【インタビュー】浮気者ミニアルバム『I狂U』を武瑠が語り尽くす。「どんどん攻めて、いろんな人たちを蝕んでいきたい」

■基本はどキャッチーでどポップでどストレート。
■なのに、アレンジでこんなに雰囲気はダウナーになるものなんです

──では、ここからは収録曲解説にいきたいと思うんですが。まずM1「I狂U」。

武瑠：アンダーグラウンドのなかでも「I狂U」は自分のなかではかなりキャッチーなほうなんですよ。バンド・アレンジに変えれば全然SuGでもできるし。コードとかもそんなにマニアックなコードは使ってなくて、どJ-POPなコード進行だったりするんですよ。意外と。アレンジとかPVとか雰囲気で尖った感じに見えるんですけど、基本はどキャッチーでどポップでどストレート。なのに、アレンジでこんなに雰囲気はダウナーになるものなんです。

──M2「忘却の空」。こちらはSADSのカバーですよね。清春さんっぽい巻き舌なヴォーカリングがあったりしましたね。

武瑠：はははっ。巻き舌！　誰に影響されたんだろう……でも、清春さんももちろんあるでしょうね。

──原曲とはまったく違う斬新なアプローチにしびれました。

武瑠：これをやると決めてからは原曲は聴かなかったんです。歌は今の自分がフラットに歌って、アレンジで大幅に変えて、そこでバランスをとろうと考えてましたね。

──これは東京の中の池袋というイメージでセレクトされたんですか？

武瑠：あのドラマ（※TVドラマ『池袋ウエストゲートパーク』主題歌）のイメージで。アレンジもあのドラマの方向性で。ドラマはヒップホップの要素が強かったんで、イントロとかもオリジナルver.では出てこない感じにして。あと、拳銃の音をサンプリングしてギャングな感じも出しつつ。エミネムとかを想像させるようなアレンジをして下さい。とオーダーしました。

──トラックがあがってきたときは武瑠さんも衝撃だったんじゃないですか？

武瑠：感動しましたね。このイントロに。ここが一番好きなんですけど。これならちゃんと違うのが見せられるなと思いました。

──この曲でSADSを知ったんですか？

武瑠：そうですね。当時、黒夢は知らなかったんです。一昨年、黒夢が復活した代々木で初めてライヴを観たんですけど。そのときはお礼だけ伝えて帰りました。会わないようにして。

──なんでですか？

武瑠：1％でも5％でも認められるまで挨拶しないようにしてるんです。俺が影響受けた人には。今ってTwitterとかもそうですけど、本当に気軽につながれちゃう。でも、そういうつながり方は意味がないと思うんです。アーティスト間では。だから、ズルして会わないんです。ちゃんとその人の射程範囲に入れるように頑張ってるんです。

──そういうところ、硬派なんですね。

武瑠：そうじゃないとつまんなくなっちゃうでしょ？　誰でもかれでも会って、有名な人に囲まれてると、なんか自分が凄い人になった気分になって終わっちゃうんで。だから、清春さんとかHYDEさんとか、自分の基盤になった人は無理して会いたくないです。

──清春さん、HYDEさんは自分の基盤にどんな影響をあたえてくれた人たちなんですか？

武瑠：その当時は洋楽か、テレビから入ってくる邦楽のJ-POPかっていう風に聴いてる音楽が二極化してて。“バンド”っていう概念もなかったんですよ。でも、リンプ・ビズキットとかSUM41とかマリリン・マンソンを好きで聴いてるうちに、だんだんとバンドというものが分かってきて。そこでSADS、 HYDEさんのソロのPVを見て“あれ、日本にもバンドがいるぞ！”と思って。そこがバンド、ヴィジュアル系に入るきっかけになったんです。

──まさに自分の原点となるSADSだったんですね。

武瑠：そうなんです。「忘却の空」は俺が初めてコピーバンドで歌った曲でもあるんです。SuGが活休したときの自分の誕生日ライヴでも歌わせてもらったり。節目節目で歌ってきた大事な曲だったんで。自分のきっかけみたいなものです。

──M3「undermine」。これ、アルバムのなかでは一番キャッチーで分かりやすいかなと。

武瑠：曲はこれが一番シングルっぽいなと思いました。だけど、これを選ぶとPVが普通になってしまって。ああいうPVは撮れないですからね。この曲は後からできたんですよ。でも、こういうキャッチーな曲が真ん中にあることでアルバムを飽きずに聴けるなと思って入れました。最初に聴いたときから真ん中かなと思ってました。サウンド的にはちょっとリンキンパーク感があって。これも元々自分が好きだった原点に戻ってる感はあるな。

──M4「愛の妙理」は癖になる曲ですよね。

武瑠：そうっスね。マジ適当です（笑）。歌も一発録りで、歌詞も思いつくままに書いた。でもこの歌詞、めっちゃ気に入ってるんですよ。

──難しかったですけどね。漢字の文字とか、普段聞き慣れない単語もいくつかあって。

武瑠：一緒に歌ってる女の子に会ったときに“言葉が分からなくてお婆ちゃんに聞きました”っていわれました（笑）。

──“巧（たく）まずして”とか、よくこんな言葉を思いつきますよね？

武瑠：こういうの得意なんです。でもSuGではこういう曲調がないので。曲自体は、これ合ってんのか合ってないのかよく分かんないっていうメロディーが多いんだけど。ぐちゃぐちゃな魅力があると思ったんですよね。曲を発注するときには仏教っぽい曲にしてくれってオーダーしたんです。高円寺で起こってる世にも奇妙な物語みたいなイメージで。日常のなかでいきなり頭がおかしくなる感じがいいってことを伝えて、まさにそういう感じの曲が上がってきました。物語としては、男女が高円寺の商店街を歩いてたら何度も会っちゃうんですけど。これだけ街中で何度も会っちゃうというのは、神様が強制的に2人を会わせようとしてるんだというお話。

