【ライブレポート】トコトロニック&イッツ・ア・ミュージカル、これぞドイツのロック

ポスト
4月14日(日)ベルリン、テンペルホーフに位置するホール、コロンビアハレ(Columbiahalle)にて、トコトロニック(Tocotronic)とイッツ・ア・ミュージカル(It's a Musical)のライブが行われた。両バンドは3月よりヨーロッパ各所を巡るツアーを行なってきた。この日のベルリンでのライブはそのツアーの締めくくりとなるライブであり、コロンビアハレには約3,000人のベルリナーたちが詰めかけた。

◆トコトロニック、イッツ・ア・ミュージカル画像

トコトロニックは、1990年代以降のドイツ・ロックを象徴するバンド。1990年代からハンブルクを中心に音楽活動を開始した彼らは、そのイデオロギー的でないストレートな“等身大の視点からの反抗的な歌詞”で多くのドイツ人の共感と支持を得る。満員の会場の観客の年齢層は、バンドと同時代を歩んできた30代後半~40代の人々が圧倒的で、それに続いて20代後半のベルリナーたち。ドイツのロックを語る上で避けて通れないバンドであることが、観客の熱気からヒシヒシと伝わってくる。最近のトコトロニックのアルバムを聴くと、一言でパンクバンドと形容できないような、アコースティックな楽曲、ポスト・ロック風な楽曲などなど、バラエティ豊かな音楽性を持っているバンドという印象があるが、ステージ上での彼らは、ある意味で彼らの音楽の“原点”を愛してやまない観客の期待に応えるかのように、パンク・バンドとしての「アジテーション」に専念しているのように見えた。

数人の観客にトコトロニックの魅力について尋ねると、「ドイツにおける初めてのパンク・バンド」、「ドイツで(ストーンズの)「サティスファクション」みたいな曲を書いたバンド」、「彼らの歌を同世代で聴いてきた自分を含むドイツ人にとっては、彼らの音楽は特別な意味を持ってるんだ。今、聴いてみて何が音楽的に面白いかと訊かれると難しいのだけど」と答えた。それは例えば、日本語をあまり理解していない外国人に、RCサクセション、INU、ブルーハーツなど、日本のパンクの素晴らしさを説明することに近いのだろう。トコトロニックはとにかくドイツ人にとって大切なバンドなのである。観客の熱気はその事実を確実に伝えていた。

キュートな女性ヴォーカリスト、エラ・ブリクスト(Ella Blixt)と大胆なドラミングと繊細なヴィブラフォン演奏の対比が素晴らしい器用なパーカッショニスト、ロベルト・クレチュマー(Robert Kretzschmar)からなるイッツ・ア・ミュージカルは、その卓越したポップ・センスで観客を魅了。3月から継続して行なってきたトコトロニックの前座としての、大観客を前にしたステージで、ひとまわり大きく成長した姿を見せてくれた。2013年リリースされた新曲「サマー・ブレイク」の演奏では、トコトロニックのギター兼キーボード奏者、リック・マクフェル(Rick McPhail)が飛び入り参加するなどのサービスもあった。

ドイツのバンドだけが登場するコンサートで、それもオルタナティブ・ロック、あるいはインディーズ・ロックと言われる領域で、これだけの観客を動員し、観客が満足しているという風景を見るのは、それほど容易ではない。表現手法の違いこそあれ、両者はドイツにおける現代のロックを象徴する2バンドであるのだろう。

そしていよいよ、5月17日から5月24日にかけて、イッツ・ア・ミュージカルの再来日公演が神戸、京都、東京、新潟、金沢、名古屋にて行われる。多くの日本の人々に、彼らの音楽の素晴らしさを堪能してほしい!

文:Masataka Koduka

◆Rallyeレーベル(It's A Musical来日公演情報)
◆It's A Musicalオフィシャルサイト
◆Tocotronicオフィシャルサイト
この記事をポスト

この記事の関連情報