【BARKS編集部レビュー】さらにライヴ向けに進化した図太い迫力サウンドが魅力のギター・アンプ、ローランド「CUBE-80GX」
ローランドのギター・アンプ、CUBEシリーズは、コンパクトなサイズなのに驚くほどパワフルなサウンドが出せることで、発売以来高い人気を保っている。そのCUBEシリーズがラインナップを一新、CUBE-GXシリーズとして新たに4製品が投入された。新たに登場したのは、20Wの「CUBE-20GX」、40Wの「CUBE-40GX」、80Wの「CUBE-80GX」、それに乾電池駆動も可能な小型の「MICRO CUBE GX」だ。いずれも、リアルなサウンドに定評あるCOSM(アンプの物理的特性をモデリングするローランド独自の技術)によるアンプ・モデルや各種エフェクトを内蔵し、堅牢な造りやパワフルなサウンドといった、従来のCUBEシリーズの特徴をそのまま引き継いだうえ、COSMアンプやエフェクトをチューン・アップしている。また機能を絞り込んだことで操作性も向上し、よりライヴ向きのアンプとなった。さらにiPhone/iPadアプリとの連携機能も追加され、ライヴはもちろん、様々な楽しみ方ができる製品となっている。より研ぎ澄まされたCUBE-GXシリーズ、今回はそのフラッグシップ製品である「CUBE-80GX」を使ってみた。
■わずかにスリムに、軽くなった「CUBE-80GX」
▲キャビネットの作りを堅牢なものにする頑強なコーナー・プロテクターが組み込まれている。
■マニュアル/クロマチック両用のチューナーを内蔵
▲内蔵のチューナーは、マニュアル、クロマチックの両方の使い方が可能。半音下げチューニング、7弦ギター用の下のBまで用意。
■必要なサウンドに瞬時にアクセスできる3チャンネル構成
旧モデルと大きく異なるのがチャンネル構成だ。以前はJC CLEANとLEADの2チャンネルだったが、CUBE-80GXではSOLOチャンネルが追加されていて、3チャンネル構成になっている。
今回新規追加されたこのSOLOチャンネルは、JC CLEANとLEADの両チャンネルで作った音色を記憶するためのチャンネルだ。JC CLEANまたはLEADチャンネルでつまみを動かして音色を作ってからSOLOボタンを長押しすると、その音色がSOLOチャンネルに記憶されるという仕組みだ。これらのチャンネルはSELECTに用意された3つのチャンネルボタンを押すだけで切り替えられる。チャンネル切り替えはGAフット・コントローラー(GA-FC:別売)でも可能だから、ライヴなどでも瞬時に音色を呼び出すことができて便利だ。ちなみにこのGAフット・コントローラーでは、後述するエフェクトのオン/オフの操作も可能。またチャンネル切り替えはフットスイッチ(BOSS FS-5UまたはFS-6)でも操作できる。
■チューン・アップされたCOSMアンプ
▲COSMアンプはJC CLEANとLEADの両チャンネルで利用可能。これぞまさにJC-120というサウンド。
▲LEADチャンネルに用意された著名アンプをモデリングした10種類のCOSMアンプ。GAINでキャラクターがグッと変わる。
たとえばBLACK PANELはFenderのTWIN REVERBをモデリングしたもの。低域が図太いから低音弦のリフに迫力が出るが、それでいてアタックも明瞭に出るし、高音弦の音にも張りがあって明るい。GAINをいっぱいに上げたときの軽い歪みは、ブルース、ジャズ、ロックンロールなど幅広いジャンルで使えそうだ。似たようなキャラクターで、それより低域がグッと出てくるのが、同じくFenderのDeluxe ReverbをモデリングしたDLX COMBO。やはりキャラクターが近いサウンドで、より中域がふくよかに出てくるのがFENDERのTWEED BASSMAN 4×10" ComboをモデリングしたTWEEDだ。ややクセのある中域が前に出て、歪ませたときには“粘り”も感じられるサウンドだ。さらにもう少し歪みが増してパワフルになるのがBRIT COMBO。これはVOXのAC-30TBをモデリングしたもので、カラッとした明るい歪みだがあたたかみがあって力強い。GAINの設定で歪みを抑えると歯切れがよく、60年代のリバプール・サウンドっぽくなるし、強めに歪ませると中域から低域がグッと出てきてパワフルになる。さらにファズでブーストすればクイーンのブライアン・メイのような音も出せそうだ。
■強烈に歪む4タイプのアンプ、特徴あるオリジナル・アンプも
▲もっと強い歪みが欲しいなら、CLASSIC、METAL、R-FIER。さらに過激に歪むEXTREMEを選ぶ。
EQUALIZERのTREBLEを最大にすると、高域の歪みがノイジーになるところも面白い。もちろん80年代以降のハードロックに対応するアンプもある。METAL STACKはPEAVEYのEVH5150、つまりヴァン・ヘイレンモデルのモデリングで、歪みはそれほど激しくないが、粗っぽいがレンジの広い、まさにあの音だ。またR-FIERはMESA/BoogieのRectifier、いわゆる“レクチ”のモデリングで、これはかなり激しく歪むし、低域の迫力もある。さらにオリジナル・アンプとして、過激に歪むEXTREMEもある。歪みはつぶれたように激しいが、音の輪郭が明瞭なのが特徴だろう。
