【対談】坂本龍一 vs 難波章浩、怒りをこめてNO NUKES!! 未来は絶対にあきらめない!

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2012年、坂本龍一が主宰した脱原発音楽イベント「NO NUKES 2012」で趣旨に賛同して参加した難波章浩(Hi-STANDARD、NAMBA69)。2013年は3月に行われた坂本龍一らの「NO NUKES 2013」と並走する形の新イベント「NO MORE FUCKIN' NUKES 2013」を自ら立ち上げる。出演はNAMBA69、KEN YOKOYAMA、BRAHMAN、SLANG、サンボマスター、ソウル・フラワー・アコースティック・パルチザン、恒正彦の7バンドと、DJとして松田“CHABE”岳二(CUBISMO GRAFICO / kit gallery)の8組。公の場での対談はこれが初めてという坂本龍一と難波章浩のふたりが、5月5日にオンエアされた「RADIO SAKAMOTO」のために行った気持ちのこもった特別対談の詳細をお届けする。

■若い世代に励まされた。熱をもらって煽られたうれしさがある(坂本龍一)
■今度は、ぼくらの世代が声を上げる番なんです(難波章浩)

難波章浩(以下、難波):あの…この番組で「FUCKIN'」とか言っちゃってもいいんでしょうか?

坂本龍一(以下、坂本):う~ん、いいんじゃないの?(笑) だってイベント名に入っているんだから(笑)。連呼したりしなきゃいい! 難波君は去年の「NO NUKES 2012」に出てくれたんだけど、今年はぼくたちが3月にやった「NO NUKES 2013」のイベントと、7月の難波君たちのイベントをあえて分けてやることにしたんです。爺さん組と若者組で(笑)。

難波:そういう分け方じゃないでしょう(笑)。「NO NUKES 2013」のほうに、ぼくより若いアーティストやバンドがたくさんいたじゃないですか!

坂本:あ、そうか(笑)。気持ちとしては、いろんな人たちがいろんな場所で、いろんなイベントをすればいいと思ったのね。

難波:そう、今回のもともとのきっかけは、教授にお食事にお誘いいただいて、というか、呼び出されたというか(笑)、そのときにそういう話をされたんですね。「難波君、若者たちでイケイケのをやってみなよ!」と。あのときちょっと意表を突かれたんですね。これまでずっと脱原発の気持ちで、そういうメッセージを発してたけれど、主体的に自分たちがイベントを主催というのはまったく考えてなかった。正直、勇気がなかったんですね。

坂本:ぼくは反対に、「NO NUKES 2012」をやったとき、ぼくらYMOやクラフトワーク以外はほとんどのアーティストが難波君をはじめとした若者たちで、そのことにすごく励まされたんだよね。熱をもらった、煽られたと言ってもいい。だから、どんどん自分たちでもやって!と思ってたんだよね。

難波:そう感じてもらったのはうれしいです。3.11と原発事故以降、ロックバンドをやっている人たちから、意外に声が上がってこない印象があった。そんななか、ぼくと同じ世代のBRAHMANやSLANGやKEN YOKOYAMAらはすごく大きな声でメッセージを発してたので、ぼくもtwitterとかで勇気をもらって発言したほうなんですけど、イベントをやるまではいかなかった。

坂本:「NO NUKES 2012」のときにACIDMANの大木君がステージから「ぼくらがNO NUKESを言わなかったら誰が言うんだ!」というMCをしてたでしょ。本当にその通りだなあと思った。だって、ミュージシャンというこんな自由な仕事をしているぼくたちが言わずに、誰が言えるんだってことでしょう。ミュージシャンは社会の中でそういうことを言う役割があるんですよ。

難波:本当にそうですね。やっぱり、ぼくらの前には教授や清志郎さんという世代がいて、そういう方たちの音楽を聴いて育ってきたのだから、ぼくたちがいま言うときが来たんだなと感じてはいたんです。継承しなきゃいけない。

