ヤマハ、生音の鳴り・中低域を強化しフルモデルチェンジしたアコースティックギター「Lシリーズ」を披露
▲幅広いラインナップを揃えたLシリーズ。上位グレードはナチュラルのみだが、L16グレードにはブラウンサンバースト、L6グレードにはさらにブラック、ダークティンテッドなどのカラーも用意。
ヤマハは、2月12日、アコースティックギター「Lシリーズ」の記者説明会を行った。「Lシリーズ」は、ヤマハを代表するアコースティックギターのフラッグシップモデル。1974年の登場から40年めを迎える今年、10年ぶりとなるフルモデルチェンジを果たした。
◆「Lシリーズ」全モデル~拡大画像~
3月より発売される新「Lシリーズ」のラインナップは6グレード18モデル。6/16/26/36/56/86の6つのグレードに、それぞれオリジナルジャンボボディ/スモールボディ/ミディアムジャンボボディ(LL/LS/LJ)の3つのボディシェイプを用意(86はLLのみ)。L16グレードには12弦モデル、レフトハンドモデルも用意する。また、L56以上のカスタムモデルは受注生産品。
説明会はヤマハミュージックジャパンLM営業部の小島氏の挨拶でスタート。「Lシリーズ」が1月に行われたNAMM Showで中・高級価格帯のギターとして高い評価を受けたことを紹介。2011年にアメリカで中級価格帯のマーケットでシェアを取るべく発売されたAシリーズが、全世界でも好調な販売実績を出していること、それに続いて新Lシリーズが投入されたという背景にも触れた。40年間培ったノウハウをさらに進化させてフルモデルチェンジした「Lシリーズ」の生音をしっかり聞いてほしいということで、今回披露されるギター演奏にはピックアップもマイクもなし、会場はアコースティックの音響に優れたヤマハ銀座サロンが選択されたことも明かされた。
▲ボディシェイプは各グレードに3種類を用意(写真中)。写真右はカラーバリエーションも含め26モデルの広いラインナップに自信を見せる小島氏。
続いて、40年の伝統をしっかり継承しながらも現代の音楽のニーズを取り入れ、さらなる進化を遂げたという新Lシリーズのモデルチェンジのポイントを紹介。「アコースティックサウンドの追求」「演奏性の追求」「新しい機能の追求」「細部にわたる改良の追求」の4つを掲げる。
アコースティックサウンドの追求としては、生音の鳴り、なかでも中低域の強化を挙げる。ブレーシングの響棒の高さを低くすることで強度は落ちるがその分、表板の振動効率が向上。また、形状も先端を細くする加工を止め、真四角にすることで中低域が豊かになっている。
ヤマハ独自の木材改質技術であるA.R.E.(Acoustic Resonance Enhancement)を全モデルに採用したことも大きなトピック。A.R.E.は、薬剤を使ったり木材に負荷をかけることなしに、表板に温度、湿度、気圧を制御することで木材の経年変化同様の変化を生み出し、振動を高めるもの。中低域はよりふくよかに、高音部は立ち上がりがよく減衰が速くなることでよりシャープに、また余分な倍音成分が少ない熟成された暖かみのあるサウンドが得られる。従来は国産のL26以上のグレードのみの採用だったが、新LシリーズではL6およびL16グレードでも採用されている。
▲響棒の形状の変更により中央の交差する部分が密接したことで振動率がアップ(写真左)。A.R.E.処理により非処理モデルと比べ低域の伸び増、パワーレベル大、中・高域の立ち上がり増といった結果に(写真右)。
演奏性の追求では、ネック形状の変更がある。ハイポジションを薄くしたことで演奏性が向上。既存モデルとの差は1mmだが、非常に手に馴染むようになっている。また、指板のエッジを丸く削ったことも握りやすさに寄与。加えて、弦高、弦間ピッチも変更。弦高は1弦側を高く、6弦側を低くし、弦間は広くしている。実際に握ってみるとその効果は絶大で、どのモデルもハイポジションでも非常に握りやすく演奏しやすいネックになっていることが実感できた。
▲ネックは新しい形状に。握りやすさ、弦の押さえやすさは抜群。
新しい機能の追求では、L6、L16グレードでのパッシブピックアップの搭載を挙げる。電池ボックスもなく、ボディへの加工や重量の変化もいっさいないことから、生音をいっさい犠牲にしていない、それでいていざというときにはPAにつないでライブもできる即戦力のあるモデルだということをアピール。ピックアップはAシリーズ、APX/CPXシリーズ上位モデルなどで使われているSRTと同じピエゾピックアップなので、パッシブながら出力は十分あるとも。このほか、全モデルでねじれや反りに強い5ピースネックを採用、L26以上のモデルではヘッド裏にローズウッドの化粧板とボリュート加工が施され、ヘッドの強度が高められている。また、順反り・逆反りの両方向に力が効くダブルアクションロッドは、ヤマハのフォークギターの現行モデルすべてに採用されている。
