サーティー・セカンズ・トゥ・マーズ、来日インタビュー<前編>

ポスト
去る8月、<サマーソニック2010>に出演のため待望の日本帰還を果たしたサーティー・セカンズ・トゥ・マーズ。7月14日に満を持しての国内リリースに至った第3作『ディス・イズ・ウォー』を核としながらのライヴ・パフォーマンスは文句のつけようのない充実ぶりで、不満を探そうとすれば演奏時間が短かすぎたことくらいのもの。さらに言えば、限られた時間枠のなかに1曲でも多くを詰め込もうとするのではなく、あくまで自分たちのライヴならではの空気感を再現しようとする姿勢にも、このバンドらしさを感じずにいられなかった。

そんな東京、大阪での公演を終えた2日後、彼らと話をする機会を得ることができた。場所は、筆者には似合わない都内の超高級ホテルの一室。相次ぐ取材にそろそろ飽きていることかと思いきや、<サマーソニック2010>で購入したばかりの彼らのTシャツを着用して待ち構えていると、ジャレッド・レト(Vo,G)、シャノン・レト(Ds)、トモ・ミリセヴィック(G)の3人が、親指を立て、満面の笑みを浮かべながら現れた。そこからの会話の一部始終を、前編/後編に分け、基本的にはノー・カットでお届けしたいと思う。筆者が彼らにイジられている場面なども、敢えて削除せぬままに。

――ようやく日本に戻ってくることができましたね!

ジャレット:うん。確か、前にも会ってるよね? 前作のライナーノーツを書いてくれてたんじゃなかったっけ?

――よく憶えていますね! ちなみに今作でも書かせていただきました。フェイヴァリット・アルバムのために寄稿することができてとても光栄に思っています。

ジャレット:こちらこそありがとう。そんなふうに言ってもらえるのは本当に嬉しい。

――さっそくですが、<サマーソニック2010>の2公演では、どんな手ごたえを?

シャノン:とにかく楽しかった……よな?(笑)

トモ:もちろん!(笑)

ジャレット:オーディエンスの熱心さと、熱狂ぶりが素晴らしかった。ステージにみんなを上げたときには、さすがにカオス状態に陥ったけども(笑)。

トモ:うん。正直、世界的に見て、日本のファンがいちばんクレイジーだと思う(笑)。

ジャレッド:しっかりと音楽を聴いてくれるうえに、クレイジーになってくれる。これは素晴らしいことだと思う。

――日本人はシャイでなかなか感情をあらわにしない国民である。昔からそう言われてきたんですけどね、一般的には。

シャノン:断言させてもらうけど、それは絶対に正しくない(笑)。

トモ:俺たちが経験したのは、まったく逆の状況だったからね。

ジャレット:俺たちが日本の常識を変えてしまったのかもしれない。ステージからカオスの“種”をまきちらしてやったんだ(笑)。しかしとにかく、最高の気分だった。

――セキュリティの人たちは、最高とは言えない気分だったでしょうけども。

シャノン:それは間違いないな。

トモ:だけど俺たちは、セキュリティに意地悪をしようとしてるわけじゃない(笑)。

ジャレット:ま、でも、追加料金を払われるべきではあるかもしれない。

シャノン:俺たちには払うつもりはないけども(笑)。

ジャレット:ただ、ひとつ残念だったのは移動スケジュールがあまりにもタイトで、他のアーティストたちのステージを観る時間的余裕があまりなかったこと。でも、スマッシング・パンプキンズとは、日本に来る前にシンガポールで共演する機会があってね。彼らと同じステージに立てたの純粋に嬉しかった。そこでちょっとはフェス気分も味わうことができたし。

――アジア圏でのツアーというのは、このバンドにとって新しい試みのひとつでもあるわけですよね?

ジャレット:うん。しかし素晴らしい経験だったよ。あまりブランクをあけることなく、可能なかぎり早いタイミングでまたアジアに戻って来たいと思う。

――そういう気分になれていることが、成功の証しですよね。

シャノン:そうそう、まさに。

ジャレット:初めて訪れる国があれば、必ずそこで初めて味わうことが何かある。しかも「どこの国でもこれは同じ」という共通項も同時に見つけられる。そんななかで日本が特にユニークだと思えるのは……言葉にするのが難しいんだけど「非常にジャパニーズ」としか言いようのない何かがあるんだ。とても強烈な文化があり、何もかもに伝統が伴っている。食事なんかもそれを象徴しているよね。世界を旅すればするほど、「どこでも同じ」という感覚が強くなっていくのに対して、日本だけは常に違っているんだ。

――その「非常にジャパニーズ」というのを、もう少し詳しく説明してもらえませんか?

