清春、年末大阪公演は感動の9時間69曲。そして衝撃の発言「黒夢が武道館で演るのはこれで最後」

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2013年12月30日、清春が観せたのはなんと9時間、69曲という前代未聞のステージだった。

◆年末大阪公演画像、セットリスト

その数字だけを見ても凄まじいのは確かだが、その記録以上に記憶に残る、清春がバンドメンバー、ファンとともに作り上げた壮絶でもあり、もはや美しくもあったこの夜をレポートしたい。

毎年恒例としている、1年を締めくくるライブが今年も大阪·なんばHatchで開催された。毎回、前年の演奏時間、曲数を更新してきたこのステージ。前年も64曲7時間強という驚愕の内容だった。

2013年も前年以上のものが観られるだろうと期待は高まっていた。なにより、今回の年末大阪公演がちょうど10回目を迎えるということで、事前に「このステージが区切り、見納めになるだろう」と清春自身から発言があったことで、よりスペシャルな内容になるのだろうと。

1曲目「JUDIE」から始まったステージはスタートから一切の手加減がなかった。普通に考えても、前年以上の公演時間を目指すと7時間を超えるのはわかっている。それでも当然のように彼は体力の温存や喉の調子を考えて控えめに……なんて甘いことは考えない、いつもと変わらないスタイルで、「退廃ギャラリー」「mellow」「五月雨」と次々に披露する新旧織り交ぜた楽曲陣でオーディエンスを狂わせていく。

艶めいた表情を見せ、優しく包み込むように歌ったかと思えば、「Ilyd」「devil」と危険なまでに激しい楽曲で攻めまくり、会場は2階席でも汗ばむほどに熱く熱量を上げていく。

そして25曲目「LAW'S」で一部が終了。すでにこの時点で一公演分のステージが終わったも同然だが、清春は「また後で」と軽々と言い放した。

二部の幕開けは上昇感強く会場をひとつにまとめる「groover」でスタートした。二部といってもライブはまだ序盤だ。MCでも「みんなちゃんとご飯食べた? まだまだこれからだよ」と、ほんわかとしたトークで会場を和ませ余裕の表情を見せつつ、バラエティ豊かな楽曲陣をバンドメンバーとともに次々に披露する。38曲目には「次のアルバムに入る予定でいます」と新曲を披露。2014年にはソロのアルバム制作をスタートさせることを発表し会場が大いに沸いた。

そして41曲目、これまでのバンドスタイルでのステージから一転、2013年に東京·Mt.RAINIER HALLで何度と開催された<MONTHLY PLUGLESS>と題されたアコースティックスタイルを再現する形に。「UNDER THE SUN」「闇」とギターの美しい音色に乗せ、広い会場にその歌声を響かせる。声はどこまでも響き、40曲を越えてもまだまだ艶めきを保っている。そして続く43曲目「光」、闇から光へ空気や匂いすらもステージに乗せて表現していく。

45曲目には清春が敬愛するDEAD END「The Godsend」のカバーが披露され、まさかの展開にフロアからは歓声が沸く。リスペクトの気持ちを込めつつ、楽曲の世界観を自身に反芻させることでまた新しい一面を見せてくれた。

二部のセットリストは中盤に向かい、様々なアプローチで自身の世界を歌に、言葉に乗せてオーディエンスに伝え、48曲目「COME HOME」でこの日の本編が終了した。

「海岸線」から始まったアンコールは四度に渡って繰り広げられた。流石に徐々に体力が奪われてきているのか、時折イスに腰掛けながら歌う姿が見られたがそれでも声は衰えない。それどころかより深みをもった声に感じるほどだ。「まだ全然歌える」、笑顔でそう話す清春の声にオーディエンスは安堵と共にもっともっと声を聴きたいと彼の名前を叫ぶ。その声に応えるように「confusion」でフロアの熱を高め、「輪廻」や「MELODIES」で壮大な世界観を歌にしてオーディエンスを惹きつける。

そしてここでのMCはファンにとって重要な内容だった。自らの一年の活動を振り返りつつ、1月29日に控えた黒夢の日本武道館公演の話へ。

それまでにも何度と黒夢の活動に関して言葉を濁してきた彼が「次の武道館が黒夢にとって最後の武道館になります。」とはっきりと伝えたのだ。

一瞬にしてどよめくフロア。だがその直後に彼は「黒夢でも、SADSでも、ソロの清春でも僕に変わりはない」と自分の思いを伝える。彼は黒夢であり、SADSでもある。その中心でパフォーマンスするのはどれも清春自身には違いない。どの形態で活動してもライブを心待ちにするファンに感謝の気持ちを伝え、一緒にこの先へ向かおうという言葉を何度か放った。

4度目のアンコール、64曲目「HORIZON」で昨年と同じ曲数に達し、「あと5曲やります」と昨年を大幅に超える曲数を披露することに。しかも当初の予定では67曲で終演する予定だったのだが、まだ声が出る、もっと歌いたい、と急遽「ID POP」や「DEPRAVITY DAY」が追加されたとか。

体がボロボロになっても、声が届く限り歌いたい。その想いは歌だけでなく、オーディエンスに投げかける言葉でも伝わる。「愛してます」「ありがとう」、何度と叫ぶ彼の姿には美しさすら感じてしまう。

最後までファンに何度も感謝の気持ちを伝え、この日最後の楽曲「あの詩を歌って」へ。最後の最後まで声を振り絞り全69曲に及ぶ壮大なステージは終わってしまった。

ステージ終了後、ともに長いステージを演りきってくれたバンドメンバーの名前を呼び、盛大な拍手で讃えた。さらに、この10年間に渡り、年末大阪でのこのロングステージ公演を仕切ったイベンターである大阪ウドー・中西 氏をステージへ呼び込み感謝を伝え抱き合う。「彼がいないとこのライブは出来なかった……。」、アーティストが裏方であるスタッフをステージに呼び込むことは滅多にない。それでも、一緒にステージを作り上げてくれたスタッフがいることをオーディエンスとわかち合う。清春ひとりが作り上げていたわけではなく、バンドメンバーやスタッフ、そしてファンがいることで自分がいることを伝えると、ステージから去り際、見えなくなるギリギリまで彼はファンに手を振った。

公演の終了を告げるSEが流れ、時計を見るとなんと午前4時前だった。このあまりに凄まじい偉業は、もはや音楽フェスとも退けをとらない9時間を超える長いステージだった。

そしてなにより、10年間の区切りとしても決して生涯忘れないであろう、清春のこのステージの目撃者となったオーディエンスたちの晴れやかで清々しく、ひたすら満足げな表情が非常に印象的だった。


◆VARKS
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