ローランド、リアルタイム・コントロール重視、即戦力のピアノ/オルガン/シンセ音源搭載ライブ・キーボード「VR-09」

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数多くのキーボードをリリースしているローランドの新製品「V-Combo VR-09」は、「ライブ・キーボード」というカテゴリに属するモデルだ。ステージでの即戦力となるピアノ、オルガン、シンセの音源を搭載し、パフォーマンスを重視したリアルタイム・コントロールも充実。さらに軽量で持ち運びにも便利と、まさにプレイヤー向けのキーボードになっている。

■プロ・スペックのピアノ、オルガン、シンセ音源

まずチェックしたいのが、そのサウンド。中でもオルガンは同社のVKシリーズからブラッシュアップされた最新のバーチャル・トーンホイール音源を搭載した本格的なものだ。この音源は実物のトーンホイール・オルガンの発音機構をデジタルで再現したもので、オルガン特有の厚みや深みのあるサウンドを生み出すのはもちろん、トーンホイールならではのノイズもシミュレートしている。そして、新たにトランジスター・オルガンのサウンドも搭載。オーバードライブをかけることで、現在もオルガン愛好家からの熱狂的な支持を受けている、ハードロックで映えるあのサウンドがプレイできるのだ。

ちなみにこのオーバードライブ、つまみを回すだけで劇的に歪んでくれるのだが、歪みが増えても音量はさほど持ち上がらない。そのため通常のエフェクトでは必要な、ボリュームをしぼる手間が省けるという使い勝手のよさも特筆すべき点だ。さらに、オルガン特有の速弾き(トリル/スパッター)、グリッサンド、そしてパーカッシブに鍵盤を叩く奏法などにも対応。ギター・アンプ、エフェクターでおなじみのローランド独自のモデリング技術COSMの採用により実現した、アンプの真空管の特性、箱鳴り感、スピーカーの音響特性の忠実な再現、新開発のツイン・ロータリーによる深いロータリー・サウンドなど、見どころは多い。


▲本体パネル中央に、ORGAN、PIANO、SYNTHの3つの音源セクション・ブロックを配置。オルガンにはハーモニック・バーを備え、即座に音づくりが可能。
ステージで最も使われるであろうピアノ音色は、88鍵ステレオ・マルチサンプリングで、ピアノ専用モデル並みのクオリティを誇る。また、エレクトリック・ピアノ音色は、歴代の名機を再現したものを多数用意。ビンテージ系のフェイザーによるうねりのある独特のエレピサウンド、バンドアンサンブルでも埋もれないコシのある音など、キーボーディストなら「これこれ、この音!」と満足する音が揃っている。強く弾いた時のつぶれたような音もなかなか気持ちいい。

JUPITERゆずりのパワフルなシンセサウンドも忘れてはならない。ヴィンテージ・シンセからデジタル時代までの歴代の名機・定番機からの音色、最近のシーンにマッチしたアグレッシブな音色やアンビエント音色まで幅広く用意。専用音源ならではの音作りに対応するのもポイントで、iPadアプリを使ってオリジナルのサウンドも作ることが可能(後述)。ブラスやストリングスなど使用頻度の高いサウンドも搭載する。

■充実のリアルタイム・コントロール

ステージ・キーボードとして欠かすことのできない要素であるリアルタイム・コントロール。鍵盤の奥に配置された各種操作子を見れば、すぐにそのわかりやすさ、使いやすさが実感できるはず。「デジタル楽器はメニュー階層が深くて設定が面倒」なんて人も「VR-09」なら心配無用だ。


▲手をかざすことでさまざまなパラメーターをコントロールできるDビーム(左側)は、パフォーマンスをより派手に演出。EFXセクションでは6つの専用つまみを用意。まずはMFXでその効果を楽しもう。
まず、オルガン、ピアノ、シンセの3つの音源セクション・ブロックに分かれており、迷うことなく操作ができるのが第一のポイント。オルガンでは9本のハーモニック・バーと赤いソロ・バーで本格的な音づくりが可能。シンセ音色のサウンドメイクでは必須となるカットオフ/レゾナンス/アタック/ディケイ/リリースにはスライダーを装備する。2つの音色ボタンを同時に押してレイヤー、スプリット・ボタンで自動的に鍵盤を2つに分けて左右で違う音色を演奏できるスプリット・モードへ移行するなど、思いついた操作がすぐできるのも便利だ。

また、演奏時のパフォーマンスに最適なエフェクトが多数用意されるのだが、これらを容易に使えるようチューニングしてコントローラーに割り当てているのも大きな特徴だ。ロータリー専用スイッチ、手をかざすことでサウンドを変化させられるDビーム、そして、コンプレッサー/オーバードライブ/ディレイ/リバーブ/トーン/MFX(マルチエフェクト)の6つのエフェクト専用つまみを用意。なかでもMFXは音色ごとに最適なエフェクトがスタンバイ、つまみを回すだけで即座に音色変化が得られる。「つまみ1つでここまで劇的に変化するのか!」と、初心者ならずとも驚き、思わずさまざまな音色を切り換えつつ、つまみをぐりぐり回し続けること間違いなしだ。

直感的に、そして最大限にエフェクトを活用できるこれらコントローラーは、ライブでの使い勝手を徹底的に考え抜いた結果生み出されたもの。ぜひ、実機でその快適さを味わってほしい。

