【ライヴレポート】森広隆、<JAM ADDICT~TONKOTSU BROTHERS~>で伊藤祥平と競演
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まずは森広隆がガット・ギター1本で最新アルバムのタイトル曲「いいんです」を軽やかに歌い、次にパーカッションのnotch(ノッチ)とピアノの河内肇によるトリオで懐かしい2002年リリースの「ゼロ地点」を思いきりファンキーに演奏し、美しくパワフルなハイトーンをたっぷり聴かせて伊藤祥平へとバトンタッチ。先輩ミュージシャンとの共演ということでやや緊張しているように見えた伊藤だが、演奏が始まると表情は一変。アコースティック・ギターのボディを叩きながら弾く独特の演奏で、力強いリズムの「Music on my mind」とスローバラード「Lonely」を堂々と披露し、森がステージに戻ってきたところから本日のメインイベント、ふたりのセッション・タイムの始まりだ。
「ギター、ほんとにうまいよね」
「そんなことないです!」
「初めて見た時びっくりしたよ。でも、若い芽はつぶしておかないと(笑)」
「いつもは優しいのに…森さんのそういう面、初めて見ました(笑)」
軽口を叩きながら徐々にリラックスした二人は、伊藤の曲「夢に描いた放物線」で森がソロを弾いたり、伊藤がリクエストして選んだ森の曲「蜃気楼の街」で“普段は弾かない”というガット・ギターに挑戦したり、セッションならではの楽しさを存分に満喫。伊藤がギターに目覚めたきっかけというエリック・クラプトン「Change The World」のカヴァーは中間部をブルースにアレンジし、伊藤がボトルネックでスライド・ギターのソロを華麗に決め、「ライヴで初めてスライドを弾きました!」とうれしそうに一言。逆に伊藤の曲「Keep on going」では、ミッドテンポのファンキーなリズムに乗って森がエレクトリック・ギターでリードを取り、伊藤のアコースティック・ギターと絡み合うところはまさに音による会話そのままだ。森の原点であるファンクと伊藤のルーツであるブルースとが溶け合う心地よいコラボレーションに、1曲終わるごとに観客からあたたかい拍手が贈られる。
ちなみにサブタイトルの「TONKOTSU BROTHERS」は、伊藤が“とんこつラーメン発祥の地”と言われる久留米市出身、森も鹿児島県出身でラーメンといえばとんこつ、というところから命名されたもの。最近二人でラーメンを食べに行ったが、森がひと玉食べ終わる前に伊藤はすでに替え玉2つ目に入っていたという、若さあふれる(?)エピソードに会場が沸く。
その後もパーカッションやピアノを加えながら楽しいセッションは続き、明るく弾む16ビートを持つ森の曲「My☆Girl」で本編は終了。もちろんアンコールの声は鳴りやまず、再登場した二人は伊藤の曲「ヒビキワタレ」と森の曲「Funk Redemption」の2曲を披露。後者では観客との掛け合いコーラスもあり、会場全体がゆったりと体を揺らしながら手を叩き歌うシーンを見ているステージ上の二人も、心の底からうれしそうだ。
終わってみれば全16曲、約2時間近くのセットリストだが“え、もう終わり?”と思うほど早く感じたのは、二人のミュージシャンが生み出す空気がとても親密で心地よかったからに違いない。よくある“対バン”“ツーマン”とはひと味もふた味も違う「JAM ADDICT」には、音の会話を楽しむというライヴ本来の喜びが詰まっている。それをしっかりと感じ取れた素晴らしいひと時だった。
次回開催の「JAM ADDICT~CONDENCED GRROVE~」は12月5日に東京キネマ倶楽部にて。ゲストはまだシークレットだが、きっと素晴らしいセッションになるだろう。森広隆の持つ豊かな音楽性と人間的魅力が導く「JAM ADDICT」の素晴らしさを、一人でも多くの人にぜひ体感してほしい。
取材・文●宮本英夫
PHOTO●大花真史
Album『いいんです』
MORI-0001 ¥3,000(tax in)
1.愛のBeat
2.I Got My Passport
3.ひとりじゃないさ
4.君への言葉
5.おいしいパン
6.Burnin' Heart
7.Tail
8.Lovely Days
9.キラキラ
10.いいんです
<JAM ADDICT ~CONDENSED GROOVE~>
12月5日(木) 東京キネマ倶楽部
森 広隆、シークレットゲスト
チケット発売 2013年10月27日(日)
[問]ディスクガレージ 050-5533-0888(平日12:00~19:00)
◆森広隆 オフィシャルサイト
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