【ライブレポート】黒夢、“約束の地”での3時間に及ぶ感動のステージ。 そして2人はネクスト・ステージ、日本武道館へ
9月28日、岡山にて黒夢のライヴが開催された。去る9月6日には東京のZepp Diver City、同14日には大阪のZepp Nambaにて<DIVE INTO THE KINGDOM>と銘打たれた公演を行なっている彼らだが、この岡山公演に関しては<EVERLASTING TRUTHS>という別個のタイトルが掲げられていた。
◆黒夢 <EVERLASTING TRUTHS> 画像
熱心なファンには改めて説明の必要もないはずだが、2009年9月29日、『FOOL'S MATE』誌の元編集長だった東條雅人 氏が急逝している。東條 氏と長きにわたり懇意にしてきた清春は、その翌年から毎年この時期に、氏の郷里にあたる岡山でのライヴを重ねてきた。2010年と2011年にはsadsとして、2012年にはソロ名義で。そして今年、ついに黒夢として初めて<EVERLASTING TRUTHS>というタイトルのもとでステージに立つ機会が訪れたというわけである。
例年通り、会場となったのは岡山市のライヴハウス、CRAZY MAMA KINGDOM。期せずして“KINGDOM”という単語が不思議なリンクを見せることになった。ちなみに清春はごく最近のインタビューで、もはや誰にも侵し得ない次元にある人時との関係性について“王国”という言葉を用いながら語っており、ライヴ会場で限定販売されてきたシングルの表題曲、「KINGDOM」の歌詞やビデオ・クリップにも、彼らふたりの歴史が投影されているようなところがある。
プラチナ・チケットを手に入れた強運なファンに埋め尽くされた場内が暗転したのは、開演予定時刻を30分ほど過ぎた午後6時半のこと。sadsのメンバーでもあるK-A-Z(g)とGO(ds)、さらには大橋英之(g)といったサポート・ミュージシャンたちが配置につくと、歓声に包まれながら人時と清春が登場。この夏の酷暑を思わせるような熱気のなかで、最初に炸裂したのは「FAKE STAR」だった。「やらなきゃいけない曲がたくさんあるから」という清春の言葉通り、新旧の楽曲を織り交ぜた演奏プログラムは、結果的には3時間にも及ぶものとなった。セットリスト自体については先頃の東京、大阪での公演と大差ない内容ではあったが、アンコール時、関係者用の曲目表にすらタイトルが記されていなかった「BAD SPEED PLAY」が披露された事実は伝えておきたい。
しかしそうした具体的な演奏内容以上に重要なのは、清春と人時がこのライヴに注ぎ込んだ感情の色濃さだろう。このライヴに込められているのは、基本的には東條 氏に対する哀悼の念ということになるはずだ。が、それだけではないのだ。“永久の真実たち”のなかには、愛情や敬意、信頼ばかりではなく、氏の他界をめぐって清春が感じていた悔しさや憤りすらも含まれている。清春はおそらく、そうした感情すらもずっと忘れずにおこうと考えているのだろう。だから筆者には、ステージ上からの「東條さん、聴こえてる?」という彼の呼びかけに、どこか切実な響きを感じずにはいられなかった。
とはいえ、誰よりも黒夢の復活を願っていた人物のひとりである東條 氏のもとに、この日の彼らが発したメッセージは確実に届いたに違いない。綺麗事を書くつもりはないが、鬼気迫るライヴ・パフォーマンスと場内に渦巻く熱気の特別な感触に、僕自身もそう感じずにいられなかった。
敢えてストレートな言い方をするならば、まさに感動的な空気に包まれながら、黒夢の岡山公演は終演に至った。同時に、残念ながら彼らの年内のライヴはこれをもってすべて終了。清春と人時が、次に一緒にステージに立つのは、2014年1月29日、日本武道館ということになる。レコーディングも佳境を迎えているはずのニュー・アルバム、『黒と影』にまつわる詳報とともに、新たな情報をお届けできる日を楽しみにしていたい。
文/撮影 増田勇一
◆VARKS
◆黒夢オフィシャルサイト
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