ボカロのエディットをCubase上で可能にする「VOCALOID Editor for Cubase」が今冬登場
ヤマハは、DAWソフトウェア「Cubase」に歌声合成ソフトウェア「VOCALOID」の機能を組み込むソフトウェア「VOCALOID Editor for Cubase」を今冬発売する。
「VOCALOID Editor for Cubase」は、「VOCALOID」を「Cubase」で使用できるようにするソフトウェア。これにより、「Cubase」の豊富な機能を使っての編集や、歌声にエフェクトなどの効果を加えることが可能となる。「VOCALOID」ユーザーの制作の自由度が高まるだけでなく、「Cubase」ユーザーにとっても歌の制作や歌のアレンジが容易になり、レコーディングの仮歌づくりから発表する楽曲の仕上げまで、幅広く活用可能。また、本格的な音楽制作を行っていなかったクリエーターにとっても強力なツールとなるとしている。
使用するには、別売の「VOCALOID3」または「VOCALOID2」対応の歌声ライブラリおよびCubaseシリーズのフラッグシップモデル「Cubase 6.5」(Windows版のみ)が必要。残念ながら下位グレードのCubase Artist、Cubase Elements、Cubase AIは対応しない。
9月3日に開催された発表会では、DAWソフトとVOCALOID Editorを使ったこれまでの制作方法と比べ、Cubaseと「VOCALOID Editor for Cubase」を使った制作では、かかる手間が大きく軽減できることがアピールされた。
たとえば、歌詞の手直しや、オケの尺や構成の変更のたびに、DAWとVOCALOID Editor間で何度もファイルのやりとりを行う必要があったわけだが、「VOCALOID Editor for Cubase」はCubase本体に統合されているため、ファイルの書き出しなどは不要。シンセ音で打ち込んだMIDIトラックを切り替えて、すぐVOCALOIDに歌わせることが可能だ。VSTインストゥルメントのプラグインと同様にVOCALOIDをMIDIトラックにアサインすれば、Cubase内に従来のVOCALOID Editorと同様のウィンドウが起動するという仕組みのため、操作の習得にも時間はかからないはず。もちろん、VOCALOIDのトラックへのエフェクト付加は一般的なソフトシンセと同じようにできるし、エフェクトをかけたままVOCALOIDのトラックの編集が行えることも紹介された。
また、ノートの入力、編集はCubase側のキーエディター(ピアノロール)なども利用可能。使い慣れたCubaseのエディタが使えることを歓迎するユーザーは多いだろう。統合されたVOCALOID EditorのウィンドウとCubase側のエディター双方の編集結果は、他方に即反映される。これはVOCALOID Editorのパラメーターであるベロシティやダイナミクス(Cubaseではエクスプレッション)についても同様だ。歌詞については、従来のVOCALOID Editor同様テキストの流し込みが可能。また、Cubaseのキーエディタでも各ノートの歌詞の確認が可能だが、入力についてはVOCALOID Editor側でのみ可能となっている。このほか、VOCALOID2とVOCALOID3のライブラリが使用可能なこと、VOCALOID EditorのVSQXファイルの読み込み、書き出しもCubaseのファイルメニューに追加されることなどが示された。
「VOCALOIDの父」と呼ばれるヤマハの剣持秀紀氏は、本製品で提供される環境について、従来のようにソフト間を行き来する必要がないことから「連携ではなく統合」と強調。「思考の妨げになることは排しクリエーション自体に集中していただきたい。それによって生まれてくる新しい音楽があるんじゃないか」とコメント。「UI、使い勝手面の大きな進化と自負している」「将来はもっともっと人間の声に近づけていきたい」とさらなるVOCALOIDの進化を約束。さらに「VOCALOID Editor for Cubase」には「ヤマハの本気がつまっている」とした。
「ヤマハの本気」がつまったこの製品。発売時期は今冬、できれば年内に出したいとのこと。価格はオープンプライスで、想定実売価格は1万円前後。VOCALOID3 Editorのユーザーには6,980円の優待販売が実施される(詳細は後日アナウンス)。
▲発表会冒頭ではVOCALOIDについて説明。VOCALOIDは「誰もがプロデューサーに」なれるソフトウェアと紹介。
▲ミュージシャンに加え、キャラクター好きや絵師と呼ばれるイラストを書く人も楽しめる、ユーザーが育ててきた文化と位置づけ。
▲ネット動画から同人イベント、キャラクター商品化などリアルへの広がりを見せていると分析。
▲楽曲制作環境としては、これまでは音楽制作ソフトウェアとVOCALOIDソフトウェアの両方を別々に使いこなす必要があったと紹介。
▲歌詞の修正、曲構成の見直しなどのたびに何度もファイルのやり取りが必要だったことで、楽曲制作への集中が削がれる場面があったと指摘。「VOCALOID Editor for Cubase」導入でCubaseの中ですべて行えるようになる。
▲「VOCALOID Editor for Cubase」を導入した環境では、VOCALOIDトラック用に「VOCALOID VST」というプラグインを挿入して作業。VSTのウィンドウ自体に操作をするとことろはなく、Cubase本体のメニューなどに各機能が追加される。
▲VOCALOID Editor(左)とキーエディター(右)のウィンドウ、それぞれで行った編集は即他方に反映される。選択したノート(音符)も色付けされるのでわかりやすい。
▲キーエディターではノートの音程とともに歌詞が確認可能。ノートの発音タイミングや長さの変更、分割といったDAWの従来の手法でエディットができる。リアルタイム入力ももちろん可能。
▲歌詞は1音1音TABキーで移動しながら入力する方法に加え、テキストの流し込みもVOCALOID3 Editor同様に行える。
▲シンガーの切り替えはVOCALOID Editorウィンドウの右上に用意。インストールされたライブラリがリストアップされる。
▲新たな制作環境をデモしたのは、Cubaseプロダクトスペシャリストの青木繁男氏(右)とyamaha+推進室Y2プロジェクト開発担当主管技師の剣持秀紀氏(左)。
▲発表会開場には「VOCALOID Editor for Cubase」導入済みの実機も展示。デモで披露された機能が実際に試せるようになっていた。
◆VOCALOID Editor for Cubase
価格:オープン
発売日:2012年冬発売予定
◆VOCALOID Editor for Cubase 製品詳細ページ
◆プレスリリース
◆ヤマハ
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