フー・ファイターズ、13万人の観衆が熱狂

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フー・ファイターズの英最大級の単独コンサートの様子を伝えるオフィシャルレポートが到着したので、ご紹介したい。

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「グレイトなロック・ショウが欲しい奴はいるか?」――4曲目「マイ・ヒーロー」までほぼノン・ストップでぶっちぎった後にデイヴ・グロールが発した問いに、6万5千の大観衆が「YES!」の3文字を力いっぱい投げ返した。ロンドンから約100キロ、歴史に残る数々の大コンサート(クイーン、デヴィッド・ボウイ、マイケル・ジャクソン、グリーン・デイ、エミネム他)を見守ってきた野外円形劇場の名門ミルトン・ケインズ・ボウル。全米、全英はもちろん世界12カ国で1位を記録した最新作『ウェイスティング・ライト』を引っ提げての欧州ツアーの英公演として、この会場でのコンサートチケット2日分を昨年秋に発売するや否や即時にソールド・アウトさせたフー・ファイターズ。2時間半にわたるロックンロール・マラソンで人々を存分に沸かせ、踊らせ、笑わせ、歌わせ、驚かせ、泣かせてみせた。

また、フー・ファイターズの最新シングル「ウォーク」がエンディング・テーマとして起用されている全米興行成績2週連続第1位の大ヒット話題作『マイティ・ソー』(http://www.mighty-thor.jp/)も偶然にも同じ週末に日本公開を迎え、大きな話題を呼んでいる。主人公のソーが挫折から立ち上がり、自らを再生し“神”として頂点に歩んでいくその姿は、大きな悲劇と挫折から立ち上がり、自らを再生し、アルバム+ツアーの実直な積み重ねでこのような巨大ステージを操る“神”的存在へと上り詰めた苦労人、リーダーのデイヴ・グロールのその姿とも重なり、映画の最後を一層印象的なものにしている。

話をライヴに戻そう。イベントの規模/チケット数で比較すれば、3年前のウェンブリー・スタジアム2公演(計17万人動員)に軍配が上がる。しかし、すり鉢型の形状でオール・スタンディングのこの会場は、近代的なスポーツ施設に較べ、臨場感とステージとの一体感が高い。その一種オールド・スクールな醍醐味は、デジタル技術に頼らずガレージで録音された『ウェイスティング・ライト』の原点回帰志向、そして彼らのクラシック・ロックへの愛情とも相性が抜群だ。スペシャル・ゲストとしてロジャー・テイラー(クイーン)、そして御大アリス・クーパーと、若き日のデイヴのヒーロー達が登板。マンモス・ライヴにしては珍しいほど映像やライト・ショウ、ド派手で目を奪う演出といった「仕掛け」が控えめだったのも、優れたバンドの熱演とオーディエンスこそ主役、という真理を改めて提示するものだろう。

初っ端からハイ・オクタンな演奏が爆発し、花道でヘッド・バングしながら青いギターをかきむしる「お祭り男」ことデイヴを、大観衆が総立ちと合唱で迎える。ほぼ全曲で花道を往復、ピットに降り、ステージの端まで出てアピール。驚異的なスタミナを振りまくデイヴと、惜しげなくヒット曲・人気曲を連打するバンドの馬力に、フィールドの熱は上昇しっぱなしだ。しかし、サポート奏者を含む6人が叩き出す音は、疾走する蒸気機関車ばりにパワフルで重い。鍛え抜かれた鋼のキレと王道な厚みを最後まで維持しつつ、グランジな陰りから豪快なパワー・ポップまで、完璧かつ安定した走りをみせていく。

中盤のハイライト「スタックト・アクターズ」では、花道の先=ミキシング設備の裏手に設置された第2ステージにデイヴが現れ、会場後方を煽りつつ、熾烈なハード・ロックを展開。「ベスト・オブ・ユー」のエピックかつエモーショナルなコーラスで盛り上がりは頂点に達し、演奏が終わっても合唱をやめない観客を称え、感謝する意味で、ビールを一気飲みしてみせるデイヴに爆笑と喝采が注がれた。

FF節真骨頂とも言える「オール・マイ・ライフ」のタテノリな沸騰で本編を終え、アンコールは再び第2ステージで、デイヴの弾き語りがしみる「ホイールズ」からスタート。「ヤング・マン・ブルース」のカヴァーはザ・フーの決定打ヴァージョンに迫る勢いだったし、アリス・クーパーとの「スクールズ・アウト」共演でパーティー気分にラスト・スパートをかけ、オーラス(待ってました!)「エヴァーロング」で巻き起こったシンガロングの渦は、時にデイヴの声が聞こえなくなるくらい巨大であった。

アンコールでデイヴが洩らした「自分はロック・スターなんて感じがしない。俺も君達のひとりだ、そんな気分だよ」という感動的な言葉は、リップ・サービスではない、素直な本音に聞こえた。それは、現在日本でも公開中の自伝映画『バック・アンド・フォース』にも描かれているように、彼が大きな悲劇と挫折から立ち上がり、自らを再生し、アルバム+ツアーの実直な積み重ねでここまで来た、生存者であり苦労人だからであろう。

彼のガッツを支えてきたDIY精神とリアリズム、そして「汗水たらしてなんぼ」なプロ根性は、会場に集まったごく普通の、善き老若男女の日常感覚とも共鳴する。その同志愛に近い結びつきがあるからこそ、世界最大のロック・バンドのひとつでありながら、フー・ファイターズはいまだに「遠さ」を感じさせないのだろう。何より、悪い奴らやズルい奴ばかりが得をする世の中で、デイヴみたいに真っ直ぐでいい奴がちゃんと輝くのを見るのは、それだけでも最高にポジティヴじゃないだろうか?フィナーレに打ち上げられた数十発の美しい花火と共に、彼らは人々の心に励ましの火も灯して去っていった。

<July2/2011 The National Bowl in Milton Keynes>
1.Bridge Burning/ブリッジ・バー二ング
2.Rope/ロープ
3.The Pretender/ザ・プリテンダー
4.My Hero/マイ・ヒーロー
5.Learn to Fly/ラーン・トゥ・フライ
6.White Limo/ホワイト・リモ
7.Arlandria/オーランディア
8.Breakout/ブレイクアウト
9.Cold Day in the Sun (Roger Taylor)/コールド・デイ・イン・ザ・サン*ロジャー・テイラー参加曲
10.Long Road to Ruin/ロング・ロード・トゥ・ルイン
11.Stacked Actors/スタックド・アクターズ
12.Walk/ウォーク
13.Dear Rosemary(Bob Mould) /ディア・ローズマリー*ボブ・モウルド参加曲
14.Monkey Wrench/モンキー・レンチ
15.Let It Die/レット・イット・ダイ
16.Generator/ジェネレイター
17.Best of You/ベスト・オブ・ユー
18.Skin and Bones/スキン・アンド・ボーンズ
19.All My Life/オール・マイ・ライフ
アンコール
20.Wheels /ホイールズ
21.Times Like These/タイムズ・ライク・ジ―ズ
22.Young Man Blues/ヤング・マン・ブルース
23.School's Out(Alice Cooper) /スクールズ・アウト
24.I'm Eighteen Play(Alice Cooper)/アイム・エイティーン・プレイ
25.Everlong/エヴァーロング

◆フー・ファイターズ・オフィシャルサイト
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