▲5ピースネックを全モデルで採用、L26以上はヘッド裏に化粧板が(写真左)。トラスロッドは順・逆の両方向に対応する(写真右)。
細部にわたる改良の追求では、豊かなサスティンが得られるネックの接合形状を挙げる。ネック接合部分を深くとるこの形状は従来カスタムモデルのみだったが、L26、L36グレードでも継承。また、L36以上はラッカー塗装になっているが、塗装の最初の工程である木目を埋める目止めに石粉を採用。レスポンス、ダイナミクスが格段に向上している。これも従来はカスタムモデルのみに採用されていたものだ。
ポイントの紹介が終わったところで、ゲストとしてフィンガーピッキングスタイルのアコースティックギタリストとして国内外で活躍する田中彬博(たなかあきひろ)が登場。Lシリーズの3種のボディスタイルLL(オリジナルジャンボボディ)、LJ(ミディアムジャンボボディ)、LS(スモールボディ)それぞれを演奏、そのサウンドを聴かせた。
▲ゲストの田中彬博。2010年、アメリカで開催されている世界規模のギターコンテストWalnut Valley Festivalでアジア人初、史上最年少でグランプリを受賞。コンテストではLJ36を使っていたとのこと。
まず「LS26 ARE」については、「全モデルの中でも一番明るくて乾いた、ヴィンテージのルックスに似合った音がする」「すごく粒立ちがよくて明るい音なんですけども、立体感も存在感もある」と紹介。これに合うようにとスリーフィンガーでフォーキーな明るいフレーズを演奏。爽やかな音色が会場に響き渡る。
続く「LL36 ARE」は、「LS26 AREに比べるとすごく深みのある、すごく豊かな鳴りがします。特に単音を弾いた時にスライドで演奏したりすると、実音に対してキラキラと倍音が付いてくるような……」「すごく深みのある、艶のある、美しい音がするギター」と印象を語り、ストロークと単音弾きを交えノリのいい演奏と量感あふれる音を聴かせた。
最後は「LJ36 ARE」。普段からLJのシェイプをレコーディング、ライブ使っているという田中彬博は「立っても座ってもすごく弾きやすいギター」「お尻も大きくてくびれもあるので、すごく体にフィットする」「音もバランスがいい」とコメント。DADGADのオープンチューニングで、ストローク、メロディ、そしてタッピング奏法を交え演奏、次々と表情を変える演奏と多彩な音色で会場を沸かせた。
演奏後、新しいネック形状について聞かれると「すごく弾きやすくなりました。Aシリーズとかのネックを経て、さらに弾きやすくなったという感じ」「僕はたまに親指を上から引っ掛けて6弦とかと押さえたりするんですけども……。それが今までちょっとこうカドがあったので痛い感じもしたんですけども、今回のは丸くエッジが削られててすごく押さえやすいですね。低いポジションから高いポジションまですごくスムーズですし、どのフレットでもほんとにストレスなく弾けるネックですね」とプレイアビリティの高さが示された。
▲どのモデルもネックは非常に薄く、握りやすい形状(写真左)。モデルにより素材のほか、インレイなどのデザインも異なる。写真中はLL86 CUSTOM ARE、右はLL26 ARE。
◆LL86 CUSTOM ARE
価格:1,500,000円(税抜)
◆LL56 CUSTOM ARE
◆LS56 CUSTOM ARE
◆LJ56 CUSTOM ARE
価格:500,000円(税抜)
◆LL36 ARE
◆LS36 ARE
◆LJ36 ARE
価格:360,000円(税抜)
◆LL26 ARE
◆LS26 ARE
◆LJ26 ARE
価格:290,000円(税抜)
◆LL16 ARE
◆LS16 ARE
◆LJ16 ARE
価格:100,000円(税抜)
◆LL16-12 ARE(12弦モデル)
価格:125,000円(税抜)
◆LL16L ARE(ライトハンドモデル)
価格:125,000円(税抜)
◆LL6 ARE
◆LS6 ARE
◆LJ6 ARE
価格:60,000円(税抜)
発売日:2014年3月
※1 品番の「L」の後の各アルファベットはボディの各形状の略号で、「LL」は“オリジナルジャンボボディ”を、「LS」は“スモールボディ”を、「LJ」は“ミディアムジャンボボディ”をそれぞれ表す。
※2 LL86 CUSTOM ARE、LL/LS/LJ56 CUSTOM AREは、受注生産品。
◆Lシリーズ 製品ラインナップページ
◆ヤマハ
◆BARKS 楽器チャンネル
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