増田勇一の『今月のヘヴィロテ(6月篇)』
7月もすでに半分近くが過ぎようとしているが、遅ればせながら6月に日本発売された新譜群のなかから、常日頃、熟聴していた10作品をご紹介したい。今回もかなり脈絡のありそうでなさそうなラインナップ。皆さんの愛聴盤も含まれているだろうか?「あ、これ聴きたかったんだけど買いに行くの忘れてた!」的な発見(というか記憶回復?)などにも繋がるようなことがあれば幸いだ。
●OZZY OSBOURNE『SCREAM』
●SOILWORK『THE PANIC BROADCAST』
●RIZE『EXPERIENCE』
●ONE OK ROCK『Nicheシンドローム』
●VINCE NEIL『TATTOOS & TEQUILA』
●HAIL THE VILLAN『POPULATION DECLINING』
●FEEDER『RENEGADES』
●GALNERYUS『RESURRECTION』
●TOM PETTY AND THE HEARTBREAKERS『MOJO』
●JACOB DYLAN『WOMEN+COUNTRY』
オジーの新作は、とにかく楽曲の充実ぶりとアッパーな空気感が素晴らしい。各方面で好評な今作について、ごくまれに否定的な意見を目にすることがあるが、それらの多くは結局のところ「思い入れ深い過去の作品(もしくはメンバー)に比べると、自分の好みじゃない」的な部分に起因するもの。僕に言わせれば、ここまで自身のパブリック・イメージというものを踏まえ、それをいい意味で存分に利用し、さまざまな掟破りをしながら、結果的には「どこからどう聴いてもオジー」なアルバムを作り上げてしまっているのだから、これはもう見事と言うしかない。しかも過剰な予備知識を必要としないわかりやすさ、フックの豊富さは本当に魅力的。「オジーの歴史はよく知らないし、10月の『LOUD PARK』は観てみたいけども、どの作品から聴いたらいいかよくわからない」という人たちも少なからずいることだろうが、僕は迷わずこの『スクリーム』を手に取ることをおすすめしたい。
バンド創設者であるピーター・ウィッチャーズ(G)の復帰を経て完成されたソイルワークの新作もまた「これぞソイルワーク!」と言いたくなる傑作。彼が不在の状態で作られた前作も悪くなかったが、やはり今作では「役者が揃っている」という印象だ。この最新作と同時に、『ザ・スレッジハンマー・フォールズ~ザ・ベスト・オブ・ソイルワーク1998~2008』と銘打たれたベスト・アルバムも発売されている事実も付け加えておきたい。
RIZEの新作は、従来のようにゼロの状態からジャムを重ねて楽曲を構築していくのではなく、各々が楽曲のアイディアを持ち寄るという手法で制作されたもの。結果、これまでの作品とは一線を画する広がりと深みが生まれ、確実にバンドとして新たな次元へと足を踏み入れたという印象。アルバム自体の表題が物語っているように、まさに“経験”が反映された結果と言っていいだろう。そして、どこかかつてのRIZEを思わせるところがあるONE OK ROCKの『Nicheシンドローム』も、このバンドの進化のめざましさを象徴している1枚。ライヴを観る機会には久しく恵まれていないのだが、これまでとは“バンド力”が違うという印象だ。
ヴィンス・ニールの新作はカヴァー曲が中心だが、さりげなく挿入されているふたつの新曲がどちらも素敵だ。ことに「アナザー・バッド・デイ」のほうは代表曲になり得るくらいの楽曲だと思う。カヴァー曲のラインナップのなかで嬉しかったのは、スウィートの「AC/DC」という曲。ジョーン・ジェットも取り上げているポップ・チューンだが、「ボールルーム・ブリッツ(ロックンロールに恋狂い)」や「フォックス・オン・ザ・ラン」といったアメリカでもシングル・ヒットした看板曲ではなく、わざわざこうした楽曲を選んできたところに、少年時代のヴィンスの好みが垣間見られて楽しい。なにしろこの曲、2005年に日本盤が出ている『ヴェリー・ベスト・オブ・スウィート』にすら収められていないのだ。さらに付け加えておくと、原曲は1974年発表の『SWEET FANNY ADAMS』というアルバムに収録されている。
