【インタビュー】シェーン・ガラス、最新アルバム『Ascend』とB'zを語る「積み重なって、みんなのギアががっしり噛み合ってきた」
■松本さんも稲葉さんも、やりたいことがしっかりあってそれを地図の様に示されている感じ
■インストゥルメンタルで、ジャズよりな感じのドラム作品も作りたいと思っています
──『Ascend』ではB'zの「Brotherhood」を英詞でカバーしていますね。
シェーン・ガラス:前から「Brotherhood」はすごく良い曲だなって思っていて、今回、自分のアレンジメントでやってみたいって思ったんです。この英詞は2011年の大震災という悲劇を受けて書いた内容でもあるので、そういう意味でも「Brotherhood」は自分の思いがすごくいろいろ詰まっています。
──でも「Brotherhood」ってカラオケで歌うと大事故。難しすぎて歌えない(笑)。
シェーン・ガラス:確かに難しかった。英語に合うようにメロディを若干変えたりとかはありますけど、一般的に日本の音楽のメロディって結構複雑な動きが多くて。西洋のメロディっていうのはシンプルなものが多くて、意外にペンタトニックスケールのブルース系な流れだったりするけれど、日本の音楽は割とクラシックのように上下の動きが激しいメロディが多いので、そこは違うかな。
──日本のシーンやB'zの音楽がシェーンに影響を与えると同じように、シェーンがB'zに与えている影響もずいぶんとあるのではないでしょうか。
シェーン・ガラス:どんな影響を与えたのかなんて、そこは自分ではわからない(笑)。B'zの成功と僕は全然関係ないからね。でも一緒にやっていると影響し合うことはお互いあるかもしれない。
──「SPLASH!」の英語バージョンは、シェーンが「この曲英語でやったらかっこいいよ」ってメンバーに薦めて歌詞を書いたんですよね?
シェーン・ガラス:そうですね、ドラムクリニックとかでも「SPLASH!」はよく叩くかな。ファンクなところがすごく気に入っています。
──2年前の夏に行われた、ロサンゼルスのClub Nokiaでのライブでは「SPLASH!」が超絶にかっこよかった。
シェーン・ガラス:アリガト(笑)。
──B'zとの付き合いも随分長くなりましたが、B'zサウンドはどのように作られるんですか?
シェーン・ガラス:松本さんも稲葉さんも、やりたいことがしっかりあってそれを地図の様に示されている感じ。いろんなリクエストや指示を受けるのではなく、そこに自分なりのフレーバーを加えていくというやり方ですね。ツアーにしてもレコーディングにしても、いつもそうやって進めてきました。B'zが今のようなバンドサウンドになっているのは、長年にわたって些細なことも一緒にやってきたこと……ツアー、旅をしたり、ご飯を一緒に食べたり、話し合ったり、ということが積み重なって、みんなのギアががっしり噛み合ってきたんじゃないかなと思う。
──まさにバンドですね。
シェーン・ガラス:例えば「ここのブリッジでなにか違うことを」というとき、「こうして欲しい」というリクエストじゃなくて「なんかやってみて」というリクエストがきて、「これはどう?」「う~ん、ちょっと違うな」「じゃあこれはどう?」「あ、それがいいね」というやりとりを重ねていく中から、お互いの信頼が生まれてきたわけです。それはすごくベーシックな音楽の作り方だし、こちらが投げてあちらが返してという意見交換をしながら、ものを作って固めていくというのは、すごく正しい音楽の作り方だと思うし、それができているバンドだと思います。
──そうやってできたサウンドが、ライブでも完璧に再現されるスキルの高さもB'zの凄いところですが。B'zサウンドのドラムはシェーンじゃないともうダメでしょ。
シェーン・ガラス:おぉ、アリガト(笑)。すごく嬉しい。
──B'zでの活動もソロアルバムも、今後も期待していいですか?
シェーン・ガラス:もちろんです! 雇ってくれる限りはどこまでも、もちろんやります(笑)!
──今度は、ドラマーのエゴを前面に出したドラムオリエンテッドなソロ作品も聴いてみたいです(笑)。
シェーン・ガラス:まだできてはいないけれど、もう1枚アルバムを出したくて、そっちはもうちょっとインストゥルメンタルで、ジャズよりな感じのドラムがいっぱい入っている作品を作りたいと思っています。楽しみにしていてください。
──B'zのスタジアムツアーもあるし、作品の制作もあるし、これからも楽しみですね。
シェーン・ガラス:B'zのライブを観に来てくれる方々に会えるのは楽しみだし、今回僕たちがプレイする曲は25周年が詰まったセットリストなので、いろんな時代からの曲があったりして、それを聴いたときのファンのみなさんのリアクションもすごく楽しみにしてます。自分も楽しみにしているので、待ち遠しいです。
──シェーンの場所から会場のお客さんってよく見えますか?
シェーン・ガラス:見えます。たまに照明がまぶしいときもあるけど(笑)。音楽を作って、こうして発表できる、聴いてもらえることにすごく感謝してるし、そのありがとうをみなさんにも伝えたい。
──そして同時に、世のドラマーを目指している人たちにも刺激を与えていることと思います。
シェーン・ガラス:これをやりたい!っていう衝動みたいなものがあるんだったら、怖がらないで、それを是非やってみてほしいな。
──シェーンは実際それを実行してきて今があるんですね。
シェーン・ガラス:そうやってきたし、今もそうしているし、だから自分はここにいると思っています。いろいろな問題が降りかかってくる時もあるけれど、それを押しのけて進んでいくことが大切ですね。
──そういうパワーやメッセージは、楽曲やライブから我々オーディエンスは受け取っていますよ。
シェーン・ガラス:毎日しっかり練習して、積み重ねて、自分の行きたい方向に向かっていくこと。それは奇跡でもなんでもなくって、やり続けていくっていうことが秘訣なんじゃないかな。あきらめずに自分の信じたものに進んでいくこと、使い古された言葉だけど、自分を信じるっていうことがすごく大事だと思います。
取材・文◎BARKS編集長 烏丸哲也
■Shane Gaalaas / シェーン・ガラス
アルバム『Ascend』
2013.6.12 on sale
ZACG-9001
1,500 円 (税込)
1. Ascend
2. Wish You Well
3. Brotherhood
4. Rat Stew
5. Million Miles
6. Wonderful Midori
7. Alive
◆Shane Gaalaas「Ascend」オフィシャルサイト
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