【インタビュー】lecca「どうしたら自分が作る音楽が、聴いている人を元気にできるのかなぁと思いながら作っていることが多いんです」
2009年にリリースした「For You」のヒットで、全国にその名を知られるようになったlecca。今年の夏は各地のフェスで引っ張りだこだった彼女が、8枚目のアルバム『TOP JUNCTION』を完成させた。leccaにしか生み出せない独自のメロディや詞の世界は、さらに研ぎすまされ、よりアグレッシヴでポジティヴ。力強く背中を押すような楽曲ばかりが並ぶ。RHYMESTERやTEEとのコラボエピソードなど、アルバム制作について聞いた。
■自分のお尻を叩くようなストイックな立ち位置の曲が
■書きたいなっていうモードになってたんです
――アルバム『TOP JUNCTION』はlecca史上最強にポジティブでアグレッシヴな一枚ですね。
lecca:前の二作と比べると、この『TOP JUNCTION』はアグレッシヴ、ストイック、ソリッドという言葉がハマる一枚なのかなという気がします。毎回、前作のカウンターみたいな形で振り幅が出てくるんですが、今作は、前作『ZOOLANDER』で楽しく明るくっていう雰囲気で曲を書き続けてきたあとだったので、自分のお尻を叩くような、ストイックな立ち位置に戻った曲が書きたいなっていうモードになってたんです。
――力強さがありますよね。言葉ひとつひとつにものすごく説得力があって、しかも、ただ強いだけじゃなく、弱い部分や悩みの底も見たから強いんだろうなという奥行きも感じられます。
lecca:自分では自分の言葉がどれほど説得力があるのかわからないし、まだまだ自分の知らないことや勉強が足りないなぁと思うところもあるんです。それで今回は「Sky is the Limit」でRHYMESTERのお力を借りたりして、足りないところを助けてもらったり。自分一人で言うよりも、みんなから支持されていて、みんなから憧れられているRHYMESTERに入ってもらったほうが、こういう曲は絶対に良いなと思ったんですよ。
――「Sky is the Limit」はアルバムの中でも飛び抜けてストイックで前向きですもんね。
▲『TOP JUNCTION』【CD+DVD】CTCR-14813
▲『TOP JUNCTION』【CD】CTCR-14814
――それはどういうことですか?
lecca:RHYMESTERは長い間、音楽活動をしてきて、きっと何百曲って書いてきたと思うんですが、40歳を越えた今、「限界はない」っていう内容で曲を書くことはないだろうって。でも、レゲエのダンスホールの曲なら、すごくシンプルなテーマをキャッチーなダンスと一緒に伝えられる。だから、レゲエの色合いもある私とならば、「限界はない」っていう内容の曲をやるのも面白いんじゃないかって宇多丸さんがおっしゃって。Mummy-Dさんは、その時に私が持ってったデモ曲を聴いて、「どれでもいけるよ」って言ってくれたんですが、結局はこの「Sky is the Limit」に決まりました。そこからトラックのアレンジにもDJ JINさんに入ってもらって、そのトラックができたところで、Mummy-Dさんが自分の部分のトラックを治したいということで、スローなところを入れてくださったんです。
――かなりガッツリ一緒に制作したんですね。
lecca:はい。だからかなりRHYMESTER風味の強いコラボ曲になりました。コラボでやる場合って、どっちかが遠慮してしまうことがあるんです。どっちも曲を作る場合は、お客さんのような感じで招かれたところに入るってこともある。でも今回は、構成のところから入ってほしいっていうことをお伝えしたら、希望以上にそれを返してくれましたし、ミュージックビデオにも参加してくれました。私としては大満足。
――ガッツリ一緒に作りたいと思ったのはなぜですか?