他にもカナダの新鋭、ヘイル・ザ・ヴィランによるデビュー作はヘヴィさとキャッチーさのバランスが秀逸だったし、フィーダーの『レネゲイズ』を聴くと、先頃行なわれた“一夜限りの来日公演”に行きそびれたことが悔やまれる。とはいえ彼ら、今年は年内にオリジナル・アルバムをもう1枚発表する予定で、9月にはジャパン・ツアーのためふたたび日本上陸を果たすことになっている。今からそれを楽しみにしておきたいところだ。
小野正利をフロントマンに迎えて完成されたガルネリウスの新作も“適材適所”といった言葉を思い出させてくれる逸品。敢えて意地悪くケチをつけるとすれば「どこか出来過ぎな感じ」がする点くらいのものだろう。そんな彼らのアルバムによって久しぶりに「綺麗なハートーン・ヴォーカルによるメロディック・メタル」が自分の背景の一部にあることを改めて感じさせられると同時に、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのブルージーで“ほぼライヴ録音”な内容の新作に酔い、ジェイコブ・ディランのソロ第2作に充満する私小説的な匂いがえらく染みた6月だった。
他によく聴いたところでは、AA=の第2作、ペンデュラム、ちょっと前に輸入盤で買っていたルーファス・ウェインライトなど。基本的にアルバムを対象としているので選外としたが、Pay money To my PainのEP『Pictures』もえらい頻度で繰り返し味わってきたし、coldrainのミニ・アルバム『Nothing lasts forever』にも「もっと聴きたい!」と思わせるものがあった。そして現在は、これらの作品たちに加えてサッズの『THE SEVEN DEADLY SINS』、Creature Creatureの『INFERNO』をはじめとする7月リリースの強力盤たちが我が家ではヘヴィ・ローテーション中。この夏も“豊作”は続きそうだ。
増田勇一
●OZZY OSBOURNE『SCREAM』
●SOILWORK『THE PANIC BROADCAST』
●RIZE『EXPERIENCE』
●ONE OK ROCK『Nicheシンドローム』
●VINCE NEIL『TATTOOS & TEQUILA』
●HAIL THE VILLAN『POPULATION DECLINING』
●FEEDER『RENEGADES』
●GALNERYUS『RESURRECTION』
●TOM PETTY AND THE HEARTBREAKERS『MOJO』
●JACOB DYLAN『WOMEN+COUNTRY』
オジーの新作は、とにかく楽曲の充実ぶりとアッパーな空気感が素晴らしい。各方面で好評な今作について、ごくまれに否定的な意見を目にすることがあるが、それらの多くは結局のところ「思い入れ深い過去の作品(もしくはメンバー)に比べると、自分の好みじゃない」的な部分に起因するもの。僕に言わせれば、ここまで自身のパブリック・イメージというものを踏まえ、それをいい意味で存分に利用し、さまざまな掟破りをしながら、結果的には「どこからどう聴いてもオジー」なアルバムを作り上げてしまっているのだから、これはもう見事と言うしかない。しかも過剰な予備知識を必要としないわかりやすさ、フックの豊富さは本当に魅力的。「オジーの歴史はよく知らないし、10月の『LOUD PARK』は観てみたいけども、どの作品から聴いたらいいかよくわからない」という人たちも少なからずいることだろうが、僕は迷わずこの『スクリーム』を手に取ることをおすすめしたい。
バンド創設者であるピーター・ウィッチャーズ(G)の復帰を経て完成されたソイルワークの新作もまた「これぞソイルワーク!」と言いたくなる傑作。彼が不在の状態で作られた前作も悪くなかったが、やはり今作では「役者が揃っている」という印象だ。この最新作と同時に、『ザ・スレッジハンマー・フォールズ~ザ・ベスト・オブ・ソイルワーク1998~2008』と銘打たれたベスト・アルバムも発売されている事実も付け加えておきたい。
