【インタビュー】いきものがかり、アルバム『I』を語り尽くす<前編> 「聴き手の方々にも“自分の曲”として聴いていただきたい」

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■なんだかこの“I”の一文字が全部をマルにする感じもあるなあと──吉岡
■やっぱり聴いてくださる方々には“笑顔”になっていただきたい──水野

──なるほど。楽曲についてはのちほど訊くとして、まずこの象徴的なアルバム・タイトルについて確認させてください。この『I』というシンプルな表題が意味するのは何なんでしょうか? “WE”ではなく“I”。そしてこれは、いきものがかりの頭文字でもある。

水野:まさにその頭文字“I”というところからのアイデアだったんです。僕らはいつも曲をある程度作ったうえで、レコーディングが進んでいくなかでタイトルを考えることが多いんですね。今回もそうだったんですけど。で、いつも言ってることなんですけど、この曲たちを僕らの曲だと受け取ってもらうことも大事なんですけど、それだけじゃなくて、聴き手の方々にも“自分の曲”として聴いていただきたいというのがあって。そういう気持ちが一貫してずっとあるんです。加えて、自分たちのなかだけに曲を閉じ込めないで広げたいという気持ちがある。そういう姿勢を表せるタイトルがいいんじゃないかという話になったとき、“共有する”とか、“開く”とか、そういった意味合いのキーワードがいくつか出てきたんですけど、そうなってくるとあまりにも押しつけがましい感じになってしまうじゃないですか。そんななか、このアイデアが出てきたんです。まず一人称の“私”という意味がある。これは、僕ら作り手側としての“僕らの曲です”という意味での“Iでもあるし、聴いてくださる方にとっての“自分にとってこの曲は”という意味での“I”でもある。つまり、聴き手側からも同じスタートラインに立てる言葉だなと思うんです。たとえば以前、『My song Your song』というアルバムを出したことがありましたけど、あのときも実は同じようなことを考えてたんです。ただ、そこで“YOU”と言ってしまった途端に“僕ら側と向こう側”というふうに分かれてしまうところがある。そこをもうひとつ踏み越えたところで、誰でも主人公になれるというか、誰でも中心になれるというニュアンスのタイトルにしたかったんです。意味合いとしても、すごくいいんじゃないかと思ったし。

──“共有”という言い方をすると、誰もがそれについて同じ解釈をして、同じ意味や価値を見出しながら分け合うみたいな印象が伴いがちですけど、そうじゃなくて、各々が自分のものとして持つことができる。そういう意味合いでもあるわけですね?

水野:そうですね。

山下:捉え方がいろいろできるタイトルだなと思ったんですよね。“アイ”という響きを漢字に置き換えたら、またいろいろと違う意味合いになったりとか。実際、今回めちゃめちゃタイトルに関しては悩んだんですけど、これが出てきたときにスッと全員が納得できたという感じで。

吉岡:“1人ひとりの人間がいて、そこに届ける”という意味でも自分にはしっくりきてるし。みんな個性があるし、捉え方も人それぞれだし、聴いてくれる1人ひとりがどんな感じ方をしていたとしてもいいと思うんです。そう考えてみると、なんだかこの“I”の一文字が全部をマルにする感じもあるなあと思って。そういう意味でもいいタイトルだと思ったし、さっき指摘されたようにグループ名にも重なるところがあるし、いろんなことが含まれている感じで。すごく納得のいくタイトルだな、と。

──アイデンティティの“I”でもある気がしますし、これからどんどん意味が増えていくことになるのかもしれませんね。そして、肝心のアルバム自体について。全14曲たっぷりと収録されていますけど、冒頭から「笑顔」、「123~恋がはじまる~」というシングル曲連発。ふと思い出してみると『NEWTRAL』も冒頭にシングル曲が固められていたわけですけど、毎回毎回、曲順については悩まされているんじゃないですか?

水野:ええ、結構悩みましたね。「風が吹いている」の置き場所とか、「123~恋がはじまる~」が最初に来たほうがいいんじゃないかとか。しかも「あしたのそら」というシングルのカップリングだった曲を入れるのを決めたのが、マスタリングの前日だったんですよ。入れるか入れないかが曖昧なままその日を迎えちゃったんです。そこでみんなで話し合って、曲を並べてみたときに、ふっと空気が抜けるような曲がその場所に必要だって話になって。その役目を負うには、この曲はすごくいいんじゃないかということになって。

──冒頭の発言にもあったように、確かに曲がさまざまな方向を向いているだけに、並べ方ひとつで物語の印象が変わってきてしまうところがあるわけですよね。

山下:そうですね。最終的にはいいところに落ち着いたと思うんですけど、難しかったのは確かで。なんとなく9曲目の「風乞うて花揺れる」あたりでひとつのストーリーが終わって、それ以降は個性の強い曲が各々独立した感じで並んでるというか。

