アルマカミニイト、険しく苦しかったワンマンライヴへの道のり
4月25日にシングル「茜」でデビューしたアルマカミニイトが、8月5日に初めてのワンマンライヴを渋谷Duo Music Exchangeで行った。ここまでの彼らの道のりを知らない人にとっては、いきなりメジャーシーンに登場し、渋谷Duo Music Exchangeを簡単に満員にしたように感じるかもしれないが、ここに至るまでには、積み重ねてきた日々の努力がある。
◆アルマカミニイト@渋谷Duo Music Exchange~拡大画像~
アルマカミニイトはペルー国籍、日系三世のエリックと、日本舞踊の師範でもある宗彦の二人で結成したヴォーカルユニットだ。不思議な響きのアーティスト名は、エリックの故郷・ペルーの言葉であるスペイン語。「魂」を意味する「Alma(アルマ)」と「小道」を意味する「caminito(カミニート)」をくっつけた造語だ。心を優しく包み込む「紙」と、日本と世界をつなぐ「糸」という日本語の音のダブルミーニングである。
▲宗彦 彼らは、2011年2月に開催された、アップフロントワークス主催のオーディション「第一回FOREST AWARD NEW FACE」で、共に特別賞を受賞。二人とも、もともとはソロヴォーカルとして音楽活動をしていたが、このオーディションをきっかけにヴォーカルユニットを結成することになった。ソロで唄っていたシンガーにとって、誰かと唄うことは実は難しい。二人は、アルマカミニイトとしてのグルーヴを生み出すため、2011年9月から、修行のようにストリートでのライヴ活動をスタートさせた。実は筆者は、彼らがストリートライヴ活動を始めて二日目の一日に同行した。代々木公園から新大久保、最後は井の頭公園という行程だった。二人ともとても気さくで、移動しながらも、それぞれの音楽的なルーツを聞かせてくれた。
エリックはペルーから単身日本にやってきたにもかかわらず、日本語が堪能だ。独学で覚えたという根性がすごい。ペルーの日系社会では日本文化を大切にしていて、小さい頃から演歌に親しんでいたという。ワンマンライヴのソロコーナーでも、細川たかしの「望郷じょんから」を唄い、オーディエンスを圧倒した。
エリック「僕は小さい頃から演歌を聴いてきて、それがきっかけで日本に来ることになったから、それはすごい僕にとって大切な思い出でもあるし、今カラオケに行っても一人で演歌を唄います。大好きなジャンルなんですよ」
エリックは元々、演歌歌手になろうと思い、日本にやってきた。しかし、現在はJ-POPを唄っている。とにかく耳が良く、なんでもすぐにモノマネをしてしまう。ストリートライヴの移動中も、得意のモノマネでスタッフを笑わせていた。
宗彦は日舞の師範の免許を持っている。「どうして日舞から歌の道に?」。誰もが思うことだろう。宗彦は大学でも踊りを学んだが、踊りの世界以上に、音楽の世界に自分の居場所があると感じて唄うことを選んだ。踊りを習っていたと言うと、「お坊ちゃん育ちなの?」と思いがちだが、夢を叶えるためにたくさんのバイトを経験したハングリー精神の持ち主でもある。ワンマンライヴで唄った、浜田省吾の「MONEY」は、その当時、アルバイトに励む宗彦を勇気づけた曲と、MCでも語っていた。
▲エリック その時のストリートライヴは、まだ二人のグルーヴも確立しておらず、お互いが好きに唄っているという感じだった。お互いのスキルは高いが、まだ二人で唄うということを楽しめておらず、それぞれが人前で二人で唄うことに必死。息を合わせ、ハーモニーを生み出す手前の状態だった。代々木公園では場所が見つからず、ライヴを断念。新大久保ではK-POP好きの女性がたくさん足を止め、エリックが得意のバック転を披露したりと盛り上がった。しかし、井の頭公園では立ち止まるお客さんは2~3人がせいぜい。これはテンションが下がる……と思いきや、なんとその逆だった。お客さんがいないのを良いことに、二人がどんどん自由に音楽を楽しみはじめた。目の前にいる人に「何か唄ってほしい曲は?」とリクエストを募ったり、お互いの視線をしっかりと合わせながら、ハーモニーを奏でる場面が多くなってきた。二人で唄う楽しさに徐々に目覚める二人がそこにいた。
