【インタビュー】flumpool、新作『experience』に宿る経験から導き出した答え「うわべの部分をすくった音楽はもう要らない」

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flumpoolが2年ぶりとなるニューアルバム『experience』を12月12日にリリース。この2年間の中で“経験”し、考え、導き出した彼らの答えや想いが、一つ一つの楽曲に昇華され、力強く鳴っている渾身の一枚だ。来年2013年、1月には横浜アリーナと大阪城ホールでのアリーナ4DAYSも敢行。音楽シーンが“冬の時代”にあっても、全国の各会場を満杯にし、多くの人に愛されているflumpool。そんな彼らの魅力とは? アルバム・インタビューに加え、バンドに対する自己分析もしてもらった。

――聴き応えのあるアルバムができましたね。ご自分達の手応えはいかがですか?

山村隆太(Vo):やっぱり、今一番の自信作です。もちろんこれまでのアルバムも精一杯作ってきたんですけど、本当に、これは今の僕ら自身なんですよ。それ以上でもそれ以下でもない。背伸びも何もなく、この2年間の中で僕らが感じたこと、思ったことを“君に伝えたいことがある”っていう想いで作ったアルバムなので、今一番伝えたい作品になりましたね。

尼川元気(B):ツアーをやりながら作っていったので、バンド感みたいなものは今まで以上にすごく出た作品になったなと思います。

小倉誠司(Dr):今回アルバムの取材を受けてて、「これってライブのセットリストみたいだね」って言われたことがあったんですけど、実際にツアーを廻りながらこのアルバムを完成させていったので、そういうライブモードが曲や曲順にも自然と表れたのかなって。だから、ライブをずっとやっていたのが本当にデカイと思いますし、自分の中でも手応えはありますね。

阪井一生(G):2年間という中で作っていって、今までこれだけ時間をかけられたことはなかったので、曲も納得いくまで作れたし、アレンジも音も今まで以上にこだわれたし。だから、どの曲がシングルになってもいいぐらいの気持ちで1曲1曲に挑めて、本当に自信作になりましたし、いいアルバムができたなと思っています。

――今回、アルバムとしては2年ぶりのリリースになりますけど、インターバルが空いたのは何か理由があったんですか?

隆太:これまで1年スパンで出してきて、その流れで去年も今頃、アルバムを作ろうっていう話があったんですよ。でも震災があって、当たり前のことが当たり前じゃない時代になって、リスナーの意識も変わったと思うんですね。うわべの部分をすくった音楽はもう要らないというか。そんな中、僕らはツアーを廻っていたんですけど、じゃあ震災後の今、自分達は自信を持って音楽をできるのかって言ったら、まだ整理が付いていなかった。で、だったらもう1回ツアーを廻って、人と対峙して、“これが僕らの音楽です”って胸張って届けられる作品を、まずは1曲ずつ作っていくべきなんじゃないかなって。それでもう1度ツアーを廻ることにしたんですよね。

――そのツアーの中で、何かが見えてきた。

隆太:そうですね。今この時代に伝えたいメッセージがしっかり固まった気がします。“もっと一人一人が強くなろうぜ”“もっと自分が思ったこと感じたことを大切にしようぜ”っていう。それは「Because... I am」っていう曲で歌ってるんですけど。

――「Because... I am」はシングルにもなってますけど、“生まれてごめん これが僕です”っていうフレーズを最初に聴いた時は衝撃的でした。

隆太:あぁ……実際、賛否両論はありましたね。それまでのflumpoolはどちらかと言うと優しくソフトで、悪い意味でみんながまんべんなくいいと思ってくれるような曲を歌うイメージがあったと思うんです。だから“こういう曲は受け入れられない”って言う人もいましたし。でも、僕らはポップスの中心でありたいと思っていて、目指しているのもそこなんですよね。で、ポップスの中心を目指すには、もっと本質的な部分で人を動かせる音楽じゃないとダメだと思うんです。ちょっと話が飛びますけど、前にレディー・ガガが太ったっていうニュースがあったじゃないですか? 僕が感動したのは、そのあとにブログで、彼女は太った下着姿の写真をアップして、“そんな自分にも誇りを持つべきだ”って書いてたんですよ。それは誰のために言ってる言葉でもなく、自分の思ったことを書いてるだけだったんですけど、それも一つのメッセージだと思ったんですよね。で、そういう音楽もあると思うんです。僕らは今まで“私とあなた”っていうメッセージを出してたけど、“僕らはこうです”っていうメッセージも、それは聴く人にとって力や勇気になるんじゃないかなって。