■軽量&電池駆動もOK、ルーパーやリズム・バッキングも


▲ドラム・セクションには多彩なパターンを備えるリズム・プレーヤー機能を搭載。ルーパーに録音してパフォーマンスへの活用もOK。SMFとオーディオの録音・再生機能はライブの伴奏やSE再生にも。
「VR-09」のライブ・キーボードとしての魅力をさらに高めているのが、軽量・コンパクトであるという点。その重量はわずか5.5kg、電車の持ち運びも苦にならない軽さだ。そして、同社のJUNOシリーズがウケている理由の1つでもあるバッテリー駆動にも対応。充電式ニッケル水素電池で約5時間の演奏が可能。ストリート・ライブはもちろん、ステージ袖でのサウンドチェックなど、電源が確保できない場面でも大いに活躍してくれる。

リアルタイムに録音/再生しながら音を重ねるルーパー機能は、ソロ・パフォーマンスの強い味方。「VR-09」では、ステレオで最大20秒の録音が可能だ。ギターやボイス・パフォーマンス向けという印象が強いルーパー機能だが、「VR-09」ならよりバリエーション豊かなパフォーマンスが実現できる。MIDIファイル/オーディオファイルの録音・再生機能、さまざまなスタイルのバッキングが用意されたドラム・パートと合わせて、バンド・メンバーの代わりを担わせるだけにとどまらない使い方を考えてみたい。

■iPadエディターで音作り

無償提供されるiPadアプリ「VR-09 Editor」は、「VR-09」をさらに便利に使えるようにしてくれるもう1つのファクター。オルガン・トーンとシンセ・トーンのエディット機能を備え、「エディット→持ち運び→ステージ」というシンプルかつ有用性の高い使い方を可能にする。「VR-09」とiPadの接続はApple iPad Camera Connection Kitを使用するほか、別売りのワイヤレスUSBアダプター「WNA1100-RL」(4,200円)を使えば無線接続も可能。ケーブルのわずらわしさから開放されるだけでなく、セッティングの自由度も高めてくれる。


▲iPadアプリ「VR-09 Editor」はApp Storeで無償提供。iPadとの接続はワイヤレスにも対応(写真左)。画面はオルガン・エディット画面とシンセ・エディット画面。

    ◆   ◆   ◆

ライブでキーボードを弾き倒したいという人なら要チェックの「VR-09」。音質はもちろん、リアルタイム操作の直感的な音作り、ステージ・パフォーマンスをするうえでの使い勝手も、ぜひ実機を触って確認してほしい。店頭でちょっと触っただけでもその魅力がわかるはずだ。気になる価格は10万円前後。鍵盤やコントローラーに触れた後、本体を持ち上げて軽さをチェックするのもお忘れなく。

<おもな仕様>
●鍵盤部
鍵盤:61鍵(ベロシティー対応)
キーボード・モード:フル・キーボード、デュアル(音量バランス設定可能)、スプリット(スプリット・ポイント、音量バランス設定可能)、2段鍵盤モード(別売MIDIキーボード接続時)
●音源部
オルガン部:バーチャル・トーンホイール方式(SuperNATURAL)
MIDIフォーマット:GM2、GSフォーマット、XGlite対応
最大同時発音数:128音
パート数:オルガン(3パート)、ピアノ(2パート)、シンセサイザー(2パート)、ドラム(1パート)、GM2(16パート)
音色:223音色
レジストレーション:100(4×25バンク)
エフェクト(7系統常時動作/グローバル・コントロール):オーバードライブ、トーン、コンプレッサー、マルチ・エフェクト(20種類)、ディレイ(6種類)、リバーブ(6種類)、ロータリー(2種類)
●SMF/オーディオ・ファイル・プレーヤー部
再生可能ファイル・フォーマット:SMFファイル(フォーマット0、1)、オーディオ・ファイル(WAV、AIFF、MP3)
録音ファイル・フォーマット:SMFファイル(フォーマット0)、オーディオ・ファイル(WAV(44.1kHz、16ビット・リニア))
●ルーパー部
録音時間:20秒(ステレオ)
●その他
リズム・パターン:52種類
コントローラー:バーチャル・トーンホイール・オルガン(ハーモニック・バー×10)、シンセサイザー・コントローラー(スライダー×5)、D-BEAMコントローラー、ピッチ・ベンド/モジュレーション・レバー、エフェクトつまみ×6(グローバル・コントロール)
ディスプレイ:グラフィックLCD 128×64ドット
外部メモリー:USBメモリー
接続端子:OUTPUT(L/MONO、R)端子=標準タイプ、PHONES端子=ステレオ標準タイプ、EXT INPUT端子=ステレオ・ミニ・タイプ、DAMPER端子=TRS標準タイプ、EXPRESSION PEDAL端子=TRS標準タイプ、MIDI(IN、OUT)端子、PK IN端子=8ピンDINタイプ、USB COMPUTER端子=USB Bタイプ(USB MIDI対応)、USB MEMORY端子=USB Aタイプ、DC IN端子
電源:ACアダプター、充電式ニッケル水素電池(単3形)×8
消費電流:650mA
連続使用時の電池の寿命:充電式ニッケル水素電池=約5時間(USBメモリー接続時は約3時間)※マンガン電池、アルカリ電池は使用不可
付属品:取扱説明書、ACアダプター、電源コード、USBメモリー・プロテクター、保証書、ローランド ユーザー登録カード
別売品:キーボード・スタンド(KS-18Z、KS-12)、ペダル・スイッチ(DPシリーズ)、エクスプレッション・ペダル(EVシリーズ)、ペダル鍵盤(PK-6、PK-9)、USBメモリー、ワイヤレスUSBアダプター(WNA1100-RL)、61鍵用キーボード・キャリング・ケース  (CB-61RL)
●外形寸法/重量
外形寸法:1008(W)×300(D)×106(H)mm
重量:5.5kg

◆V-Combo VR-09
価格:オープン(予想実売価格 100,000円前後)
発売日:2013年3月15日

◆V-Combo VR-09 :: FrontScene :: ローランド
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◆BARKS 楽器チャンネル
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