【インタビュー】INORAN「ギターを作ること弾くこと世に放つことに対してもっと深くいきたいという気持ちが第一にありました」

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■カスタムショップとのコラボ INORAN Jazzmaster #1 LTD
■ヴィンテージよりも鳴るニューギターが作れて感動しました


▲INORAN Jazzmaster #1 LTD
──では、ジャズマスターについてうかがいますが、INORANさんにとっての1本目のジャズマスターとは?

INORAN:ソロアルバム『Watercolor』(2010年3月発表)の後だったと思います。それまではストラトがメインだったんですけど。ある日、突然欲しくなったんですよ。いま話したように、僕はほとんどの種類のギターを持っているんですが、そのときジャズマスターだけは持っていなくて。レコーディングスタッフがすごくいい音のジャズマスターを持っていたから、レコーディングではいつも借りていたんですよ。それが、ある夜にふと欲しくなって、いてもたってもいられなくなり(笑)。今、ネットで探すことができるじゃないですか、どの楽器店にどの年代のジャズマスターの在庫があるとか。“ここだ。ここにいっぱいある”って調べて、翌朝買いに行ったんですよ。

──それほどまでに惹きつけられた理由を今、冷静に分析できますか? 音ですか、スタイルでしょうか?

INORAN:基本的に僕、最初は絶対にカタチなので。カタチからアガッちゃうんですよ。もちろん前から、ジャズマスターかっこいいなとは思っていたんですけど、そのとき、“これを持ってやりたい”と思ったんですよ。そこに理由はないんです(笑)。

──それが1959年製のジャズマスターですか?

INORAN:そう。翌日行った楽器店に5本くらいのジャズマスターがあったんだけど、木の鳴りとカラーリングがめちゃくちゃ良くて。ちょっと壊れていたけど、どうしてもその日、欲しかったんでね。

──自制が効かない魔力があったわけですね?

INORAN:で、レコーディングスタッフに電話したら、それなら直ると思うよっていう話だったんで、持って帰りました(笑)。

──実際に自分のものとなったジャズマスターはいかがでしたか?

INORAN:さっき話したように、レコーディングでは使ったことがあるけど、自分が持っていない音だったので。ジャガーとも違うし、もちろんストラトとも違う。また果てしないのが来たよみたいな。でも、それがやる気を起こさせてくれるという。

──未知なるものにワクワクしたという感じでしょうか?

INORAN:そうですね。だから、誰かが使っているのを見て欲しくなったっていうことではないんです。一番攻撃的だし、一番前衛的なサウンドがするっていうところが、面白いですね、ジャズマスターは。

──2010年12月にはフェンダーのエンドースメント契約が発表されました。と同時に、INORANジャズマスター#1の発売予定がアナウンスされたましたが、まず、エンドースメント契約に至った経緯とは?

INORAN:それ以前からフェンダースタッフとは仲良くしてもらっていて。僕はジャズマスターだけでアルバムを作っちゃったし、フェンダースタッフはギターに対してすごく愛がある。その2つの熱量が重なったというか。

──そこから、#1の製作という話に?

INORAN:フェンダーとの親交が深くなったきっかけのひとつに、マスタービルダーによるカスタムショップ製ストラトをショウルームで購入したことがあって。そのストラトがすごく良かった。マスタービルダーの技術をミックスした新しいジャズマスターが生まれたらうれしいんだよね、みたいな話はしましたね。

──#1は、INORANさんが所有している1959年製ジャズマスターがベースになっているとか?

INORAN:ヴィンテージを基に現代のマスタービルダーに作ってもらうと、どういうふうになるのかっていうのかっていうことにもすごく興味があった。そういう意味で、仕様を変えずにやってみたかったというか。1959年製のネック形状とかはすごく気に入っているからね。

──ネックグリップは1959年製を採寸して再現しているそうですね。しかもこの年代ならではのスラブボード仕様。さらに、ブラックのフィニッシュやアノダイズドピックガードはINORANさん所有の1959年製が基になっていますが、ただ、ピックアップカバーにブラックを採用したほか、ボリュームノブもオリジナルとは変えていますね?

INORAN:そうですね。スタッフやフェンダーの方々といろいろ考えたりして。そっくりそのまま作ってもしょうがないので、ちょっと俺らしいところも含めてね。

──バズストップも特徴のひとつですが、これは操作性とかチューニングの安定性の部分ですよね?

INORAN:いつもレコーディングにたずさわってもらっているスタッフの意見も聞いて。“チューニングが安定しないのもジャズマスターらしいところだからしょうがないよ”っていうことでは、ライヴで使えないから(笑)。そのへんは積極的に変えていきましたね。

──コントロールについてもうかがいたいのですが、プリセットスイッチを固定したり、回路を外したりているジャズマスターユーザーも多いようですが、INORANさんは?

INORAN:今のところライヴではほとんど使わないですが、レコーディングでは使っているので。それに、この回路を通っているからこそのサウンドということもあるし。やっぱり回路を外すと音が変わっちゃうから、プリセットはそのまま残すようにしていますね。

──#1のサウンドのほうはいかがですか?

INORAN:ヴィンテージには音の鳴りという部分で勝てないっていう考え方もあるじゃないですか。でも、#1を初めて鳴らしたときには、ヴィンテージよりも鳴るニューギターが作れるんだって。すごい感動しましたね。ちょうどLUNA SEAのロサンゼルス公演(<LUNA SEA 20th ANNIVERSARY WORLD TOUR REBOOT  to the New Moon >)のときに出来上がってきたんですよ。弾いたときのその感触は今でも覚えています。

──ヴィンテージって、木が乾いているとか、長年弾き込まれたことによって振動がボディに染みついているとか、だからこそ鳴ると言われますが、それに匹敵するものが#1には最初からあったという?

INORAN:木の経年変化とか歴史とか、そういう物理的なことと対等に勝負しているわけではないけど、それすら超えるものが作れるんだっていうところに、フェンダー恐るべしと思いましたね(笑)。まったく妥協がないですよ、#1の仕上がりは。

──それこそ、また新たな未知なるものですよね?

INORAN:本当に、そういう感じがありました。

──このギターはチームビルドによるカスタムショップ製INORANジャズマスター#1 LTDとして限定50本がリリースされましたが、それもすでに完売しているそうですね。

INORAN:日本に送られてきたときに、1本1本、自分で検品したんですよ。そこでのフェンダースタッフの緻密な作業も見ることができたし。それは僕にとって初めての体験で、もっとこのスタッフの方々とギターでつながっていきたいなと、そのときに思いましたね。

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