RIZEの新作は、従来のようにゼロの状態からジャムを重ねて楽曲を構築していくのではなく、各々が楽曲のアイディアを持ち寄るという手法で制作されたもの。結果、これまでの作品とは一線を画する広がりと深みが生まれ、確実にバンドとして新たな次元へと足を踏み入れたという印象。アルバム自体の表題が物語っているように、まさに“経験”が反映された結果と言っていいだろう。そして、どこかかつてのRIZEを思わせるところがあるONE OK ROCKの『Nicheシンドローム』も、このバンドの進化のめざましさを象徴している1枚。ライヴを観る機会には久しく恵まれていないのだが、これまでとは“バンド力”が違うという印象だ。
ヴィンス・ニールの新作はカヴァー曲が中心だが、さりげなく挿入されているふたつの新曲がどちらも素敵だ。ことに「アナザー・バッド・デイ」のほうは代表曲になり得るくらいの楽曲だと思う。カヴァー曲のラインナップのなかで嬉しかったのは、スウィートの「AC/DC」という曲。ジョーン・ジェットも取り上げているポップ・チューンだが、「ボールルーム・ブリッツ(ロックンロールに恋狂い)」や「フォックス・オン・ザ・ラン」といったアメリカでもシングル・ヒットした看板曲ではなく、わざわざこうした楽曲を選んできたところに、少年時代のヴィンスの好みが垣間見られて楽しい。なにしろこの曲、2005年に日本盤が出ている『ヴェリー・ベスト・オブ・スウィート』にすら収められていないのだ。さらに付け加えておくと、原曲は1974年発表の『SWEET FANNY ADAMS』というアルバムに収録されている。
他にもカナダの新鋭、ヘイル・ザ・ヴィランによるデビュー作はヘヴィさとキャッチーさのバランスが秀逸だったし、フィーダーの『レネゲイズ』を聴くと、先頃行なわれた“一夜限りの来日公演”に行きそびれたことが悔やまれる。とはいえ彼ら、今年は年内にオリジナル・アルバムをもう1枚発表する予定で、9月にはジャパン・ツアーのためふたたび日本上陸を果たすことになっている。今からそれを楽しみにしておきたいところだ。
小野正利をフロントマンに迎えて完成されたガルネリウスの新作も“適材適所”といった言葉を思い出させてくれる逸品。敢えて意地悪くケチをつけるとすれば「どこか出来過ぎな感じ」がする点くらいのものだろう。そんな彼らのアルバムによって久しぶりに「綺麗なハートーン・ヴォーカルによるメロディック・メタル」が自分の背景の一部にあることを改めて感じさせられると同時に、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのブルージーで“ほぼライヴ録音”な内容の新作に酔い、ジェイコブ・ディランのソロ第2作に充満する私小説的な匂いがえらく染みた6月だった。
他によく聴いたところでは、AA=の第2作、ペンデュラム、ちょっと前に輸入盤で買っていたルーファス・ウェインライトなど。基本的にアルバムを対象としているので選外としたが、Pay money To my PainのEP『Pictures』もえらい頻度で繰り返し味わってきたし、coldrainのミニ・アルバム『Nothing lasts forever』にも「もっと聴きたい!」と思わせるものがあった。そして現在は、これらの作品たちに加えてサッズの『THE SEVEN DEADLY SINS』、Creature Creatureの『INFERNO』をはじめとする7月リリースの強力盤たちが我が家ではヘヴィ・ローテーション中。この夏も“豊作”は続きそうだ。
増田勇一
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増田勇一
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Tom Petty
Jakob Dylan
Hail The Villain
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