問答無用。説明不要。まさにグリーン・デイ然とした必殺作『ウノ!』

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いよいよ発売が間近に近付いてきたグリーン・デイの新作アルバム『ウノ!』。2009年の春にリリースされた『21世紀のブレイクダウン』以来、約3年4ヵ月ぶりのオリジナル作品ということになるが、耳の早い読者はすでにご存じのとおり、今回の作品は『ウノ!』『ドス!』(11月14日発売)、そして『トレ!』(2013年1月16日発売)と題された3部作アルバムの第1弾にあたるもの。すでに9月19日の深夜からは、アルバムに収録されている全曲が期間限定でストリーミング公開されていたりもする(http://noize.tv/)。

◆グリーン・デイ画像

僕は9月上旬のある日、この『ウノ!』の全貌を把握するべく、都内のレコード会社を訪問。発売日まで関係者にも配布されないという門外不出のアルバム音源を爆音で試聴させてもらってきた。通常、こうした場で未知の音源を試聴する際には、そこでの記憶だけが記事を書くうえでの“生の資料”ということになるわけで、スピーカーから聴こえてくる音に全神経を集中させながら、作品を解くうえでのキーワードとなりそうなものをひとつでも多くメモしておこうと努めるもの。しかし同日の僕は、3曲目の「カーペ・ディエム」を聴き終えたあたりでノートにあれこれ書きつけることを放棄してしまった。何故か? 気が付いてみれば、“アッパーなポップ・チューン”とか“切れ味のいい疾走感のあるリフ”とか“一瞬でグリーン・デイとわかる曲”といった、いわば聴く前からあらかじめわかっていたはずの、当然のことばかりを書き並べていたからだ。

しかもなんだか、初めて聴くような気がしない曲があまりにも多いのだ。そう感じたのも実は当然のことで、アルバムの幕開けを飾る「ニュークリア・ファミリー」をはじめ、去る8月16日に東京SHIBUYA-AX公演の際に出し惜しみなく先行披露されていた楽曲たちが、ずらりとそこにラインナップされていたからだ。同公演のセットリストと照らし合わせながら改めてきちんと数えてみると、ワンコイン・シングルとして先行発売されていた「オー・ラヴ!」も含め、このアルバムから実に8曲ものナンバーがあの夜に演奏されていたことが判明。それらの曲についてある種の既視感ならぬ既聴感をおぼえていた僕の記憶回路は、どうやらまだまだポンコツにはなっていないようだ。

いや、でも、逆に言うと、仮にあのライヴを目撃できていなかったとしても、僕は同じように感じることになったのかもしれない。実際、あの公演当日も、正真正銘の初遭遇だった「カーペ・ディエム」や「レット・ユアセルフ・ゴー」に、長年親しんできた楽曲であるかのような愛着をおぼえたものだ。そんなふうに感じたのは、たとえばそれらの楽曲からラモーンズやチープ・トリックを思わせる匂いが発されていたこととも無関係ではないだろう。が、あの夜にも改めて痛感させられたのは、そうした先人たちに通ずる要素というのは、今や当然のごとく“グリーン・デイらしさ”という言葉のなかに完全消化されているということ。つまり、わざわざそうしてルーツや歴史に置き換えて考えるよりも、まっすぐにこのバンドらしさの表れと解釈するほうが理にかなっているということだった。

そうした意味において、この『ウノ!』には、まさにグリーン・デイ然とした楽曲ばかりが詰め込まれている。全12曲、トータル42分未満。日本盤にはこれに「レット・ユアセルフ・ゴー」のライヴ・ヴァージョンがボーナス・トラックとして追加収録されているが、それでも合計45分と少々。そんな単純な事実が伝えてくれる通り、この『ウノ!』は、ドラマティックな組曲的展開やストーリー性とは無縁のものであり、誰もがこのバンドの名前を聞いたときにまず連想する、快活で、体感スピードが速くて、切れ味がシャープで、甘酸っぱさと炸裂感とを同時に持ち合わせた、ポップなロック・チューン満載の1枚に仕上げられている。プロデューサーはロブ・カヴァロ。ちなみに今作の完成に伴うオフィシャル・インタビューのなかで、メンバーたちは次のように語っている。

「俺たちはこれまでになく多作でクリエイティヴな時期に差し掛かっている。これらの曲たちは、今まで作ってきたなかでも最高のものばかりだし、次から次へととめどなく曲が出てくるようなアルバムになっている。1枚のアルバムを作る代わりに、俺たちは3枚のアルバムからなる三部作を作った。どの曲もグリーン・デイが持つパワーとエネルギーを、あらゆる心情面に訴えかけるものになっている。もう自分たちでも自分たち自身を止められないんだ。最高傑作へまっしぐらさ!」

「今回のアルバムこそが最高傑作だ」なんてのは、言うまでもなく新作プロモーションに際しての常套句ではある。過去、こういった言葉に必要以上に踊らされた経験のある読者もきっといるだろう。だが、アルバム全体を通して聴き終えたとき、この言葉に一切の誇大表現が含まれていないことを僕は確信できた。蛇足ながら、試聴時のわずかなメモのなかに、僕は「新曲ばかりのベスト・アルバム」などと書き残していたりもする。初めて聴いたその瞬間から新鮮さと愛着の両方を味わわせてくれるこの『ウノ!』は、まさにこのバンドがクリエイティヴィティの枯渇とは無縁であることを実証している。

長きにわたりこのバンドを愛してきた人たちにも、これから初めて彼らの音に触れようとしている人たちにも、さらにはずっと“悪ガキのパンク・ロックになんか用はない”と思っていた人たちにも、間違いなく響く何かがここにはあるはずだ。そしてこの作品に触れたなら、きっと次の瞬間には“次の2枚”の登場が待ち遠しくなってくるに違いない。

文:増田勇一



グリーン・デイ『ウノ!』
9月26日発売
WPCR-14640 \2,580
1.ニュークリア・ファミリー
2.ステイ・ザ・ナイト
3.カーペ・ディエム
4.レット・ユアセルフ・ゴー
5.キル・ザ・ディージェイ
6.フェル・フォー・ユー
7.ロス・オブ・コントロール
8.トラブルメイカー
9.エンジェル・ブルー
10.スウィート・シックスティーン
11.ラスティ・ジェイムス
12.オー・ラヴ
13.レット・ユアセルフ・ゴー(ライヴ)

『ウノ!』PCアルバム・バンドルDeluxe Version
9月26日配信開始
・オーディオ12曲+4曲のミュージック・ビデオ収録

『ウノ!』PCアルバム・バンドルStandard Version
9月26日配信開始
・オーディオ12曲収録

『ウノ!』スマートフォン・アルバム・バンドルStandard Version
9月26日配信開始
・オーディオ12曲収録

「ニュークリア・ファミリー」
9月26日配信スタート
着うた(R)、着うたフル(R)9

iTunes:http://itunes.apple.com/jp/artist/green-day/id954266
レコチョク:http://wmg-jp.com/w/m/321
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