坂本:ありがとう。そんな「若者組」が、今年の7月14日にやる脱原発のNO NUKESのイベントが「NO MORE FUCKIN' NUKES 2013」。

難波:当日はユーストリームで全国のみんなに観てもらいたい。その場に来れなくても意識を持っている人はたくさんいると思うし、同時に原発に対する意思とか、まだ固まっていない人にも観てもらいたいんですよ。実際、ぼくら自身にしてもこれからどうアクションを起こしていくかも固まってないし、考えなきゃいけない。つまりこのイベントを通してみんなでそういうことを考えていきたいんです。

坂本:そうだね。

■ぼくらが言わなきゃ誰が言う!?(坂本龍一)
■若い世代を後押しする役目がある(難波章浩)

難波:だから、まずはやってみることだなって思って。で、いちばん気になっていることは、このあいだの衆議院選挙のときに、若者の投票率がすごく低かったこと。若者世代という言葉が適当かどうかはわからないですけど、その層が原発問題や自国のエネルギー問題に対してどう考えているのかという声を発していない気がするんです。最近、そこを後押しするのがぼくらの役目かなと思ってる。

坂本:そういえばイベントのある7月14日って参議院選挙が近いよね。投票日の直前だ。どの政党や候補に入れるにせよ、選挙には行ったほうがいい。自分の態度は投票でちゃんと表明しなきゃ。昨年12月の衆議院選挙の自民党の大勝で、報道では原発の問題がもう忘れ去られたみたいな感じにもなっているけれども、でも、ぼくの実感では、一般の人はそんなに簡単に忘れてないと思っている。実際、今年に入ってからの新聞の世論調査を見ても、やっぱりみんな忘れてない。関心の優先順位としてまず経済を考えて自民党に投票しても、原発のような個別の問題では、日本人の7割近くは原発に反対と答えている。ついこの間も安倍首相の地元の山口県の参院補選選挙で自民党の候補が勝ったのだけれど、それでも原発はいやだ、放射能はこわいと思っている人が7~8割を占めている。

難波:なのに、なぜ!? ですよね。ぼくたち、文句を言わなすぎでしたよね! そういう文句を込めて「NO MORE FUCKIN' NUKES」なんですもう!

坂本:2回目だ、「FUCKIN'」(笑)。

難波:はい、もう何度でも言っちゃいます! 正直、冷静ではいられない。怒りです。怒りつつ、未来はあきらめるわけにいかない! 今回、原発のことだけではなくて、この日本という地に生きている一員として、この国や社会をいい感じに変えていくためにはどうすればいいのか。それは選挙での投票なのか、あるいは、これまでの政治家じゃだめだから、自分が立候補して政治をよくするんだ! みたいな若者がどんどん現れてきてほしい。

坂本:実は、3.11以降の脱原発の活動の中で1960年代のアメリカの黒人の公民権運動やそのもっと前の20世紀初頭の女性参政権運動のことが思い出されてならなかったんですよ。日本の一般の人の多くは脱原発を望んでいるにもかかわらず、その声を上げる人は少ないじゃないですか。声を上げているぼくらはようするにマイノリティ。公民権運動における黒人たちや100年ぐらい前の女性の参政権論者と同じ。何万年何千年の人類の歴史の上で女性に最初に参政権が与えられたのって、つい100年前の話ですよ。自由とか平等に関することって、本当にちょっとずつしか前に進まない。

難波:それと同じように、原発に頼らなくていい社会になるという夢も、いつかは叶うということですよね。

坂本:そう。もう原発は経済的にコストに見合わないということも明らかになってきたし、まちがいなく世界は脱原発に向かう。最後にもう一回言ってしまいますが(笑)、「NO MORE FUCKIN' NUKES 2013」にぜひおいでください。…結局3回も「FUCKIN'」って連呼しちゃった(笑)。

構成●吉村栄一

NO MORE FUCKIN' NUKES 2013
2013年7月14日(日)
at SHIBUYA-AX
Open 14:00 Start 15:00

◆NO MORE FUCKIN' NUKES 2013 Official Site
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