やっぱり凄かった! 永遠のギター小僧スティーヴ・ルカサーの超絶パフォーマンス
TOTOの看板プレイヤーであり、世界中の膨大な数のヒットナンバーで華麗なギターを弾いてきた当代随一のセッションギタリスト、ルークことスティーヴ・ルカサー。TOTOの活動停止宣言で多くのファンを落胆させたものの、その後ソロアルバムの発表やツアー、多彩なプレイヤーとのセッションライヴなど精力的に活動していて、以前より表舞台に立つ機会が多くなっているのではないかと思えるほどだ。そのルカサーが、2010年に発表したソロアルバム『オールズ・ウェル・ザット・エンズ・ウェル』を引っ提げてのワールドツアー、その締めくくりに選んだのがこの日本だ。
◆スティーヴ・ルカサー、超絶パフォーマンス~拡大画像~
この日赤坂BLITZには、30~40代を中心に、10代と思われる若者まで幅広い層のオーディエンスがつめかけ、2階席には立ち見が出るほど。そんな熱気の立ち込めるステージには、巨体ドラマーのエリック・ヴァレンタイン、長身女性ベーシストのレニー・ジョーンズ、そしてキーボードのスティーヴ・ウェインガートの3人のメンバーがまず登場。そして彼らに導かれて登場したスティーヴ・ルカサー、存在感はやはり特別だ。そう広くはないBLITZなのに、まるで巨大なアリーナクラスのステージに登場したかのような雰囲気に一変させてしまった。
ライヴはアルバム『Candyman』の「Hero With a 1,000 Eyes」からスタート。ルークならではの粘りのある図太いサウンドで、疾走感あるリフが突き刺さってくる。ソロではテクニカルな高速ピッキングとよく伸びるトーンでの感情のこもった泣きがカッコいい。使っていたギターは、1月のNAMMショウで発表されたばかりのミュージックマンのLIII。曲によって、2ハムバッカーと2シングル1ハムバッカーの2本を使い分けていた。そして以前のような大掛かりなラックシステムではなく、足元にあるシンプルなペダルボードとの組み合わせで、以前より粒立ちがよくさらにパワフルなサウンドを生み出しているようだ。
ポップで豪快なロックチューンからスタートしたライヴだが、2曲目は『オールズ・ウェル・ザット・エンズ・ウェル』のブルージーなナンバー「Brody's」、そしてジミ・ヘンドリクスの「Up from the Skies」と続く。やはりソロのライヴとなると、影響を受けたビッグ・ギタリストに対するリスペクトを前面に押し出さないと気がすまないのがルーク。ジミヘンに関しては、ソロの途中に「Little Wing」や「Red House」のフレーズを織り込んでいたし、ジェフ・ベックっぽくアームとボリュームでフレーズを歌わせたり、ラリー・カールトンのようにジャジーで流麗なスケールでソロを弾いたりする場面も多々あった。スゴいのは、そうやっていろいろ取り入れてプレイしていても、単なるモノマネではなく、しっかり彼らしさが主張されていて、曲にも溶け込んでいること。ホントにすごいギタリストなんだということを改めて思い知らされた。
TOTOでもカヴァーしていたハービー・ハンコックの「Butterfly」や、変拍子がまるでTOTOの「Jake to The Bone」のような雰囲気の「Tumescent」(『オールズ・ウェル・ザット・エンズ・ウェル』収録)、そして唯一アコースティック・ギターに持ち替えてプレイされたTOTOの「Out of Love」など、TOTO絡みのナンバーも披露。中でも、オリジナルではアフリカ人のジャン・ミシェル・バイロンが歌った「Out of Love」では、曲が始まってしばらく、あれ、これはルークのどのアルバムの曲だったっけ? と思ってしまうほどで、この曲のメロウながらパワフル、ソウルフルなヴォーカルを見事にモノにしていたのには驚いた。サポートメンバーのコーラス・ハーモニーも荘厳で美しく、TOTOファンでなくても胸が熱くなったに違いない。
見どころの多かったライヴの中で、「Song for Jeff」もひとつのハイライトだった。名ドラマー、ジェフ・ポーカロが亡くなってからちょうど20年ということもあり、天を見上げてせつないメロディをプレイする姿からは、いつもより強い気持ちが伝わってくるようで、鳥肌モノの名演に会場は静まり返った。
アンコールでは、ジェフ・ベックの「The Pump」をプレイ。ここではまるでジェフ・ベックとヤン・ハマーのようなバトルをキーボードのスティーヴ・ウェインガートと繰り広げた。そして最後は、あのチャップリンの「Smile」でしっとりと締めくくった。
ブルースからジャズ、ハードロックまですべてを、ハイテクニックかつエモーショナルに弾きこなすスティーヴ・ルカサーのすごさが随所に詰まっていて、あっという間に感じた2時間だった。こうなると、やはりTOTOでのルークも見てみたくなるのだが、実はその可能性は十分にある。TOTOの昨年のツアーは、ALS闘病中のマイク・ポーカロ支援のための一時的な再結成とされていたが、今後もツアーは継続して行なうという。実際、もうこの夏からワールドツアーも組まれている。来日の予定はまだないが、いつも“日本のファンは特別だ”と口にしているルークだから、必ず来てくれるに違いない。TOTOとルークのアルバムを聴きながら、期待してその時を待とう。
スティーヴ・ルカサー ソロ来日公演 2012/4/11@赤坂BLITZ
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