【インタビュー】miwa、3rdアルバム『Delight』の新たな挑戦「このアルバムが2010年代の新しい音楽になったらいいな」
■「LOUD!~憂鬱をぶっとばせ~」はまるで部活のようなレコーディングでした(笑)
■音楽一本で進んでいくんだよという気持ちを歌にした曲が「ぬくもり」です
──3月には初の武道館ライブ<miwa live at 武道館~卒業式~>もあったし、やるべきことが多かったでしょうね。それらの充実した活動ぶりが反映されたアルバムは、実にさまざまなタイプの楽曲が収録されています。
miwa:この1年間は初のホールツアー<miwa concert tour 2012 “guitarium”>や弾き語りツアー<miwa acoustic live tour 2012 “acoguissimo 2”>など、様々な経験をしたので、アルバムにはライブを意識して作った曲もあるんです。たとえば、「321」はメジャー感があってハッピーなアップテンポの曲にしたかったし、それとは逆に「LOUD!~憂鬱をぶっとばせ~」はストレス発散できるような曲がイメージ。
──たしかにこの2曲は、バンド感が強く、激しいエレキギターがサウンドを牽引するようなナンバーですね。
miwa:そうなんです。「LOUD!~憂鬱をぶっとばせ~」では人生で初めてワウを踏んでます! ワウをゆっくりと踏み込んで徐々にトーンを変化させなきゃいけないのに、その微妙な感じが難しくて、つい一気に踏み込んでしまうんです(笑)。すると、「そこダメ!」って即注意されて、まるで部活のようなレコーディングでした(笑)。テンポもBPM185と速いから、うかうかしてるとリズムに置いていかれちゃうし、かといって一気には踏めない。ほぼ特訓でしたね。特訓と言えば、「LOUD!~憂鬱をぶっとばせ~」のイントロとかのタッピングは、この先の懸案事項でもあるんです(笑)。レコーディングではNaoki-Tさんが弾いたんですが、「これ、ライブ本番ではmiwaちゃんが弾くんだよね? そうじゃないとダサくなるから絶対弾いてよ」って。ステージで私が弾くことが前提のタッピングなんです。それがライブに向けてプレッシャーで……でもがんばりますよ(笑)。エレキギターは「chAngE」から弾くようになったんですけど、ホントに楽しいですから。
──エレキギターの腕前も着々と成長してます。「Sparrow」のギターソロはmiwaさんによるものですよね?
miwa:そうなんです。成長したいと思ってソロパートにも初挑戦しました。多分、Naoki-Tさんのフェンダー製ストラトをお借りしてレコーディングしたのかな。このソロも全然すんなり弾けなくて(笑)。ミュートが難しいなと思ったし、チョーキングの音程を合わせるのも大変だったし、やっぱりギターとはいえ、エレキとアコギは別物ですね。
──曲調はバンドサウンドを基調に、打ち込みサウンドがミックスされていますね。
miwa:まさにエレキと打ち込みの融合をイメージして作った曲です。自分の中では“エレキギターの楽曲=「chAngE」”だったので、その先に行くために打ち込みの要素を入れたかったし、ボーカルもオートチューンをかけたりラジオボイスにしたところもあるんですね。そうすることで“今”のサウンドになるかなと。
──この曲は歌詞もこれまでのテイストと違うワードを選んでるのかなと。
miwa:そうですね。価値観は本当に様々だなって思ったんです。自分が正しいと思うことが誰かには当てはまらなかったり。誰かが正しいと判断したことが、良いとか悪いでは言えなかったりするなと感じたときに葛藤が生まれたりして。だからこそ、その中で自分をしっかりと持っていなければと思いながら歌詞を書きました。
──「Delight」にしても「Sparrow」にしても、アルバム収録曲の歌詞には卒業という転機を迎えたmiwaさんだからこそのものが投影されているという?
miwa:最後の曲の「ぬくもり」も今の私だから書けたかなと思います。高校卒業のときに作った「つよくなりたい」を1stアルバム『guitarissimo』のエンディングソングとして収録したんですけど、「ぬくもり」は大学卒業して新社会人になる4月に書いて『Delight』のエンディングソングにしました。仮タイトルは「おかあさん」。母親に向けてのメッセージであり、音楽一本で進んでいくんだよという気持ちを歌にしています。
──なるほど、そうだったんですか。恋しい気持ちを歌った旅立ちの曲だけに、大失恋を経験したのかと、心配してました(笑)。
miwa:あははは(笑)。そうとも読み取れる歌詞ですよね。
──先ほどの「Sparrow」のオートチューンやボーカルエフェクトにも関連して言えることですが、今回はボーカリストとしても、いろんな歌唱法やコーラスに挑戦してますね。
miwa:そうですね。まず「Delight」は、音程の高低差が結構激しい曲なので、1曲歌い終わると消耗が激しいんですよ(笑)。レンジが広過ぎてライブのときに大変そうだなと、曲を作りながら思ったので、実は半音下げたバージョンも考えたんです。でも、それを聴いたときにヒリヒリ感や決意表明の強い意志が弱まってしまう気がして。もしかしたら半音下げでも十分だったのかもしれないけど、ギリギリのところまでやるのも新しいことだと思えて。で、おっしゃるとおり、この曲のコーラスもこだわりました。「ヒカリヘ」ではアレンジの段階で決め込んだものを入れてみたところ、それが凝った響きになったんですね。ベタに入れたり普通の3度上とかではないなってことは「Delight」制作中にも思ったので、面白いと思えるコーラスラインを楽器的に入れるようにしました。
──「サヨナラ」ではラップ的なアプローチも披露しています。
miwa:挑戦でしたね。サビから作っていたときに、なんとなく“Aメロはラップだな”と思っちゃったんです(笑)。いつものように鼻歌で作ったメロディを打込むという制作過程をラップに置き換えることが難しかったので、とりあえずラップの旋律を歌ってみようと思っんですが……お聴かせできないくらいひど過ぎて(苦笑)。心が折れそうになったけど、“いや、どうにかできるはず”ってがんばりました。本格的にラップされてる方には怒られちゃうかもしれないけど、自分なりのラップとはこんな感じって想像しながら、修正しながら完成した曲です。
──初ラップは、アルバムの音楽的な幅を広げる結果となったと思います。それと、miwaさんといえば一般的にアコースティックギターの印象が強いと思うんですね。たとえば、「Napa」などはその象徴的な楽曲で。でも、その一方で、「ヒカリへ」以前からもエレクトロを取り入れるなど、音楽的に挑み続けてますよね。
miwa:ああ、そこに気付いてもらえるとうれしいです! 『guitarissimo』収録曲の「メリーゴーランド」もエレクトロですが、新しいことを取り入れようという姿勢はずっと持ち続けたいなって思っています。
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