初期のそういうライヴ活動を見ている筆者にとって、先日のワンマンライヴで聴かせたハーモニーは、信じられない成長ぶりだった。ストリート時代から唄い込んできた2曲目の「Blue Horizon」や「青にのせて」は、別の楽曲かと思うほど、二人の声が溶け合っていた。途中、ゲストで登場した堀内孝雄に「このバンド、メチャクチャだね(笑)」と言わしめる幅の広い音楽性は、ストリート時代からいろんなジャンルのカバー曲をレパートリーにしてきたからだ。そして、どんなジャンルの楽曲でも、二人でハモるときはアルマカミニイト独自のハーモニーが生み出せるようになっていた。終演後、宗彦が、二人のハーモニーが生まれるまでのこんなエピソードを聴かせてくれた。
宗彦「僕自身、ずっと一人で唄ってただけだったので、ハモり自体やったことがなかったから最初は本当に大変だったんですよ。エリックと一緒に唄うことはいつもやってましたが、自分でピアノを買って練習しましたし。ハーモニーについては、まだ完璧にわかったわけじゃないんですけど、ずいぶん理解できるようになってきてますね。まだまだどこか合わせようとして合わせているけど、これが自然に自分の表現をしながら、合わせられるようになってきたら、その時やっと本当にアルマカミニイトになれるのかもしれない。そういう意味では、もうちょっと時間が必要かもしれない」
ライヴのMCでも「宗彦とは一緒にできない」とエリックから言われて凹んだという話を宗彦がしていたが、再度、エリックが「最初は本当に二人でやっていけるかってことも迷ってました」と続けた。
エリック「でも、宗彦も努力してハモりもできるようになって、僕も大好きだった演歌のクセがなくなってきて(笑)、J-POPも唄えるようになって。元々演歌歌手になろうと思って日本に来たわけだけど、日本に来てから夢がどんどん変化してるんですよ。10月24日には新しいシングルもリリースされるから、それまでに新曲も唄い込んで、もっともっと二人のグルーヴを作って行きたいですね」
最初は手探りではじめたアルマカミニイトの二人。しかし、見るたびに、アーティストとしてのポテンシャルの高さをこれでもかと見せつけてくれる。今回の初のワンマンライヴは、宗彦が言う「本物のアルマカミニイトになっていく」ために、最初の一歩を記した記念すべきライヴになった。
10月24日には2枚目のシングルとなる新曲がリリースとなる。どんどん強固になっていく、二人のグルーヴをこの新曲でも聴けるようになるだろう。
取材・文/大橋美貴子
◆アルマカミニイト オフィシャルサイト
◆アルマカミニイト@渋谷Duo Music Exchange~拡大画像~
アルマカミニイトはペルー国籍、日系三世のエリックと、日本舞踊の師範でもある宗彦の二人で結成したヴォーカルユニットだ。不思議な響きのアーティスト名は、エリックの故郷・ペルーの言葉であるスペイン語。「魂」を意味する「Alma(アルマ)」と「小道」を意味する「caminito(カミニート)」をくっつけた造語だ。心を優しく包み込む「紙」と、日本と世界をつなぐ「糸」という日本語の音のダブルミーニングである。
▲宗彦
エリックはペルーから単身日本にやってきたにもかかわらず、日本語が堪能だ。独学で覚えたという根性がすごい。ペルーの日系社会では日本文化を大切にしていて、小さい頃から演歌に親しんでいたという。ワンマンライヴのソロコーナーでも、細川たかしの「望郷じょんから」を唄い、オーディエンスを圧倒した。
