一青 窈、「妬みや嫉みや、綺麗じゃない感情だって私の中にある」
2009年8月、朝日新聞の全面広告で「さようなら 一青 窈」と題した散文詩と、「新歌謡(進化窈)」という新たな音楽の方向性を示すキーワードを発表した一青 窈。
新歌謡(進化窈)三部作の第一弾として10月7日にリリースされた「ユア メディスン~私があなたの薬になってあげる」では、シリアスでエロティックな毒気とアッパーな歌謡メロディとで、まさに「新歌謡(進化窈)」を体現してみせた。
第二弾シングル「うんと幸せ」のリリースに際し、新たなキーワードに辿り着いた経緯、そしていま心の中にある歌、音楽への想いを訊いた。
◆ ◆ ◆
一青 窈【新歌謡(進化窈)三部作】
第二弾シングル「うんと幸せ」インタヴュー
[第1章]妬みや嫉みや、綺麗じゃない感情だって私の中にある
[第2章]もっと音楽が解りやすければいい
[最終章]みんなが思ってるほど幸せではない気がするな…って
◆ ◆ ◆
――11月4日にリリースされる「うんと幸せ」は、【新歌謡(進化窈)三部作第二弾シングル】でもある訳ですが、まず8月17日の夕刊、18日の朝刊で【さようなら 一青窈】という衝撃発表があったように、その【新歌謡(進化窈)】というキーワードに至るまでの流れを訊いてもいいですか?
一青窈:はい。自分の中の自問自答というか、そんなところからだったんです。阿久悠さんが亡くなられて、自分の中で、改めて、歌謡曲というモノに目を向けるきっかけができたんです。もともと歌謡曲が大好きで歌が好きになったんですが、阿久悠さんが亡くなられたことで、歌謡曲への熱が再発した感じだったんです。時代のせいにはしたくはないんですが、昔よりも、歌がみんなのモノではなくなってきているんじゃないかって思ったんです。誰かのファンだからその人の歌だけを聴く、というような垣根みたいなものが、昔はもっとなかったように思うんです。
――はい。昔、歌謡曲と呼ばれる曲は、小さい子からお爺ちゃんお婆ちゃんまで知っていて歌えましたからね。
一青窈:そうなんですよね。今って違いますよね。でも、阿久先生が亡くなった今、それを私たちが受け継いでいくべきところなんじゃないかって思ったんです。だからもっと、昔の歌謡曲のようなみんなに届く歌を歌っていきたいって思ったんです。そう思ったときに、ひとつ、自分の中でも、世間に対しても、区切りを付けた方が、新たな一歩を踏み出しやすいんじゃないかって思って。もうひとつのきっかけとしては、横尾忠則さんに感化されたところもあったんです。画家廃業宣言だったり、死亡宣言という宣言をして自分が前に進んでいくという姿勢。そこにすごく惹かれた自分が居たんです。「もらい泣き」の一青窈、「ハナミズキ」の一青窈というように言って頂けることは本当に光栄な事なんですが、そこからさらに1歩進むためには【さようなら 一青窈】っていう、このフレーズをちゃんと言わなくちゃいけないなって思ったんです。精神的に。
――ひとつのケジメとして?
一青窈:そう。決して、いままで一青窈を愛してくれた人たちに向けての、さようならじゃないんです。
――自分のやってきたことに蓋をしてしまうということではなく、ですよね?