──最後に落語が入っているのは？

武瑠：世にも奇妙な物語が終わって、最後に“ちゃんちゃん”っていう。“これ自体が「愛の妙理」っていう落語の小話でした。“ではおあとがよろしいようで”っていうところです。

──M5「96」。これ、たまらなくいいです。

武瑠：ダウナーな感じですよね。これは下高井戸のイメージです。

──えっ……どこが下高井戸なんですか？

武瑠：えー、なんか下北には住めない2人って感じがするじゃないですか。この曲はそんな男女2人が明大前あたりで“あ、あたしも「ソラニン」読んでるよ”みたいなことから仲良くなって。女の人は2つ先輩で、先に社会人になっちゃうんですよ。それで会社の付き合いとかでなかなか家に帰ってこなくなって。そういうズレから、もう終わりだなとお互い思ってるのにワンルームの部屋に一緒に住み続けてて。だんだんとその苦しさや哀しさの二酸化炭素で部屋がうまっていくというお話。

──聴いててもこの二酸化炭素にうもれていく感じがせつなくてせつなくて。本当にはまったら抜けられない、いい曲なんですよ。

武瑠：たむらぱんさんの曲なんですけど、こんなにドンズバで曲を書いてくるってすごいなと思いました。さっきいった物語を最初に伝えたら、その場で意味不明な絵を描きだして（笑）。俺にはその絵、分かんないなと思ってたら、設定通りの曲が来たので。曲以外に歌詞も書いてきてくれて。それが曲にもぴったりで。しかも自分が書かなさそうな言葉、“弓なりに曲がった心”とかいいなと思ったんです。その抽象的な言葉に、俺がもうちょっと具体的な言葉を加えて。歌詞は合作にしました。

──M6「rise and fall」。すごくゴシックな雰囲気を感じました。

武瑠：ゴシックですね。自分がやりたかったヒップホップの完成形みたいなところはありますね。この曲は。

──tokyoで、ヒップホップで、ゴシックで。

武瑠：アー写に一番合ってると思います。すっごい好きです。この曲。こういうのやってる人いるのかなって思います。

──前の曲からの流れもよくて。

武瑠：それでこの曲は最後の曲っていう気がしますよね。エンドロールが流れてきそう。タイトルの通り、朝日が昇ってはまた日が沈んでを繰り返すんだけど、でも人だけは変わっていく。別にウチらがどんな風に変わろうが、街からすればあんま関係なくて。それを繰り返していくだけ。だから、その繰り返し感を出したくて、同じループがひたすら入ってるんです。最初から最後まで。歌詞はせつないとか苦しいとか哀しいとか、プラスの感情ではないんですけど。でも、それがなぜかキレイに見えたりするという。そういう逆のことを書きたいなと思って書きました。「rise and fall」のriseをカッコ良く思う人も入ればfallをキレイに思う人もいる。人によってどっちが正しいとかはないんだなというところがM1の「I狂U」の“正論のよこしま”とか、さらにはtokyoの曖昧さというものにつながってるんです。

──それにしてもSuG復活を盛り上げるためとはいえ、壮大なプロジェクトになりましたよね。

武瑠：普通に復活するよりも浮気者を挟んだほうが“SuGってこんなこともできるんだ“って。1回SuGのイメージを壊せるじゃないですか。なので、浮気者では今後もどんどん攻めて、いろんな人たちを蝕んでいきたいなと思います。誰か浮気してくれないかな。

──どんな人と浮気したいですか？

武瑠：すごい年上の人とやりたいですね。いろんなことやりつくして何か楽しいこと、刺激探してる人とやりたいです。PVとか見てもらって“これ面白い”と思う人、僕と浮気しませんか？（微笑）

──そんな浮気相手募集と。

武瑠：で、来年2月に出すSuGの復活シングルも、浮気者を見ておくとさらに楽しめる。

──えっ、最後にそんなヒントを。浮気者と次のSuG、つながってるんですか？

武瑠：SuGが寿司なら、浮気者がガリみたいな関係？（笑）

取材・文●東條祥恵

ミニアルバム『I 狂 U』
2013年11月20日発売
完全限定生産盤(武瑠デザイン・オリジナルＴシャツ＆Blu-ray封入)／PCCA.03929／￥6,900
・特注BOX仕様
・武瑠デザイン・オリジナルＴシャツ
・オリジナルブックレット
・浮気者ライブライブ応募券
＜Blu-ray収録内容＞
ミュージックビデオ「I狂U」（Original Ver.）
ミュージックビデオ「I狂U」（Another Ver.）
メイキング映像

通常盤(CD Only)／PCCA.03930／￥1,800
【収録曲】
M1.I狂U
M2.忘却の空(サッズ カバー曲)
M3.undermine(ゆよゆっぺ 提供曲)
M4.愛の妙理(0.8秒と衝撃。 提供曲)
M5.96 (たむらぱん 提供曲)
M6.rise and fall

＜SuG Onemanshow 2013 "update ver.0"＞
2013年12月29日(日)
国立競技場代々木場第二体育館

＜SuGリリース情報＞
2014年2月活動再開第一弾シングルのリリースが決定！

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