エリック「僕は小さい頃から演歌を聴いてきて、それがきっかけで日本に来ることになったから、それはすごい僕にとって大切な思い出でもあるし、今カラオケに行っても一人で演歌を唄います。大好きなジャンルなんですよ」
エリックは元々、演歌歌手になろうと思い、日本にやってきた。しかし、現在はJ-POPを唄っている。とにかく耳が良く、なんでもすぐにモノマネをしてしまう。ストリートライヴの移動中も、得意のモノマネでスタッフを笑わせていた。
宗彦は日舞の師範の免許を持っている。「どうして日舞から歌の道に?」。誰もが思うことだろう。宗彦は大学でも踊りを学んだが、踊りの世界以上に、音楽の世界に自分の居場所があると感じて唄うことを選んだ。踊りを習っていたと言うと、「お坊ちゃん育ちなの?」と思いがちだが、夢を叶えるためにたくさんのバイトを経験したハングリー精神の持ち主でもある。ワンマンライヴで唄った、浜田省吾の「MONEY」は、その当時、アルバイトに励む宗彦を勇気づけた曲と、MCでも語っていた。
▲エリック
初期のそういうライヴ活動を見ている筆者にとって、先日のワンマンライヴで聴かせたハーモニーは、信じられない成長ぶりだった。ストリート時代から唄い込んできた2曲目の「Blue Horizon」や「青にのせて」は、別の楽曲かと思うほど、二人の声が溶け合っていた。途中、ゲストで登場した堀内孝雄に「このバンド、メチャクチャだね(笑)」と言わしめる幅の広い音楽性は、ストリート時代からいろんなジャンルのカバー曲をレパートリーにしてきたからだ。そして、どんなジャンルの楽曲でも、二人でハモるときはアルマカミニイト独自のハーモニーが生み出せるようになっていた。終演後、宗彦が、二人のハーモニーが生まれるまでのこんなエピソードを聴かせてくれた。
宗彦「僕自身、ずっと一人で唄ってただけだったので、ハモり自体やったことがなかったから最初は本当に大変だったんですよ。エリックと一緒に唄うことはいつもやってましたが、自分でピアノを買って練習しましたし。ハーモニーについては、まだ完璧にわかったわけじゃないんですけど、ずいぶん理解できるようになってきてますね。まだまだどこか合わせようとして合わせているけど、これが自然に自分の表現をしながら、合わせられるようになってきたら、その時やっと本当にアルマカミニイトになれるのかもしれない。そういう意味では、もうちょっと時間が必要かもしれない」
ライヴのMCでも「宗彦とは一緒にできない」とエリックから言われて凹んだという話を宗彦がしていたが、再度、エリックが「最初は本当に二人でやっていけるかってことも迷ってました」と続けた。
エリック「でも、宗彦も努力してハモりもできるようになって、僕も大好きだった演歌のクセがなくなってきて(笑)、J-POPも唄えるようになって。元々演歌歌手になろうと思って日本に来たわけだけど、日本に来てから夢がどんどん変化してるんですよ。10月24日には新しいシングルもリリースされるから、それまでに新曲も唄い込んで、もっともっと二人のグルーヴを作って行きたいですね」
最初は手探りではじめたアルマカミニイトの二人。しかし、見るたびに、アーティストとしてのポテンシャルの高さをこれでもかと見せつけてくれる。今回の初のワンマンライヴは、宗彦が言う「本物のアルマカミニイトになっていく」ために、最初の一歩を記した記念すべきライヴになった。
10月24日には2枚目のシングルとなる新曲がリリースとなる。どんどん強固になっていく、二人のグルーヴをこの新曲でも聴けるようになるだろう。
取材・文/大橋美貴子
◆アルマカミニイト オフィシャルサイト
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