一青窈:はい。自分自身に対しての、さようならって言った方が解りやすいのかも。いままでは、両親への思いを歌に込めることが多かったんです。だけど亡くなった人への思いばかりを歌うことが、ふと、水戸黄門の印籠の様に思えてしまったりもしたんです。両親への感謝の気持ちは、もちろん、この先も自分の心の中にはずっと持ち続けていることなんですが、今は亡くなってしまった人に向けて歌うのではなく、今を一生懸命生きている人たちに、もっともっと歌を届けていきたいって思うようになったんです。今、自分が生きていて、何が言えるのか、ということを、今生きてる人に向けて伝えたいと思ったんです。そんなところから、歌謡曲、J-POPというものを通して、みんなにそんな思いを伝えていけたら、と思ったんです。今って、いろいろと技術が発達したこともあって、音楽を作ること自体はそんなに難しくない時代だったりするんですよね。でも、そういう世の中で、本当にお金を出してでも聴きたいとか、触れたいって思うような心から感動する音楽を作っていけたらいいなって。便利な時代ということもあり、なんでも簡単にやれたり手に入れたりできちゃうじゃないですか。その中で、本当に心からその音楽を聴きたいと思えて、実際手に入れて聴いた時に心から感動して涙を流してもらえるような、そんな“残る音楽”を歌っていけるようになりたいって、すごく強く思ったんですよね。涙の出る感動だけじゃなく、すごく楽しくなれたり、笑えたり、とにかく、心にずっと残る音楽を作って歌っていきたいって思ったんです。“こんなこと歌詞にしちゃったら、誤解されるかな”とか、そういうことを恐れず、自主規制をかけずに、もっともっと、そのときに感じたままを素直に歌っていく。それがすごく必要なことなんだと思ったんです。いままで、7年歌ってきた中で、歌詞に込めてきた思い以外にも私はいっぱい感情を持っていて。妬みや、嫉みや、そんな綺麗じゃない感情だって、私の中にもあって。いままでは、そういうところはあまり表に出すべきところではないと思ってたけど、そんなところも全部曝け出して、みんなで共有できたり、笑い合えたらいいなって思ったんです。私の歌に限らず、今の世の中って、そういうのを前面に出した歌ってあんまりない気がするんですよね。もしも、そういうことを歌って、ネット上とかで批判されたとしても、私はそれでも歌っていきたいと思ったんです。ちゃんと向き合ったからこその覚悟というか。それが、【さようなら 一青窈】であり、【新歌謡(進化窈)】であったんです。
取材・文●武市尚子
一青 窈【新歌謡(進化窈)三部作】
第二弾シングル「うんと幸せ」インタヴュー[第2章]につづく・・・
◆ ◆ ◆
New Single
「うんと幸せ」
2009年11月4日発売
初回生産限定盤FLCF-4299 ¥1,200(tax in)
通常盤FLCF-4305 ¥1,200(tax in)
◆一青 窈オフィシャル・サイト
新歌謡(進化窈)三部作の第一弾として10月7日にリリースされた「ユア メディスン~私があなたの薬になってあげる」では、シリアスでエロティックな毒気とアッパーな歌謡メロディとで、まさに「新歌謡(進化窈)」を体現してみせた。
第二弾シングル「うんと幸せ」のリリースに際し、新たなキーワードに辿り着いた経緯、そしていま心の中にある歌、音楽への想いを訊いた。
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一青 窈【新歌謡(進化窈)三部作】
第二弾シングル「うんと幸せ」インタヴュー
[第1章]妬みや嫉みや、綺麗じゃない感情だって私の中にある
[第2章]もっと音楽が解りやすければいい
[最終章]みんなが思ってるほど幸せではない気がするな…って
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――11月4日にリリースされる「うんと幸せ」は、【新歌謡(進化窈)三部作第二弾シングル】でもある訳ですが、まず8月17日の夕刊、18日の朝刊で【さようなら 一青窈】という衝撃発表があったように、その【新歌謡(進化窈)】というキーワードに至るまでの流れを訊いてもいいですか?
