Night Witches」を選んでもらおうと思ったんですが、そのコントラストが輝き過ぎて(笑)。こちらがEDテーマに選ばれました。結果的にどちらも使ってもらったんですけど。

石川:基本だけは30分くらいでできましたね。

松井:仮のメロディを入れて。決めのメロディだけは最初から作ってたんですけどね。サビの「ウィッチ、ウィッチ」っていう部分と「耳をピクピク」っていう部分だけはコンセプトの中にあったんです。

――必ず入れ込まなきゃいけないワードはあったんですか?

松井:いや、ないですね。もうかなり自由でした。もちろん歌詞の世界観は原作を読ませていただきましたし、アニメの脚本も拝見させていただいた上で書きましたけど。アニメの中のキーワードが持っている言葉のリズム感というのを抽出しようと思って。だからたんぽぽちゃんの(「KMM団」の倉石たんぽぽ)“ケモミミ”を表すのに“ピクピク”という言葉がここに絶対いるな、とか落としどころを先に決めて、そこに単語を落とし、あとは水滴を落とした時のように勝手にジワっと広がっていく感じでした。

――その言葉が出てきた時に1人ひとりのキャラクターが浮かぶように?

松井:もちろんそうですね。歌うパートも僕が勝手に決めさせてもらったんですよ(笑)。歌詞の段階で、パート分けがある以上、そのキャラが愛されるように作りたいという気持ちは常にあるので。「骨使い」の飾鈴(かざり りん)というキャラには「骨折り損」という言葉を入れたりとか、歌うキャラクターにとって自然に聴こえるようにはしています。あとはウィッチ(魔女)という言葉ですよね。

――そこを全て任されているというのはテクノボーイズの音楽が信頼されているからなんでしょうね。

松井:でも今回の歌詞は独特でしたら、正直「大丈夫かな、怒られないかな?」という気持ちもありましたけどね(笑)。

――「価値観なんて蜃気楼だよね」という歌詞が印象的だったんですが。確かにそうだな、というか。

松井:はい、そういうことを言っていただいた時に、ドヤ顔ができるようにしてます(笑)。色んな音楽を聴いている方々がアニソンを聴いてくれるような状況ですし、僕らは『ウィッチクラフトワークス』という作品を大事にしていると同時に、テクノボーイズの音楽がこういう世界観なんだというのも出したかったんで、少なからずそれが歌詞にも表われています。時代によって価値観も変わりますし。ボブ・ディランも言っているように(笑)。

――確かにアニソンを聴く人がアニメファンだけではなくなってきていたり、ロックフェスにアイドルが出ることが普通になってきたりという時代の変化はありますよね。今作ではそういう変化も踏まえてより遠くまでテクノボーイズの音楽を飛ばそうという意識がありますか?

フジムラ:そうですね。僕達はテクノボーイズと名乗っていますけど、僕たちの感覚で言うと、4つ打ちだけがテクノだとは思っていないんですよ。

石川:ビートルズもテクノだと思ってたんですよね。

フジムラ:もっとテクノというものを広義で考えて作ってたんですけど、結構パブリックイメージがその頃は狭かったんです。例えばYMOの曲をやってるのに「テクノじゃないじゃん!」的に言われたりすることもあったんです(笑)。

松井:「何で!?」って(笑)。

フジムラ:なんとなく、どうしても自分達の音楽は伝わりづらいんだなというのは感じていたんですよね。それで僕達のやりたいことを媒介するものは何があるんだろうと考えたときに、アニソンというのは凄く良いんじゃないかなと思って。4、5年前に『らき☆すた』のリミックスをやらせてもらったんですけど。まあ結構ゴリゴリのリミックスをしたんですけど(笑)。

一同:(笑)。

フジムラ:そこで結構評価をいただいたんで、これはヒントになるな、とその時から感じていて。今回のお話をもらった時に、いわゆるアニソンに寄せるという方法もあったとは思うんですが、僕達にオファーが来たということは、テクノボーイズらしいものを作らなければという気持ちがありました。完成した作品を見たら、エンディングの映像に音が乗った時にうまくシナジーして、ポップに見えて凄いなと。でもオフ・ボーカルにして聴くと、やっぱりゴリゴリのことをやってるんですけど(笑)。だけどそのコントラストが素敵な作品になったし、しかもそれがとても受け入れられたことが良かったなと思います。

――作品同士のケミストリーがあったんですね。

フジムラ:本当そうですね、歌入りとそうでないのと全然印象が違うと思うんですよ。

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