lecca:自分ひとりでやるよりも、誰かと作ったほうが新しいものが生まれると思ったんです。セッションって、そういう楽しみもある。例えば会社員の人がするディスカッションとか試合とかでも、グループでやったほうが自分の能力以上のものを出せたりするじゃないですか。自分にもこんな役割があるかもしれないっていうのを見つけたりとか。自分の良いところ、悪いところを改めて見られる良い機会でもある。RHYMESTERはそれぞれが音作りも出来るし、歌詞も全員が書ける。私が作ったものに入ってくださるのはありがたいんですが、プラスRHYMESTERの思う希望とか音作りを入れてほしいなって思ったんです。
――まさしくこの歌の通りに自分の限界を越える作業だったわけですね。
lecca:そうですね。限界を超えることを忘れちゃダメだよって、大人として唄いたかったので。自分も含めて、30代、40代の人を説得できるのはRHYMESTERぐらいだろうなぁと思った(笑)。10代、20代の子に言うのではなく、上も下も一回全部見尽くしたような気持ちになっている大人に向けてメッセージしたかったんです。自分で自分の限界を超えていくとか、自分で一番できていると思えているその自分の姿をさらに越えて行くといういうことって、改めて自分を信じるっていうことにつながって行くと思うから。
――確かに。大人になると勝手に自分の限界を決めつけますからね。
lecca:それって、自分の意識改革、意識の問題だと思うんです。自分がどこを目指すのか、どこまでやりたいのか、どこまで行きたいのかっていうのを自分で洗い出すって大事。たとえばそれが中学生、高校生なら、そういうのは大人が見せてくれることかもしれないけど、大人になってくると誰にも言われないし、口出しもされない。そうなると自分の目標設定ってその人にしかわからないですから。それをもう一度洗い出してほしいということで、この曲をアルバムのメインに持って来たんです。
――二曲目でいきなりガツンとやられますよね。ここからすごくアルバムが濃くなります。「ヤマトナデシコ」もインパクトありました。
lecca:ははは(笑)。私、アルバムに必ず、一曲は完全に女性向けの曲を入れちゃうんです。例えば「働く♀の子」「TVスター」「疾走マザー」「ミソ-gal」。女の人が聴いたら、「こういうことを一緒に言ってほしかったのよ!」っていうような。今回は「ヤマトナデシコ」がそれかなぁ。「疾走マザー」が母親の曲で、「ミソ-gal」が三十路になった女の子の曲、「働く♀の子」が働いている女の人の曲だとしたら、「ヤマトナデシコ」は主婦の曲っていうんですかね(笑)。そう言われるとブルーな気持ちになるかもしれないんですけど。
――どうしてこういう曲ができたんですか?
lecca:私の姉って専業主婦なんですね。自分は専業主婦の気持ちは完全にはわからないんですが、ただ、専業主婦に通じるすべての女性の気持ちってちょっと似ているなって思ったんです。「ヤマトナデシコ」には働いている女性観っていうのも入ってる。どんなに社会的に差別がなくなって男女平等って言われても、家の仕事って女性がやっていることのほうが多いと思う。ネットのお悩み相談の掲示板を見ても、ダンナへの愚痴、両親への愚痴とかいろいろありますが、すごく多いのは、男性と暮らしている女性の愚痴。男性って外で働いているぶん、家では何もしない人も多いんですかね。専業主婦がいる家庭の育ち方をしている人は、たとえ自分が結婚して共働きになっても、家事を手伝わない人が多いと思うんです。もちろん手伝う人もいるんでしょうけど、比較的女性のほうが家事に対しての責任感が強くて、男性のぶんもやってあげたり、家のことをやらなきゃ!って思う人が多いと思うんです。そんな女性を鼓舞するような曲があってもいいんじゃないかと。「私たち頑張ろうね!」って思えるような曲を作りたかったんです。
――決して男性を批判するわけではなく。
lecca:はい。昔から日本人に限らず、女性ってそういう生き方をしてきたのかなって。そういう女性に対して「偉いぞ!」って言いたくて。
◆インタビュー続きへ
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