ローランド、Vアコーディオンの最高峰「FR-8X」「FR-8Xb」ついに登場、蛇腹の表現力がアップし多数の新音色&カラー液晶やルーパー機能も搭載
▲左からピアノ・タイプ鍵盤のFR-8X BK、FR-8X RD、ボタン・タイプ鍵盤のFR-8Xb BK、FR-8Xb RD。
4月にドイツ・フランクフルトで開催された「Musikmesse 2013」で発表され話題を集めていた、ローランドの「Vアコーディオン(V-Accordion)」の新モデル「FR-8X」「FR-8Xb」がついに国内発売となった。今回のローランドチャンネルでは注目のVアコーディオン新モデルを紹介する。
◆Vアコーディオン「FR-8X」「FR-8Xb」~拡大画像~
■そもそもVアコーディオンって何?
ローランドの電子楽器には「V」と付けられた機種がいくつかある。バンドマンにはおなじみの「V-Drums(Vドラム)」や「V-Guitar(Vギター)」や、グランドピアノタイプのデジタル・ピアノ「V-Piano Grand(Vピアノ・グランド)」は知っている人も多いだろう。これらを比較すると、Vアコーディオンは知名度の点では一歩ゆずるが、ヨーロッパを中心に非常に人気がある。その人気は「インターナショナル・Vアコーディオン・コンテスト」という世界大会も毎年開催されるほど(もちろん日本からのプレイヤーも毎年エントリーしている)。そして、Vアコーディオンは、アコーディオンの本場、イタリアで開発されたという点でもほかのローランドの電子楽器とはちょっと違うのだ。
そもそも、Vアコーディオンは、普通のアコーディオン(アコースティック・アコーディオン)とどう違うのだろうか? そこには電子楽器ならではのさまざまなメリットが存在する。
▲FR-8X
・1台でさまざまなアコーディオン音色が演奏できる
・オーケストラ楽器の多彩な音色も自由に演奏できる
・ヘッドホンを使えば夜演奏でもOK、場所と時間を選ばない
・ステージパフォーマンスの自由度が高い
・カスタマイズで自分好みのサウンドに
アコーディオンはもちろん多彩な音色が演奏できるのは電子楽器最大のメリット。さまざまな音楽ジャンルをカバーできる。また、アコースティック・アコーディオンは思いのほか音が大きいのだが、Vアコーディオンなら周りを心配せず、ヘッドホンなどでいつでも気軽に練習ができる。また、MIDI端子やUSB端子でシンセやリズムマシン、パソコンとの連携も可能だ。
最近はライブステージでアコーディオンを使用するアーティストも多いが、ライブこそアコースティック・アコーディオンよりもVアコーディオンのメリットが享受できるシーンといえる。ライン出力を利用すればマイクのセッティング(これが意外と面倒)が不要なのはもちろん、ワイヤレスで音を飛ばせば(要オプション)、演奏中に動きまわることも可能だ。こんなふうにアコーディオンをより身近にしてくれるのが、Vアコーディオンなのだ。
■ピアノ&ボタン・タイプをラインナップする新フラッグシップモデル
そんなVアコーディオンの最新モデル「FR-8X」「FR-8Xb」は、新たなフラッグシップに位置づけられるモデル。世界のトップ・アコーディオニストたちとの共同開発により、革新的なデジタル・アコーディオンに生まれ変わっている。ラインナップは鍵盤がピアノ・タイプの「FR-8X」とボタン・タイプの「FR-8Xb」の2機種。それぞれブラックとレッドのカラーを用意する。
ピアノ・タイプは一般的な鍵盤を搭載したモデルなので説明は不要だと思うが、ボタン・タイプは見慣れない人が多いはず。このボタン・タイプ鍵盤、実は非常に理にかなったキー配置になっており、少ない指の動きで広い音域をスピーディに演奏できるというメリットがある。たとえば今弾いている音程から次の音程に移動するには、1度の上下は右上・左下へ、2度の上下なら左上・右下、3度の上下なら左右といった具合。実はアコーディオン初心者にこそオススメなのがボタン・タイプなのだ。
▲右手ボタン配列のしくみを示した図。キーはクロマチックに配列されていて、少ない指の動きで広い音域をスピーディに演奏可能。
▲ボタン位置と音程の相互関係を示すルールを示した図。1度、2度、3度上下の音へスムーズにアクセスするための効率的なボタン配列が行われている。
■飛躍的向上をとげた蛇腹の表現力
「FR-8X」「FR-8Xb」の最大の特徴は、蛇腹(じゃばら)の表現力のアップだ。これは新技術「ダイナミック・ベローズ・ビヘイビアー」によりもたらされている。
アコースティック・アコーディオンは、蛇腹を動かして空気を送り込んでリードを振動させて音を出す。選ぶリードや一度に弾く音の数によって空気の流れが変化し、蛇腹の抵抗感(重さ)も変わってくる。この蛇腹の抵抗感の変化の再現が、従来のVアコーディオンで課題となっていた部分だ。「FR-8X」「FR-8Xb」ではその再現に成功。リアルで自然な空気感を持つベロージング(蛇腹のコントロール)を可能にした。結果、プロのアコーディオン奏者も納得の表現力がついに実現。思いどおりのダイナミックな演奏ができる、まさにフラッグシップにふさわしい表現力を備えたモデルの登場となった。