――「Because... I am」はまさしくそれを体現できた曲ですよね。で……じゃあアルバムの制作は、「Because……I am」を軸に、動き出していったんですか?

隆太:そうですね。だから今回「Because... I am」が7曲目……アルバムの真ん中っていう、ヘソの部分にもなっているんですけど。

――全体の印象としては、さっき元気さんや誠司さんも言ってたように、すごくライブ感の強い一枚になってるなと。「イイじゃない?」なんて“これはライブ・バージョンです”って言っても納得するほどライブ感満載だし。

一生:そうですね。「イイじゃない?」はいつもと違う作り方をしたんですよ。いつもはメロディを先に考えて作っていくんですけど、これはまず全体像を考えて、アレンジをガッチリ形にしてからメロディを乗せていったんです。だから勢いで行くようなところがあって、実際、ライブ感あふれる曲になったと思いますね。

――あと、新しい要素もいろいろ入っていて。例えば「傘の下で君は…」とかは今までにないタイプの曲だったり。

誠司:そうですね。今までは打ち込みだったら打ち込みだけ、生ドラムだったら生ドラムだけっていう感じだったんですけど、「傘の下で君は…」は生ドラムと打ち込みを融合させてるんです。で、こういう人間っぽさとエレクトロの融合っていうのは、今までやったことのないチャレンジだったので、flumpoolの新しい面が出たと思います。

――他に、自分達的に“これは新しい!”と思うものは?

元気:やっぱり一番新しいのは「36℃」ですね。これは隆太が曲も書いているので。

――あぁ、確かに。隆太さん、この曲で歌詞のみならず曲も書こうと思った理由は?

隆太:ライブの中でこういう曲がほしかったので。今年のツアーのラストで「どんな未来にも愛はある」っていう曲をやってたんですけど、それは広い世界で大きな愛を届ける曲だと思うんですね。でもそういう曲があるとしたら、逆に狭い世界というか、1対1で深い愛情を届けたくなるものなんですよ、ライブをやってると自然に。で「どんな未来~」は震災後に作った曲なので、それがこの2年の始まりだとしたら、そこから「36℃」に向かっていく……ライブのオープニングでたくさんの人を前にバン!と始まっても、最後は一人の人に向かっていきたいっていう気持ちを、アルバムの曲順でも表してるんです。

――なるほど。そういう話を聞いてても、本当に今作はライブが色濃く反映してるんだなと。やっぱりそれだけこの2年間で廻ったツアーの経験は大きかったとも言えるんでしょうね?

隆太:そうですね。まぁツアーもそうですし、この2年間というのは日本にとってもみんなにとっても、いろんな意味で大きかったと思うんですよ。辛いこと苦しいことを経験して、僕らも今までで一番いろんなことを考えた。でも今、それを次につなげていかなきゃいけないし、大変だったことも“いい経験だったね”って言えるのが、“経験”という言葉のポジティブな部分だと思うんです。だから、このアルバム・タイトルにはそういうポジティブな想いが込めてあるんですよね。

――うん。この2年間の経験がギュッと詰まった1曲1曲を聴いた後、改めて“experience”という文字を見た時、すごく説得力のあるタイトルだなと思いました。ところで……経験と言えば、flumpoolは他の人達が経験できないようなこともいろいろ経験していると思うんです。ライブだけを見ても、例えばデビュー1年で武道館2DAYSを成功させたり、アリーナも即日完売させてしまったり。来年(2013年)年明けにはアリーナ4DAYSもありますよね。そこで、なぜflumpoolはこの時代に全国の各会場を満杯にできるのか、ちょっと自己分析していただきたいなと。

