【インタビュー】Drop's、ブルース、ロックンロールのスピリットを持った札幌在住の19歳女性5人組ロックバンド
■実際に見た風景と自分の気持ちをうまく合わせて書いていく
■だから今は実際のことしか書けない。想像の先には行けない
──リリースされる2ndミニアルバム『LOOKING FOR』は、前ミニアルバムから1年半ぶりということになりますが、その間はライヴをしながら曲を書き溜めたり?
中野:大学受験をするメンバーがいたので、半年くらいはバンドでのライヴをしてなくて。2012年3月からライヴ活動を再開したんです。そこからまたみんなで曲を作って。収録した曲は、基本的に2012年夏のショートツアーでやっていた曲が中心で。「赤い花」は絶対入れようと思っていました。
──作風としてはほかの収録曲だったり、これまでのナンバーだったりと異なるところがある曲ですね?
中野:そうですね。今までより一歩前に出られた感じっていうか。作っているときもそうだったんですが、2012年夏に<JOIN ALIVE>っていう夏フェスに参加して。晴れ渡った野外でお客さんの顔もバーッと見えるなかで、この曲をやったときにすごく気持ちよかったんです。メンバー全員がそういう感覚だったと思う。そのとき、自分たちのこの先の展開として、すごくありだなと思って。
──苛立ちとか焦燥感とか、ここではないどこかへ行きたいという気持ちが、Drop'sの楽曲の核となっているじゃないですか? でも、この曲には開放感があるんですよね。
中野:コード進行だけは、みんなで音を出しているときにできて。たぶん3つくらいの簡単なコードだったと思うんですが、みんなで音を出しているときの感触がすごい良くて。その感触に向かってメロディとか歌詞を作っていった感じがあるんです。歌詞に出てくる赤い花は、私が家のベランダにそのとき植えていたもので、その話なんですけど。
──CDのケースを空けて、盤を取り出したときに見える、あの赤い花?
中野:まさにそれです。家のベランダが写っちゃってる(笑)。それまでの歌詞は、うしろめたい感じっていうか、鬱屈した感じっていうか、そういうのが多かったんですけど、“好きなようにやれば良いよ”っていう気分になれたときがあって。“赤い花”っていうタイトルで、その気持ちを書いてみようと。
小田:この曲の歌詞はやっぱり、今までと違うなって感じましたね。
中野:作ったのが春だったんですが、なんか季節もよかったんだと思うんですよね(笑)。
──ああ、春の穏やかさだったり、新しい季節感だったりがある曲ですね。それに“なにかを探しにいくのさ”っていう最後の一節が未来を感じさせるんですよ。それがアルバムタイトルにもなっていると思うのですが?
中野:タイトルは曲順を決めてからつけたんです。「赤い花」が最後になって、曲順がしっくりきて。『LOOKING FOR』っていうタイトルにしたら、これから先の自分たちの感じも出るんじゃないかなと思ったんです。今とこの先、っていうか。
──アルバムのラストにふさわしい曲ですね。一方、オープニングを飾る「くだらないブルース」は、中野さんのギターリフと歌で幕を開けますが、曲名通りのヒリヒリしたブルースナンバー。
中野:半年間、バンドが動かなかったときにひとりで弾き語りをしていて。弾き語りだったら、こういう思いっ切りブルースっぽいことをやってもいいかなって、そのときに作った曲なんです。でもバンドでやってみたらすごくよくて。ライヴをやるってなったときに、これが一曲目だったらカッコいいねってみんなで話したんですね。そこからこの曲はCDでも一曲目にしようってことになったんです。
──確かにライヴのオープニングにしたらインパクトがありますね。で、さらにそのまま2本のギターとベースがユニゾンするリフがカッコいい2曲目の「トラッシュ・アウト」に続けるみたいな?
中野:はは(笑)。この曲は私とギターの荒谷で、コテコテのリフの曲を作っても面白いよねっていうことになって。このリフを弾きたいがために作った曲というところはあったよね(笑)。
小田:うん、ホントに弾いてて気持ちいい(笑)。
──リフでいうと、楽器の3人が少しずつ異なるリフを重ねた「真夜中の時限爆弾」もありますが?
