【インタビュー】SKY-HI a.k.a.日高光啓(from AAA)が語る“事業計画”
── お話をあらためて伺うと、タイミングがほんとによかったんですね。
SKY-HI:そうですね。でもUSとかそうですけど、特にヒップホップのアーティストが一番勝負しないといけないのは「タイミング」。タイミングとスピード感ですかね。だから……今なら“****の件”で曲書いている人がいないといけない。USのスピード感でいったらね。今、一番ホットなトピックとか、これやったら話題になりそうっていうのを誰よりも早く、いいタイミングでやる。そういうゲーム。究極のインスタント食品を作る、みたいな。そういうところ、タイミングとかスピード感は、今もすごく意識しますね。
── とはいえ、SKY-HIでありつつ、同時にAAAの日高くんでもあるじゃないですか。
SKY-HI:そう! そこがギリギリでした。「96 Bars To Kill feat. SKY-HI」もダマ(黙ってアップ)だし。なんか、別にあれかなって思って。堂々と言わなければ(大丈夫かなって)。で、怒られたら消そう、みたいな。もし消されたら、それも話題になるかな、という(笑)。そんな感じだったんですけど、なんとかこう、いろいろありながらも、なんとか(笑)。だから当時はギリギリなハイリスク・ハイリターンなところというか、最悪な状況も自分の中では想定してましたね。だけど奇跡的に許してくれる人が少しずつ増えていったりとか、あと、これも奇跡的だったんだけど、KEN THE 390が当時エイベックスで、エイベックスからエイベックスに客演のオファーとかくれて、それでOKになったというか。「JACKIN' 4 BEATS」とかやった時の次の月くらいに客演のオファーくれてから、そっからは矢継ぎ早だったから。小室(哲哉)さんがすぐオファーくれて。
── まあ、確かに。
SKY-HI:で、『FLOATIN' LAB』の企画出す頃には、もちろん最初からAmebreakに出すんじゃなくて、最初は会社に持って行って。「こういうのやろうと思っているんですけど、オールインワンでやって。……でも予算は無理ですよね?」って話とか。「だったらAmebreakにお願いしてみたいんですけど。」みたいな感じで。そしたら会社が「いいよ。」って。それのおかげで。だから相当、自由にやらせてもらったと思う。自由にやらせてもらった時に死ぬ気で頑張る、っていうのは、最初にお話した“地中の5年間”があるからというか。どんなに頑張ったって陽の目を見る方法がなかったら無理なんですけど、陽の目を見る方法が少しでもあれば、それが小さくてもがーっと広げてやる、っていう気持ちがあれば、なんとかなる。
── その行動力はすごいですよね。自分で企画書まで書いちゃうっていう。
SKY-HI:いやでも、それ言われて思ったんですけど、俺の普通は“する人”なんですよね。アメリカとか全員そうじゃないですか。しない人のほうがダサい。それこそジャスティン・ティンバーレイクもそうだし、ジャスティン・ビーバーだってレコード会社に持ち込むために自分で動画撮って。弾き語りの映像とかすごいよくできてるし。しかもそれ14、15歳でやってるわけだし。当時のティンバーレイクも20歳前半で、俺より年下だし。ジェイ・ジーは俺の年にはもう大金持ち。ただ1stアルバム出てないのに、っていう(笑)。ジェイ・ジーの1stは彼が27歳の時だから。ただ、その前にもう会社作って企画で大金持ち。だから、“そっち”が俺の中で普通っていうか。
── なるほど……。
SKY-HI:だからわかんないんですよね。「◯◯をやりたい」っていうのを言うだけの歌手っていうのが。これ、ディスってるんじゃなくて、ディスるつもりは毛頭ないんです。ただ、感覚的にわからない。俺は、やれることあるんだったら動くだろうし、やれることがないんだったら言わないし思わない。だから、なんかその。わかんないんですよね……うん。
── そういえば『FLOATIN' LAB』の企画進行中に、(SKY-HIのニコ生などでもおなじみ)エイベックスの“マシュマロちゃん”に、「日高くんが面白そうなことしてるね。」って訊ねたら、「あれ、日高が自分で動いてやってる企画なので、私たちもまだ、すべてを把握しきれていないんです。」って言ってたのを思い出しましたよ。
SKY-HI:(笑)。同い年なんですよ、彼女と。
── 同級生といえば、数年前までBARKSの媒体担当をしてくれていた(エイベックスの)Zさんとは同級生なんですね。
SKY-HI:そう。同級生ですね。中学、高校、大学一緒。一緒過ぎるんですよ(笑)。
── ですよね。じゃあこれはいつか、日高くんにインタビューする時にZさんに同席してもらい、学生時代の日高光啓について横から語ってもらったりする企画を立てないと、ですね。
SKY-HI:あはは(爆笑)。ヤバい。面白そうですね。いやいや、でもそれ、俺が相当頑張らないと。掘り下げて面白い人に俺がならないといけないですもんね。「あの人、掘り下げたい!」って世の中が思うような。『ウチくる』とかに呼ばれるような人に俺がならないと成立しないですからね。頑張らないと……Zのために(笑)。
── すみません。話、脱線させちゃったので、まもなくスタートするツアーの話まで戻します。ソロツアー、やれるって決まった時の心境っていかがでした?
