音楽冒険精神を詰め込んだ傑作アルバム『ADVENTURE』堂々完成

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“怒涛/驚愕 DO10!!”計画進行中

今までのライヴから、作品作りから何から、活動していく中で、“今、これできるんじゃないか?”っていうものが込められた。

INTERVIEW

リスナーがどこに反応してどこをカッコいいって感じるのかを考える。そういう意味でも、今回のアルバムは“挑戦”だと思うんです。

──前回の取材で話を聞いた「英雄ノヴァ」は、荒々しいバンド・サウンドだったじゃないですか。それに続くシングルの「雨にうたえば」はものすごくセンチメンタルな雰囲気で。で、その「雨にうたえば」からこのアルバムの「黒い空」、「裸の目をしたミュータント」って続いていく流れとかは、「英雄ノヴァ」とかなり対照的でビックリしたんですよ。

桃野:あぁーっ。このへんのキーボードを導入してる曲は、自分らでアレンジしていくっていう意味では、今回のアルバムの肝になってますね。キーボードを鳴らすことで、音色の印象は変わるし。で、それは、今まで自分たちがやってないことを取り入れるっていう意味が強くて。僕なら「黒い空」で裏声で歌うとか、楽器陣だったら例えば打ち込みっぽいドラムを追求した形で出すとか。ギターもそうだし、ベースもそうだし、やってないことに手を出したっていうのは、自分たちにとってはだいぶデッカイ変化ですね。

瀧谷:僕はもう、全然なかったものなんですよね。自分の中に、このテのものは。今までないプレイ・スタイルだったんで、やっぱりすごい難しかったです、自分の中に消化するまでは。葛藤もしましたし。でも、今になってはもう全然、良い経験だったなと思うし。これからもたぶん打ち込みの曲はやると思うから、こういう経験をしたことで次がまた見えてくるっていうのがよかったですね。

出口:うん。こういう“ナチュラルなループ感”っていうのは“今の時代の音”に近いんのかなって、アレンジをしてる段階でみんなで話したりしてて。機械のループ感ではなくて、人がやってるナチュラルなループ感は。肉体的でもあるんだけど、どこか機械的だったり、なんかそういうのが今の時代の音なんだよねっていう話をずっとしてたんです。

──なるほどね。機械的なループ感を生身のプレイヤーが表現する、っていう。ロックとかダンス・ミュージックとか、色々な音楽の要素を掛け合わすのが当たり前になった今の時代らしいアプローチかもしれないですね。

出口:そうですね。僕らは今までは、良い意味でも悪い意味でも“バンドらしい”っていうところでやってきてたと思うんですけど。せっかく今っていう時代でバンドがやれるんだったら自分たちなりの解釈で“今の音”を出そうか、って。そういうところから生まれた、こういう“ナチュラルなループ感”は、バンドとしては武器になる気がしてます。

──という新機軸曲があったかと思えば、「正義にて」もビックリですよ。これ、思いっきりハードコアですよね! 僕は、マイナー・スレットとかが浮かんだんですけど(笑)。

(注)マイナー・スレット:1980年にアメリカで結成されたハードコア・パンク・バンド。ヴォーカルのイアン・マッケイは、マイナー・スレット解散後、1987年にフガジを結成。イアンが設立したレーベル「ディスコード・レコード」は、ハードコア・シーンで最も重要なレーベルの一つとされている。

桃野:(笑)これは、もう……。マイナー・スレットを聴いてたんです、作ってたとき。

──(笑)えっ!? 本当に?

桃野:マジですマジです! 元々は、全然違う感じの曲だったんですよ。ああいう2ビートの曲じゃなくて、わりとポップな歌を今までどおりの手法でやってたんです。けど、今回、“冒険”っていう意味で、今まで触れてないジャンルというか、そういうものを取り込もうと思ってたときに……。そのときにちょうど僕、ちょっとハードコア・ブームが到来してたんですよね。マイナー・スレット、フガジ、かたやバッド・レリジョンやらそのへんが、“衝動”としてヤバいなと思って。で、その曲をアレンジするときにパッと浮かんだのがマイナー・スレットだったりして、そのままやってみたっていう(笑)。

──へぇーっ。このご時世に、オールド・スタイルなハードコアまで取り込んでしまうバンドは、メジャーのレーベルにはそういないと思いますよ(笑)。

桃野:(笑)そうですよね~。あとは、自分らにどれだけその“衝動”が、ハードコアっていうものが染み付いてるかっていうのにも、ちょっと興味があったんですよね。こういうものをどれだけ表現できるのかっていうことも、今回の挑戦のひとつとしてあって。ジャンルうんぬんじゃなく、“良い音楽”のひとつとしてそういうものを取り入れるっていうのは僕らにとっては重要なことだったんで、“やるしかないでしょう!”って。

松下:僕自身の身体には、こういう血はなかったですけど……(笑)。でも、聴いたらやっぱり単純に“カッコいいな!”って感じるじゃないですか。その“カッコいいな!”って感じる理由はどこにあるのかまでを探らないとやれないなって感じで、この曲には取り組んでました。ただフレーズをコピーするとかっていう浅い吸収の仕方じゃなくて、こういう音楽はどういう構造になっていて、どういう仕組みで成り立っているのか、とか。

──なるほどね。カッコいいと感じる音楽の構造分析、といいますか(笑)。

松下:(笑)そうですね。この曲にはこういう法則性があるんじゃないかとか、ドラムがもっと先に行ってこっちはそれを追いかける感じにしてみよう、とか。それは「正義にて」だけじゃなくて、他の曲でも全部、モチーフがなんとなくあったり、こういうブレンド感で作りたいなっていうイメージがあったときに、その表面上をすくうんじゃなくて。リスナーがその音楽を聴いたときにどこに反応してどこをカッコいいって感じるのかを考えるっていう。そういう意味でも、今回のアルバムは“挑戦”だと思うんですよ。

桃野:そう。“挑戦”だし、“冒険”だし。タイトルどおりに。僕らが“良い音楽”って感じるものを徹底的に突き詰めた感じですね。こういう色々な音楽が入っているアルバムをきっかけに、リスナーの人たちにも色んな音楽をもっと聴いて欲しいなと思いますし。逆に、その楽しさが伝わるまでは、ずっと変幻自在にやっていけたらな、と思ってます。

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