シャノン:まず、とにかくここでは誰もが親切なんだ。

ジャレット:相手に対するリスペクトがある、と言ったらいいのかな。フレンドリーなだけではなく、ある種の威厳があるんだ。しかも、もてなし方を心得ているというか。

トモ:すべての段取りがすごくしっかりしてるんだよな。フェスでもそれは同じ。どこの会社が、ということではなく日本人というのはそういう人たちなんだと思う。

――そういえばふと思い出しました。ジャレッドは、うどんがお気に入りでしたよね?

ジャレッド:うん(笑)。

シャノン:実を言うと、彼はついさっきも、うどんを食べたばかりでね(笑)。

――前回取材したときには「日本に移住したい」という発言に驚かされたんですけど、同じようなことを今回のステージ上でも言っていましたよね? あれは本心ですか?

ジャレット:嘘じゃないよ。移住は大袈裟にしても、長期間にわたってしばらく日本に滞在する機会が得られたら、とは本気で思っている。本当に何もかも気に入っているんだ。原宿界隈の雰囲気も好きだし、お気に入りのレストランもいくつかある。特に気に入っているのはクレヨンハウスだね。あそこのレストランはオーガニックな食事を味わうには最高だ。値段も手頃だし、メニューも充実しているし。この短い東京滞在のうちに2回も行ってしまった。つまり、毎日通ったということになるわけだけど(笑)。

シャノン:実際、日本に長期滞在することになったとしても、何の問題もないだろうな。「これがないと無理だ」という条件が普通はいくつかあるものだけど、むしろ俺は、日本の生活習慣にもっと深入りしてみたい。

トモ:俺も同感。東京だったら、病院ですら居心地がいいはず(笑)。

――そこまで言うならば、いっそのこと次のアルバムを東京でレコーディングすればいいじゃないですか。

ジャレット:それはいいアイディアだ。でも、それよりもまず東京でビデオを撮ってみたい。その前に、ここでキミの写真を撮らせてもらうことにする。いい? 1、2、3!

――本当に撮っちゃいましたね。ツイッターにアップするのは勘弁してくださいよ(笑)。それはともかく、朗報が飛び込んできましたね。『ディス・イズ・ウォー』がドイツのアルバム・チャートでNo.1を獲得したそうで。おめでとうございます!

ジャレット:ありがとう。実はそれにとどまらず、ビッグな出来事が相次いでね。ほぼ同じ時期に、MTVアウォードでノミネートされたりとか。しかもベスト・ビデオ部門を含む4部門でね。

シャノン:その話で盛りあがってるときに、ドイツで首位獲得のニュースが届いたんだ。

ジャレット:あのアルバムがリリースされたのは2009年末のこと。何より嬉しかったのは、それから半年以上も経てから1位になったことだ。

――初登場で首位を獲得して、あとは落ちていく一方という作品が多いなかで、これはめずらしい現象とも言えるはずですよね。

トモ:うん。1位を獲得したということよりも、ジワジワと浸透しながらついにそこに到達したということに、より大きな意味があると思う。

ジャレット:まさに。日本でも同じようなことが起こったら最高だな。期待しているよ。

――日本盤は欧米よりも半年以上遅れて、7月にようやくリリースされたので……。

ジャレット:もちろんそれはわかってる。だから今から半年後に何がここで起こるかを楽しみにしているんだ。日本盤の仕様も気に入ってるしね。

――しかしNo.1までは半年もかかりましたか。火星までは30秒しかかからないというのに。

ジャレッド:ふふふ。うまいことを言うね。俺たちは、じっくりと時間をかけながら上昇し続けていくのが好きなんだ。
(以下、後編につづく)

文/撮影 増田勇一

『ディス・イズ・ウォー』
2010年7月14日発売
TOCP-66927 ¥2,500(tax in)
歌詞・対訳つき 日本盤のみボーナス・トラック2曲収録
1.エスケイプ
2.ナイト・オブ・ザ・ハンター
3.キングス・アンド・クイーンズ
4.ディス・イズ・ウォー
5.100サンズ
6.ハリケーン
7.クローサー・トゥ・ジ・エッジ
8.ヴォックス・ポプリ
9.サーチ&デストロイ
10.アリバイ
11.ストレンジャー・イン・ア・ストレンジ・ランド
12.L490
BONUS TRACK
13.Kings and Queens - Eddy and Tiborg Radio Mix
14.Kings and Queens - Innerpartysystem Main Remix

◆サーティー・セカンズ・トゥ・マーズ日本公式サイト
この記事をポスト

この記事の関連情報