一青窈:はい。自分の中の自問自答というか、そんなところからだったんです。阿久悠さんが亡くなられて、自分の中で、改めて、歌謡曲というモノに目を向けるきっかけができたんです。もともと歌謡曲が大好きで歌が好きになったんですが、阿久悠さんが亡くなられたことで、歌謡曲への熱が再発した感じだったんです。時代のせいにはしたくはないんですが、昔よりも、歌がみんなのモノではなくなってきているんじゃないかって思ったんです。誰かのファンだからその人の歌だけを聴く、というような垣根みたいなものが、昔はもっとなかったように思うんです。
――はい。昔、歌謡曲と呼ばれる曲は、小さい子からお爺ちゃんお婆ちゃんまで知っていて歌えましたからね。
一青窈:そうなんですよね。今って違いますよね。でも、阿久先生が亡くなった今、それを私たちが受け継いでいくべきところなんじゃないかって思ったんです。だからもっと、昔の歌謡曲のようなみんなに届く歌を歌っていきたいって思ったんです。そう思ったときに、ひとつ、自分の中でも、世間に対しても、区切りを付けた方が、新たな一歩を踏み出しやすいんじゃないかって思って。もうひとつのきっかけとしては、横尾忠則さんに感化されたところもあったんです。画家廃業宣言だったり、死亡宣言という宣言をして自分が前に進んでいくという姿勢。そこにすごく惹かれた自分が居たんです。「もらい泣き」の一青窈、「ハナミズキ」の一青窈というように言って頂けることは本当に光栄な事なんですが、そこからさらに1歩進むためには【さようなら 一青窈】っていう、このフレーズをちゃんと言わなくちゃいけないなって思ったんです。精神的に。
――ひとつのケジメとして?
一青窈:そう。決して、いままで一青窈を愛してくれた人たちに向けての、さようならじゃないんです。
――自分のやってきたことに蓋をしてしまうということではなく、ですよね?
一青窈:はい。自分自身に対しての、さようならって言った方が解りやすいのかも。いままでは、両親への思いを歌に込めることが多かったんです。だけど亡くなった人への思いばかりを歌うことが、ふと、水戸黄門の印籠の様に思えてしまったりもしたんです。両親への感謝の気持ちは、もちろん、この先も自分の心の中にはずっと持ち続けていることなんですが、今は亡くなってしまった人に向けて歌うのではなく、今を一生懸命生きている人たちに、もっともっと歌を届けていきたいって思うようになったんです。今、自分が生きていて、何が言えるのか、ということを、今生きてる人に向けて伝えたいと思ったんです。そんなところから、歌謡曲、J-POPというものを通して、みんなにそんな思いを伝えていけたら、と思ったんです。今って、いろいろと技術が発達したこともあって、音楽を作ること自体はそんなに難しくない時代だったりするんですよね。でも、そういう世の中で、本当にお金を出してでも聴きたいとか、触れたいって思うような心から感動する音楽を作っていけたらいいなって。便利な時代ということもあり、なんでも簡単にやれたり手に入れたりできちゃうじゃないですか。その中で、本当に心からその音楽を聴きたいと思えて、実際手に入れて聴いた時に心から感動して涙を流してもらえるような、そんな“残る音楽”を歌っていけるようになりたいって、すごく強く思ったんですよね。涙の出る感動だけじゃなく、すごく楽しくなれたり、笑えたり、とにかく、心にずっと残る音楽を作って歌っていきたいって思ったんです。“こんなこと歌詞にしちゃったら、誤解されるかな”とか、そういうことを恐れず、自主規制をかけずに、もっともっと、そのときに感じたままを素直に歌っていく。それがすごく必要なことなんだと思ったんです。いままで、7年歌ってきた中で、歌詞に込めてきた思い以外にも私はいっぱい感情を持っていて。妬みや、嫉みや、そんな綺麗じゃない感情だって、私の中にもあって。いままでは、そういうところはあまり表に出すべきところではないと思ってたけど、そんなところも全部曝け出して、みんなで共有できたり、笑い合えたらいいなって思ったんです。私の歌に限らず、今の世の中って、そういうのを前面に出した歌ってあんまりない気がするんですよね。もしも、そういうことを歌って、ネット上とかで批判されたとしても、私はそれでも歌っていきたいと思ったんです。ちゃんと向き合ったからこその覚悟というか。それが、【さようなら 一青窈】であり、【新歌謡(進化窈)】であったんです。
取材・文●武市尚子
一青 窈【新歌謡(進化窈)三部作】
第二弾シングル「うんと幸せ」インタヴュー[第2章]につづく・・・
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New Single
「うんと幸せ」
2009年11月4日発売
初回生産限定盤FLCF-4299 ¥1,200(tax in)
通常盤FLCF-4305 ¥1,200(tax in)
◆一青 窈オフィシャル・サイト
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