一生:えぇぇ!? そんなの自分じゃわからないですよ(笑)。

元気:宣伝力(笑)。

――いやマジメな話、今はリスナーも耳や目が肥えてるから、宣伝だけじゃアリーナは埋まらないし、ましてや4DAYSなんて、それだけ支持してくれる人が多くないと、企画すら持ち上がらないと思うんです。

誠司:まぁ正直、自分ではわからないですけど、僕がflumpoolでいいなと思うのは、来てくれるお客さんたちが“ライブ自体初めて”っていう人が多いんですよね。ライブに初めて来て、ライブってこんなに楽しいんだ!?って思ってくれて、また来てくれるのも嬉しいですし、逆に、僕らのライブがきっかけで他のライブに行くようになるっていうのも僕はありがたいことだと思ってるんです。今、音楽が氷河期と言われている中で、それが広がっていくと、シーン全体の活性化にもなりますから。だから、それがもしかしたら僕らの魅力なのかもしれないなって。

一生:あとは、ギャップですかね? 僕ら、ライブではいろいろやっているので(笑)。

隆太:うん。flumpoolってわりとスマートなバンドって言われてますけど、ライブだと泥臭さとか人間臭さがあって、そこがいいと思って応援してくれてる人が多いんじゃないかなって。でもね、それは今までのflumpoolの魅力であって、これからのflumpoolはそれじゃいけないと思ってるんです。

――というのは?

隆太:バンドとしてみんなで支え合っているのが今までの魅力の一つだとしたら、これからは個々が自立して、一人一人が明確に伝えたいことを持ってライブで伝えていく。その上で支え合いだったり、仲間を大切にできるっていうのがいいなと思ってるんです。そうすることで、バンド全体もより大きく成長していけると思いますし。

――じゃあ年明けのアリーナも、そういう姿勢で。

隆太:そうですね。で、今度のアリーナはこの2年間の集大成になると思っているので、説得力のあるライブにしたいですし、お客さんもきっと、遠くから来てくれる人もいると思うんですよね。なので、観に来たことを絶対後悔させないライブにしようと思ってます。

元気:頑張ります!

取材・文●赤木まみ

New Album
『experience』
2012年12月12日発売
【コレクターズエディション】
AZZS-11 ¥4,500(税込)
※3万セット完全予約限定盤。LIVE DVD『5th Tour Live 完全版』+100ページアートブック
【DVD付初回限定盤】
AZZS-12 ¥3,300(税込)
※DVD:『5th tour 6.24 Live & Documentary』(約120分収録)
【通常盤】
AZCS-1020 ¥2,800(税込)

◆祝!! レコ発LIVE flumpool in Shibuya eggman!!!
イベントスペシャルページ www.flumpool.jp/sp/121212live/
・6元生中継 配信サイト
ニコニコ動画、YouTube、USTREAM【AMU-STREAM】
アメーバピグ、LISMO WAVE、spaceshowertv.com
・中継スタート日時 12月12日(水)19:00~ ※中継終了予定19:40

横浜・大阪でのスペシャル4Days Live開催決定!
<flumpool Special Live 2013“experience”>
◆横浜アリーナ
2013年1月11日(金)開場:17:30 開演:18:30
2013年1月12日(土)開場:16:30 開演:17:30 
【問い合わせ】:キョードー横浜 045-671-9911(月~土10:00~18:00)
◆大阪城ホール
2013年1月16日(水)開場:17:30 開演:18:30
2013年1月17日(木)開場:17:30 開演:18:30 
【問い合わせ】:キョードーインフォメーション06-7732-8888(全日10:00~19:00)
★一般発売日(横浜・大阪 共通)】:2012年12月15日(土)

◆flumpool オフィシャルサイト
◆Youtube A-Sketchオフィシャルチャンネル
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