SKY-HI:いや、それも、一発逆転みたいな成立というよりは、階段の中で、でしたね。『FLOATIN' LAB』の企画書出した時には想定していたことだったから。……その、ゴールは何かっていったら、ソロ名義の作品を出して、それに伴うライブだったりをやって、その先にもいろいろあるんですけど、それは追々として(笑)。先の話は置いておいて、そこに何かしらの目標があったとして、いきなりそれって無理じゃないですか。いきなりソロがエイベックスから出て、ライブやって……というのは成立するはずがないと思って。エイベックスがSKY-HIをやるにあたって、ビジネスにならないといけないな、と。だったらやっぱり他社だったり……結果的に自分がレーベル作っちゃったのはもう、結果論で(笑)。自分とこじゃなくてもよかったから、どっかでインディーズでやって、それである程度の結果が残せたら、エイベックスでやれるかな! って。
── あー、なるほど。実績を積み上げていくわけだ。
SKY-HI:別にエイベックスの社員さんにも「SKY-HI、やりたい」って思ってくれる人はできたというか。それこそ「96 Bars」とか「JACKIN' 4 BEATS」とか……正確に言うとイリーガルですけど、そういうの聴いて「やりたい」って思ってくれる人ができた。で、メジャーレーベルが会社的に「これやりたい」って思ってくれるための動機付けのスタートが『FLOATIN' LAB』で、どうせやるならこうやってああやって……って創意工夫にその後行く、っていうか。だから「『FLOATIN' LAB』がある程度の枚数行くぞ」ってなった時に、じゃあリリースパーティーはここで絶対やりたいってなって。なんとか軒並みちゃんと成立を繰り返していけたから、もうリリパ……2012年6月の『FLOATIN' LAB』リリースパーティーやってる最中……もっと言ったら、「6月のリリパにもある程度の人数が入ります」ってわかった時点で、次はソロでワンマンツアーできるな、って。やる理由ができたから。だから、その時に「やりたい」ってか「やれそうだ」って思って。で、賛同してくれるスタッフさんとかと少しずつ話を詰めながら、いざ天王山!っていう日が一日あって。そこでマル決して、じゃあスタートさせますよってなったので、なんかこう……うん、すごい「よし!」って感じはあるけど、感覚としては、「いいバース書けたなぁ」っていう日と同じ状態ですね。
── 話を聴いていて、日高くんは実業家としてもイケるんじゃないかと。もはや事業計画ですよね。
SKY-HI:(笑)。だから、それ、また戻るけど、ジェイ・ジーは実業家なわけで。有名なジェイ・ジーの言葉で、“I'm not a businessman, I'm a business, man.”っていうのがあって。「俺はビジネスマンじゃないよ、俺自体がビジネスだ」っていうのがあったりするんですけど、それですよね。それはやっぱ影響受けたし、衝撃だったし。周りはそういう人多いですよね。周りの人も含めて、自分で考えて何かやれてない人はかっこ悪いっていう風潮があるところにしか人間関係がないから。ダンサーでもそうですよ。仲いいダンサーは自主公演とか自分たちでしてるし、会社とか作っちゃったりしてるし。そのほうが時代の流れも込みで、イケてるアーティストのあり方かなって感じがしますね。
── 確かに。
SKY-HI:逆に捉えると、すごいこう、スキルが何かしらに特化していたとして、それの生かし方が丸投げだったら、あまりこう、魅力感じないかなって。それの生かす方法まで自分で考えている人のほうが、個人的にはイケてると思う。だって、三浦大知とかなんて、圧倒的なスキルを持ちながら、ちゃんとプラン立てて自分でやってる。だから、あんまりこう、三浦大知に“天才”って言葉、申し訳なくて使えないですよ。ちゃんと自分でプラン立てて考えて努力しているのに、“天賦の才で”なんて言えないでしょ?
── 確かに大知くんは天才っていうより秀才という言葉のほうが……。
SKY-HI:ていうほうが、彼にとっての賛辞として正しいんじゃないかってね。「こんなに、こんなに本気でやれている人に対して、天才なんて失礼だ!」みたいな気持ちになっちゃう(笑)
── 最初からなんでもできるかのようなね。
SKY-HI:うん。そうじゃないですからね。ちゃんとやってるからだもん。そういう感じはほんとしますね。そういう……あ、それこそ、KEITAくんとかも、話してて楽しいのは、自分で考えている人だからだし。有名無名問わず、考えている人は楽しいし、考えれていない人と話すきっかけはそんなにないし。それこそやっぱ(『FLOATIN' LAB』で一緒にやった)みんなそうですよ。ひとりもいないと思いますよ。その、なんか、人任せな人(笑)。この中にいろんな人いるけど、みんな自分で自分のこと考えてるし。
── 今、自分の中で何に驚いているかって、大知くんとKEITAくんの名前、出たじゃないですか。今回、日高くんのインタビューしてますけど、その前に大知くんとKEITAくんのインタビューやったんですよ。
SKY-HI:あっはっはっは(爆笑) マジっすか! ちょうど階段ですよ。大知1歳下、俺、KEITAくん1歳上。……奇しくも、かもしれないですけど、奇しくもというかなんかあれですけど、一番刺激をくれる同世代がたまたまソロシンガーという。ラッパーも友だちは多いし、刺激はいろんな人にもらっているんですけど、特になんかやっぱ、三浦大知とか観ている時の、気持ちの昂り方。ああいう大知くんとかKEITAくんとかの観てる時の、なんでしょうね。いろいろ。ジェラシーも込みだと思うんですよ。あの感覚は、あそこら辺に一番感じる。
── でも、私は、あのふたりとかも観てますけど、日高くんにも同じものを感じます。だから今日、インタビューしているんです。すごい、オーラなのか。
SKY-HI:気恥ずかしい(笑)
── 根本には自分で努力して、それを積み重ね続けている人たちだっていう共通点はあると思うんです。ただ、こう、話していたり、ステージ観たり、作品聴いたりして感じ取れるものがどこか似てる。
SKY-HI:なんなんでしょ。……全員、どこかしら自信家だってのはありますけどね(笑)。根拠がこう、どっかにあっての、みたいな。
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