中野:これはセッションからできた曲です。リフのフレーズがセッションであって、コード進行を私が持ってかえって作って、それをまたみんなで合わせたみたいな感じ、全員で作っていった感が大きいんです。
──楽器パートそれぞれの見せ場が多い曲ですもんね。ベースソロもあるし。
中野:この曲はベースが大変そうだったよね。
小田:最初の頃は合わせるのがすごく難しくて、あんまりライヴでやってなかったんです。それで、レコーディングに向けてしっかり練習したら、カッコいいじゃんっていうふうになって。あ、自分でカッコいいって言っちゃったけど(笑)。
──このミニアルバムはリズム楽器としても、メロディ楽器としても、ベースの充実度が高いですよね。楽曲によって色合いがさまざまという。
小田:そうですね。「くだらないブルース」はみんなでバーン!と出すところと静かなところのギャップを意識して、「トラッシュ・アウト」はやっぱり、みんなでリフを合わせるところが楽しかったですね。「夜の迷路」はハネたリズムで、「真夜中の時限爆弾」もさっき話したようにリズムとメロディが難しかった。で、「黒いシャツ」はもう勢い。そのなかでも1音1音をしっかり鳴らすみたいな。
中野:私、1音1音鳴らせてるかな(笑)。この曲はホントに速くてライヴでできるのかなっていう。
小田:そうだね(笑)。最後の「赤い花」は、それとは対称的に音数が少ない感じなんで、ひとつの音を大切にみたいな感じで弾きました。
中野:歌詞の作り方は曲ごとに違ってて。たとえば、最初に言葉の断片があって、セッションからできた曲にこの言葉を乗せていこうっていうこともあるし、最初から弾き語りで歌詞も乗った状態で持っていくものもある。だから先に曲があってそこに詞を乗せるとか、詞が先とかっていう順番はないんですね。
──「くだらないブルース」では“鉄塔”とか“雨の日の街角”とか、「真夜中の時限爆弾」では“地下鉄の階段”とか“ビルの群れ”とか。風景の描かれた歌詞と、それに添う心情の描かれ方が印象的だったのですが?
中野:やっぱり景色がないと私はイヤで。実際に見た風景と自分の気持ちをうまく合わせて書いていくっていう。だから今は、実際のことしか書けない。想像の先には行けないっていうか。気持ちと同じくらい街の風景とか匂いとか色が大きくて。そこから気持ちが見えてくるのが好きなんだと思います。
──この先、あからさまなラブソングが登場する可能性はありますか?
中野:はは(笑)。これまではまったくないんですけど、もしかしたら、今後あるかもしれないですね、いろんなことはやりたいと思っているので。でも書いても、みんなに見せられないかもしれない、恥ずかしくて(笑)。
──今は、リアルな風景だったり嘘のない心情を歌詞に投影しているからこそ、飾らないこういう音楽性がマッチしてる、ということもあるんじゃないですか?
小田:ああ、なるほど。
中野:そうかもしれない。ブルースってそうですもんね。
──3月からは全国ツアー<“LOOKING FOR”レコ発ツアー>が開催されますが、また成長した5人の姿が見られそうですね。
小田:前のツアーとかを観に来てくれた人には、また成長した自分たちを観てもらいたいですし、ツアーのなかでさらに成長できたらいいなと思ってます。
中野:初めての人もいると思うし、CDを聴いてきてくれる人もいると思うんですけど、『LOOKING FOR』はライヴで高めてきた曲なので、ガッツリみせたいですね。
取材・文●梶原靖夫
2nd Mini Album 『LOOKING FOR』
2013.3.6 on sale
TERNG-098 / KMY-010 ¥1,500(tax in)
01.くだらないブルース
02.トラッシュ・アウト
03.夜の迷路
04.真夜中の時限爆弾
05.黒いシャツ
06.赤い花
Trippin’ Elephant Records / Kamuy Record
Drop's TOUR 2013<LOOKING FOR>
3月21日(木) 仙台 PARK SQUARE
3月22日(金) いわき CLUB SONIC
3月24日(日) 新宿 red cloth
3月25日(月) 神戸 太陽と虎
3月26日(火) 大阪 FANDANGO
3月28日(木) 名古屋 CLUB UPSET
3月29日(金) 渋谷 Milkyway
4月5日(金) 札幌SPIRITUAL LOUNGE (ワンマン)
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