このほかにもオリジナル・アンプとして、ACOUSTIC SIMとDYNA AMPが用意される。ACOUSTIC SIMは、アコースティック・シミュレーターで、エレキギターでアコースティック・ギターの音を出せるというものだ。シングルコイル・ピックアップのフロント・ポジションで使うと、あたたかみがあり、高音弦のシャリシャリとしたアタックのあるアコギらしいサウンドが出せる。またDYNA AMPはピッキングの強弱に応じて音色が大きく変化するアンプ。基本的にはあまり歪んだサウンドではないのだが、強く弾くとナチュラルなオーバードライブのかかったパワフルなサウンドになり、サスティンも伸びるようになる。
これらのすべてのアンプ・タイプに共通しているのが、とにかくパワフルで迫力があるということだ。もっと大きなスピーカーのスタック・アンプのような音量、音圧があるし、クリーンでも歪み系でも抜けがよくて明るいから、弾いていて楽しくなる。
■エフェクトはシンプルに使いやすく進化
▲内蔵のエフェクトは、EFX、DELAY、REVERBの3つ。つまみの位置によってそれぞれのエフェクトを選ぶようになっている。
これらのうち、コーラスとトレモロはJC-120でもかかり具合の美しさに定評あるエフェクトであるだけに、とくにJC CLEANチャンネルのようなクリーン・サウンドととても相性がいい。JC CLEANは前述したようにそのままでも十分使えるクリーン・サウンドなのだが、ちょっとコーラスをかけるだけで音が太くなり、広がりが出てくるから、つねにオンにしておきたくなってしまう。またフェイザーやフランジャーはもちろん歪み系のサウンドでも効果的。過激なかけ方はできないが、音を分厚くしたり、ちょっとした変化を持たせたいときには重宝しそうだ。
ディレイは、DELAYつまみでディレイ音の音量を調整するタイプを搭載。ディレイタイムは、つまみのそばにあるTAPボタンを2回押した間隔で設定できる(最長2000ms)。ディレイは2タイプ用意されていて、つまみの左側12時までの半分がアナログ・ディレイ風のWARM、右半分が音色変化の少ないCLEARとなっている。CLEARのほうは確かに音色変化が少なく、ディレイ成分にはアタックのジャキッとした高域も含まれていて固い感じがするのに対し、WARMは高域が少し減衰していて、よりあたたかみのあるディレイ音だ。リバーブもREVERBつまみで深さを設定するタイプだ。つまみの左半分がSPRING、右半分がPLATEになっていて、ギター・アンプには欠かせないスプリングとプレートのリアルな残響音をつけることができる。
■iPhone/iPadを接続してセッションできるi-CUBE LINKも搭載
新しいCUBE-GXシリーズには、小型アンプの「CUBE Lite」に搭載されて話題を呼んだ、i-CUBE LINKも搭載された。コントロール・パネルにはi-CUBE LINK端子があって、付属する4極ミニプラグのケーブルでiPhone/iPadと接続することができる。専用アプリ「CUBE JAM」を使えば、iPhone/iPadのライブラリの楽曲でセッションしたプレイを録音することができる。自宅練習にも最適な機能なのだ。
▲CUBE JAMはインポートした楽曲にあわせて演奏した自分のギターを録音可能。センターに定位するヴォーカルやギターソロを消せるセンターキャンセル機能も面白い。
■ライヴにもレコーディングにも便利な機能を数多く搭載
このほかにも、CUBE-80GXには便利な機能が数多く搭載されている。たとえば背面にはレコーディング用にRECODING OUT/PHONES端子とLINE OUT端子があり、レコーダーなどを直接つないで録音することができる。どちらもCOSMによるスピーカー・モデリングが搭載されているので、一般的なライン出力のように音ヤセする心配がないのもうれしいところだ。またRECORDING OUT/PHONES端子はヘッドフォン端子としても使えるので、夜間など大きな音が出せないときでも練習ができる。このようにレコーディングや自宅での練習にも便利なCUBE-80GXだが、本領を発揮するのはやはりライヴのときだろう。持ち運びも楽だし、操作性も良好。そしてなんといっても図太く迫力満点のパワフルなサウンド、それでいて幅広い音作りができるCUBE-80GXは、ライヴで使い始めたら手放せなくなりそうなアンプだ。
●CUBE-80GX主な仕様
定格出力:80W
規定入力レベル(1kHz):INPUT=-10dBu、i-CUBE LINK/AUX IN=-10dBu
入力インピーダンス INPUT=1MΩ
スピーカー 30cm(12インチ)×1
接続端子:INPUT端子(標準タイプ)、i-CUBE LINK/AUX IN端子(4極ミニ・タイプ)、RECORDING OUT/PHONES端子(ステレオ標準タイプ)、LINE OUT端子(標準タイプ)、FOOT SW(TIP:JC CLEAN/LEAD、RING:SOLO)端子(TRS標準タイプ)、FOOT SW(GA-FC)端子(TRS標準タイプ)、AC IN端子
電源:AC100V(50/60Hz)
消費電力:75W
付属品 取扱説明書、電源コード、ミニ・ケーブル(4極ミニ・タイプ)、GA-FCシール、保証書、ローランド ユーザー登録カード
外形寸法:幅 (W) 441 mm 奥行き (D) 247 mm 高さ (H) 433 mm
質量:14.2 kg
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