[クロスビート編集部員リレー・コラム] 荒野編「R.E.M.」
R.E.M.が7月に4th「Lifes Rich Pageant」の25周年エディションをリリースした。これまでのリマスター盤と同様に、ファンの欲求に応える丁寧な装丁が、いかにもR.E.M.らしい。
連日曇り空のロンドンで録音したことが裏目に出て自他ともに認める陰気な作品になった3rd「Fables Of The Reconstruction」(85年)を踏まえ、続く「Lifes Rich Pageant」(86年)はインディアナ州のジョン・メレンキャンプが所有するスタジオで録音。プロデュースにはメレンキャンプの「Scarecrow」を手掛けたドン・ゲーマンが当たった。メンバーはヒット性など眼中になかったそうだが、マイク・ミルズの弁によれば「ゲーマンは違った」。それまでモゴモゴと不明瞭な歌い方を貫いていたマイケル・スタイプにはっきり言葉が伝わる歌唱をするよう指導し、アンサンブルに埋もれていたヴォーカルを前面へ押し出した。脆弱に聞こえたリズム・セクションも、ここで覚醒して一気にパワー・アップ。彼らは次作「Document」で初めて全米規模のブレイクを経験するが、その下地は「Lifes Rich Pageant」で出来上がっていた。
付録のデモ集「The Athens Demos」には、そうやって孵化する直前の録音を19曲収録。ポストパンクの匂いを多分に残したスカスカの演奏が、本編と対照的で興味深い。後年再録音する“Bad Day"や“All The Right Friends"の原形も収録。いずれも初期のR.E.M.らしい優れたギター・ポップだが、これらをアルバム収録候補から落とさねばならないほど、86 年当時のR.E.M.は創造性に溢れていたということだろう。
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