──たとえばライヴのセットリストを組むようにアルバムの構成を考えることもあるはずですけど、僕が今回感じたのは、いろいろなアーティストの好きな曲を並べて“お気に入り曲集”を作るような感じに近かったんじゃないかということで。

水野:ああ、確かにそれに近いかもしれない。

山下:わかりやすく言うとそういうことだと思うんですよね。曲の個性がみんな強いので、独立感がある。だからこそ、それに近い考え方で選曲していったところがあると思います。

──アルバムの1曲目がずばり「笑顔」ですけど、全体を通して聴いていて耳についたのがこの“笑顔”、もしくはそれに類する言葉でした。水野さんの曲には特にその傾向が顕著ですけど、これは聴き手にもたらしたいと思っているものが自然に歌詞にも出てきてしまうということなんでしょうか?

水野:いやー、本当にそうですね。なんでだろうな(笑)。やっぱり“ポジティヴになりたい”っていう意識が強くあって、それがそういう形で現れてるんだろうと思うんです。同時にあんまり押しつけがましくなりたくないという裏腹な部分もあって、よく悩むんですね。やっぱり聴いてくださる方々には笑顔になっていただきたい。だけども「笑顔になれ!」と言ってもどうにもならないし、自然に笑顔になってしまうような状態を作ることが大事なわけで。その距離感が難しいなっていつも思いながら……。それが歌詞に出ちゃってる感じかなと思うんですよね。

吉岡:確かによく出てきますよね(笑)。でも、シンプルなことを伝えようとし続けてるからこそ、こうなるんだろうなという感覚で。同じ言葉を使うにしても、笑顔になって欲しいという場合もあれば、自然と笑顔になる場合もあるだろうし、もっと具体的な“忘れられない笑顔”みたいな場合もあるだろうし、どれもが同じ笑顔ではないんだろうなと思いながら歌ってるんです。身近なものだからこそ繰り返される言葉でもあるんだと思うし。

取材・文◎増田勇一


6th Album『I』(読み方:アイ)
2013年7月24日(水)発売
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1.「笑顔」 作詞・作曲:水野良樹 編曲:亀田誠治
2.「1 2 3 ~恋がはじまる~」 作詞・作曲:水野良樹 編曲:本間昭光
3.「ぱぱぱ~や」 作詞・作曲:水野良樹 編曲:本間昭光
4.「恋跡」(読み方:コイアト) 作詞・作曲:山下穂尊 編曲:田中ユウスケ、近藤隆史
5.「ハルウタ」 作詞・作曲:山下穂尊 編曲:江口 亮 弦編曲:江口 亮、村山達哉
6.「マイサンシャインストーリー」 作詞・作曲:山下穂尊 編曲:島田昌典
7.「なんで」 作詞・作曲:水野良樹 編曲:亀田誠治
8.「あしたのそら」 作詞・作曲:山下穂尊 編曲:本間昭光
9.「風乞うて花揺れる」 作詞・作曲:山下穂尊 編曲:蔦谷好位置
10.「MONSTAR」 作詞・作曲:水野良樹 編曲:鈴木Daichi秀行
11.「恋愛小説」 作詞・作曲:水野良樹 編曲:亀田誠治
12.「東京」 作詞・作曲:吉岡聖恵 編曲:蔦谷好位置
13.「風が吹いている」 作詞・作曲:水野良樹 編曲:亀田誠治
14.「ぬくもり」 作詞・作曲:山下穂尊 編曲:島田昌典

<いきものがかりライブツアー2013>
09月01日(日) 福井サンドーム
09月10日(火) 横浜アリーナ
09月11日(水) 横浜アリーナ
09月15日(日) 仙台セキスイハイムスーパーアリーナ
09月16日(月・祝) 仙台セキスイハイムスーパーアリーナ
09月28日(土) 大阪城ホール
09月29日(日) 大阪城ホール
10月05日(土) マリンメッセ福岡
10月06日(日) マリンメッセ福岡
10月12日(土) 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
10月13日(日) 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
10月19日(土) 愛媛県武道館
10月20日(日) 愛媛県武道館
10月26日(土) 広島グリーンアリーナ
10月27日(日) 広島グリーンアリーナ
11月09日(土) 神戸ワールド記念ホール
11月10日(日) 神戸ワールド記念ホール
11月16日(土) 静岡エコパアリーナ
11月17日(日) 静岡エコパアリーナ
11月22日(金) 日本武道館
11月23日(土・祝) 日本武道館
11月27日(水) 日本ガイシホール
11月28日(木) 日本ガイシホール
12月07日(土) 三重サンアリーナ
12月08日(日) 三重サンアリーナ
全席指定 前売¥6,800
ファミリーシート 前売¥6,800
※ファミリーシートとは、小さなお子様連れのご家族やライブを着席してご覧になりたいという方の為にご用意させて頂く着席指定の座席です。

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◆いきものがかり オフィシャルサイト

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