■オーケストラからバンドまでカバーする多彩なサウンドと演奏表現
▲FR-8Xb
搭載される音色の強化も注目だ。世界のアコーディオン・サウンドをはじめ、ストリングスや木管・金管楽器、さらにエレキギターや民族楽器、シンセサイザーなど180種類におよぶオーケストラ音色を搭載。好評のドラム&パーカッション音色も18種類と大幅に強化されている。
多彩な演奏方法が楽しめるのも本機の特徴。右手鍵盤は最大4音色まで同時演奏が可能。スプリット(鍵域を分ける)で違う音色を演奏したり、レイヤーでパートを重ねることも可能。また、新たにパーカッション音色の右手鍵盤へのアサインが可能になっている(これは要望の多かった機能だそうだ)。
アコーディオンにおいて左手はベースやコードを鳴らす役割を担う(専用のボタンが用意される)。「FR-8X」「FR-8Xb」では、左手でベース音色、コード音色、そして自由にメロディを奏でることもできるフリー・ベース・モードと、複数のモードでオーケストラ音色が演奏可能。しかも音の切り替えもボタンひとつでOKだ。多彩な音色が活用できるので、ソロ演奏でもアンサンブル感が楽しめる。
■カラー液晶&あごで音色切り換えができるチン・スイッチで操作性アップ
▲カラー液晶搭載で視認性アップ。写真右下にあるのがチン・スイッチ。
▲ボタンは機構と素材を改善。パール感のある質感に注目。
▲DSPによるマルチ・エフェクトを4基搭載。
もう1つ見逃せないのが、新搭載のチン(あご)・スイッチ。これは名前のとおり、あごで押せるスイッチで、音色の切り換えがハンズフリーで行える。この便利さは使ってみれば、なるほど!とうならされるはず。
このほか、ボタン・タイプの「FR-8Xb」では、ボタンの機構を一新、より自然なタッチ感やノイズを実現。レスポンスも早く、リアルな演奏表現が可能になっている。また、ボタンの素材も高級感のある外観、手触りにリニューアルされた。洗練されたパール感のある質感はその目と指で確認してほしい。
■マルチ・エフェクト&ルーパーで自分だけのパフォーマンスを
サウンドの表現力をさらにアップしてくれるのがマルチ・エフェクト(MFX)の存在。右手パートのアコーディオン音色用に1基、オーケストラ音色用に3基(右手パートに2基、左手パートに1基)の計4基を搭載する。それぞれに84種類のエフェクトを用意。これとは別にリバーブ(8種類)、コーラス(8種類)、ディレイ(10種類)も搭載。自分ならでは音づくりをしたいという向きにはチャレンジしがいのあるうれしい仕様だ。
また、ローランド/ボスのバンド系楽器ではすでにおなじみとなったルーパー機能が、Vアコーディオンで初めて搭載されたのも大きなトピック。自分の演奏を録音、すぐにループ再生が可能。オーバーダビングもできるので、どんどん音を重ねていけば、1人で演奏しているとは思えない、重厚なアンサンブルも表現できるのだ。
さらにルーパーとは別に、USBメモリー(別売り)に演奏を録音することも可能。オーディオファイル(WAVE:44.1kHz、16 ビット・リニア)、またはMIDIファイルで保存できるので、パソコンに取り込んでの活用もOK。遠方の知人・友人に練習成果を聞かせることも手間なくできる。加えて、USBメモリーに収録したオーディオファイルの再生もできるので、自分の好きな曲をバックに練習やステージングをおこなう、なんてことも朝飯前。ワンマン・パフォーマンスが可能なアコーディオンの可能性をより広げてくれると思わせられる部分だ。
このほかにも使いやすさを感じさせる部分は多い。たとえば、専用バッテリーは本体にACアダプターをつなぐだけで充電が可能。バッグが付属するのも持ち運びに便利だ。さらにアンプ/スピーカーも内蔵しているので、家庭内での練習はもちろんPAなしでの演奏披露にも対応できる。アンプ/スピーカーは定格出力25W+25W、10cm×2+ツィーター×2構成のパワフルなものなので、ストリートパフォーマンスもこなせそうだ。まさに演奏をすべて1台でかなえるオールインワン・モデル。「アコーディオンには触ったことがない」という人も、ぜひ一度楽器店店頭でチェックしてほしい。
◆FR-8X / FR-8Xb
価格:オープン(予想実売価格 60万円前後)
◆FR-8X 製品詳細ページ
◆FR-8Xb 製品詳細ページ
◆Vアコーディオン
◆インターナショナル・Vアコーディオン・コンテスト
◆ローランド
◆ローランド チャンネル
◆BARKS 楽器チャンネル
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