【特別インタビュー】杉山清貴、本当に自由な気持ちで自分が歌いたいことを素直に歌った30枚目のシングル「夢を見たのさ」
3年振り、30枚目のシングル「夢を見たのさ」を1月23日にリリース。このシングルでは、レコード時代からmp3時代まで、自分の色をどんどん濃くしながら音楽シーンを生きている杉山清貴にしか生み出せない、円熟の歌声とサウンドを構築している。特にタイトル曲は、音数を極力減らし、その歌声の奥にある叙情をクローズアップした大人のラブソング。経験から生み出される、抜群の表現力でジンワリ染みる作品に仕上がっている。
■30周年を一つの区切りとして考えたとき
■本当にやりたかった音を出して行かなければと
――今年でデビュー30周年ということですが、実感はありますか?
杉山清貴(以下、杉山):ないです(笑)。自分の年齢を考えれば、そのくらいの月日は経ったのかなって思いますが、振り返って30年も経ったのかという感じはないですね。やっぱりずっと続けているので、一つの区切りというのもないですしね。まぁ、ただ30年っていうのは長いですけどね。
――音楽業界の30年と考えると激動の30年ですよ。
杉山:レコードからカセット、CD、そして今……アイテムとしては全部通ってますからね。スタジオの機材も48チャンネルの大きなコンソールから始まって、Protoolsへと、どんどんコンピューター化されるのも全部体験していますし、そう思うとめまぐるしいですね。
――今作の「夢を見たのさ」は3年ぶりのシングルですが、聴いたときの印象がすごくローファイですよね。これはあえてですか?
杉山:こういう音って、世の中の流れの中に軽くは組み込んでおかなければという思いはあります。ただデジタルでパパッと録って行くと、奥行き感が見えない寂しさっていうのがあるんですよ。僕は家でいつもレコードを聴いてるんです。だから、聴いている音が常にアナログなので、自分の作品だけパキーンって感じの音になっちゃうのはどうなのかなっていうのもあって。基本的に、自分のバンドでやるときは生演奏は外せないですしね。
――空気から音が伝わって来るようなこういうものはあって欲しいですよね。聴いていてもすごく落ち着きます。楽器を弾いている人のタッチまで伝わってきますね。
杉山:今回、編成も少ないですから、余計そういう感じがするんだと思います。ここ5~6年前まではアナログを回してたんですよ。ギリギリまで24chのマルチテープを回して録れる限り録って、それ以上録れなくなったらProtoolsで録るっていうことをずっとやってたんです。でもさすがにマルチテープがなくなり。今回のシングルも、そういうことを一緒にやってきたエンジニアさんなので、エンジニアの方もローファイ感っていうのは気にしてたと思いますね。
――久々のシングルで目指したのは?
杉山:30周年というところで、一つの区切りとして考えたときに、もうボチボチ本当にやりたかった音を惜しげもなく出して行かなければと。老い先も短いなと思いまして(笑)。若い頃っていうのは、周りの意見も取り入れながらとか、時代背景を考えながら、今これをやらないほうがいいのかなとか、そういうことも考えてやってきたんですね。でも、もうボチボチ、悔いのないようなものを作らなきゃなと。本当はこうしたかったんだけどっていう作品は作りたくないというのを第一前提で考えて曲を作り始めて。
――本当にやりたかった音って?
杉山:やっぱり、10代にハマってたものって、今でも抜けられないんですね。
――オーティス・レディング、お好きでしたよね。
杉山:うん。オーティスも大好きだし、R&Bとかソウルとか。ウエストコーストとかもね。ドゥービー・ブラザーズ、イーグルス、サンタナ。日本だと、山下達郎さん。そういう時代に「音楽ってカッコいいな」って影響を受けたものを引きずっていきながらも、デビューして音楽活動を始めると、そういうものじゃなくなっていくんですよね。でも、もうボチボチ、そうやって昔ハマっていて、自分の中にあるものをちゃんと出して、紡いで残していけたらいいかなぁと。今までは、「新しい作品出しました。今はこんなのやってます。聴いてください」って感じだったんだけど、「もうこれが俺なんです!」っていう世代に入ってきてるのかなって。そういうものを作りたいなと思っていますね。
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