Aqua Timez、ヒット曲満載のベスト・アルバム『The BEST of Aqua Timez』特集

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Aqua Timez オール・セルフ・プロデュースによるフル・ボリュームのベスト・アルバム『The BEST of Aqua Timez』特集

絞りに絞った“みんなが好きな”全26曲

「再録したものも、そこまでアレンジを変えたわけではないのに“今の音だなぁ”って、すごく感じますよね」(大介)

『空いっぱいに奏でる祈り』

大介: 僕は「希望の咲く丘から」か、「向日葵」。要はインディーズ・アルバム『空いっぱいに奏でる祈り』に入ってた曲ですね。やっぱりデビュー前からやってたっていうのもあるし、これをレコーディングしたときなんて何もわからなくって。そういう曲がベストに入って、これまで聴く機会がなかった人にも届くかもしれないっていうのは、すごく嬉しいんですよ。それに自分で聴いてても、いろいろ思い出すしね。

――では思い出しついでに、その頃の自分っていうのはどうでしたか?

大介: その頃は、サングラスをしてました。

――あっ……私が前に、「等身大のラブソング」のPVを観て、大介さんのメガネにツッコんだの、まだ怒ってます?

大介: あはははは。いやいや全然(笑)。

太志: あの頃はやっぱね、妙なメガネ掛けたり、グラサンして(笑)……こう……。

TASSHI: ワルぶってみたり?

大介: あぁ、その表現は正しいかもしれない。尖ったふりをしてたね、うん(笑)。

OKP-STAR: あのサングラスも完全にノリだったもんね。一人くらいこういうのがいた方がいい、みたいな(笑)。

大介: そうそうそう。何もわからないからこその勢い、みたいなもんだよね。けど、それも今なら笑い話にできるから。

――ギタリストとして、自身の変化を感じることはありますか?

大介: 一番わかりやすいのは、今回「向日葵」を再録したんですけど、聴き比べると全然違ってて。それは多分、ライヴをたくさん重ねたことで、プレイ・スタイルが変わったんだと思うんですね。ちょっとずついろいろ経験していくことによって、バンドのグルーヴや、5人のキャラクターがより見えるようになってきて。だから再録したものも、そこまでアレンジを変えたわけではないのに“今の音だなぁ”って、すごく感じますよね。

「小さな掌」

太志: 僕は5thシングル「小さな掌」かな。この曲は、大人になればなるほどわかる曲だと思うんですね。やっぱ後悔だって増えていくし、言えずに終わった“ありがとう”っていうのは、誰にでもあるんじゃないかなぁ。で、よく思うのは、ホントに大切な気持ちを伝える機会っていうのはなかなかなくて、その人と最後ってことがわかってやっと、言葉を準備し始めるというか。それでいつも手遅れになる自分がいるので、まぁ後悔の歌でもあるんだけど、同時に、これからきちんと生きていくっていう決意の歌でもあるし。

――そうですね。さっきもチラッと言いましたけど、この曲が発売された当時、大切な人に対する“ありがとう”が出てきたことで、新しい扉が開いたと感じましたもん。

太志: 確かに。それはあると思うなぁ。この曲はホントに感じたまま……あたり前の日常からこぼれ出したっていうのが大切なんだと思う。絞り出すことも必要だけど、自然にアウトプットされたものほど、リアルだと僕は思うし。

――掌の温もりがもたらす安心感や説得力が、切実に伝わってきます。

『風をあつめて』

太志: その前に、僕はツアーを飛ばしてしまったから、それも大きかったですね、この曲が生まれる要素として。だからこそ、自分の人生も振り返れるというか。個人的にすごく思い入れがある曲です。

mayuko: 私は「白い森」ですね。バンドを結成してわりとすぐに太志が持ってきた曲で。ずっと路上ライヴでもやり続けてきて、1stアルバム『風をあつめて』の最後に収録されて、ライヴでももちろんやってて。Aqua Timezのやりたいこと、伝えたいことの中心は、変わらないんだなと思える。だから今演奏しても気持ちがスーッと入るし、お気に入りのフレーズもいっぱいあるし、大好きな曲です。

「太志の歌詞に出会って、言葉の力っていうのを知りましたね。それをもっといろんな人に知ってほしいなっていう。ちょっと誉め過ぎですかね?」(TASSHI)

――結成してすぐとなると相当前ですけども、その頃の自分ってどうですか?

mayuko: 相当な視野の狭さでやってたと思いますね(苦笑)。やることなすこと初体験なまま、わけもわからずつっ走ってたという。

――キーボードのプレイに関しては?

mayuko: キーボードが曲の中でワル目立ちすることが、とにかく美学に反すると思ってたんですよ(笑)。当時の私の美学は、奇麗な音でたくさん色を塗って、すごい奇麗な絵を完成させることだったんですね。でもまた違う絵の書き方も覚えたというか。今はアクの強い音とか、目立つ音を無理せず使えるようになってきた、しかも結構楽しみながら、っていうのはありますね、うん。キーボードの果たす役割というものについての考え方が断然広がったと思います。

TASSHI: 僕は「世界で一番小さな海よ」ですね。僕、「青い空」という曲を聴いて、歌詞を見て、Aqua Timezに入ることを決めたんですよ。それ以来、太志の歌はいっつも好きですけど、「青い空」ばりに衝撃を受けた曲がこれでしたね。だから今回のベストを出すにあたって、なぜ僕たちがこんなにもいろんな曲を入れたかって言うと、シングル曲で描いてきた光の当たる部分だったり、幸せな想い、そういうものも大好きですけど、それ以外にもこんな世界観のメッセージ性のある曲をやってるんだという意思表明をしたかった。中でも「世界で一番小さな海よ」は、歌詞だけ見ると重いテーマだけれども、音楽の不思議な力がクッション材になって、沈まずに聴けてしまうというか。届きさえすれば、共感してくれる人はもっともっといると思うんですよね。

――以前話してた、初めて会ったときに「あなた、いい歌詞書きますね」って話し掛けたっていうのは実話だったんですね。

TASSHI: もちろん! その頃は僕、洋楽ばっかり聴いてて、邦楽はねぇ……みたいな人間だったんですよ。そのくせ英語がわからないので、音楽をサウンドとして捉えてるところがあって。太志の歌詞に出会って、言葉の力っていうのを知りましたね。それをもっといろんな人に知ってほしいなっていう。ちょっと誉め過ぎですかね?

太志: 100点です(ニンマリ)。

――キャー。なんかイヤラシい!(笑)

TASSHI: 「世界で一番小さな海よ」を録った当時はただただ必死でしたよ。1stアルバムでやっとこさノウハウがわかって、絶対自分たちのやりたいことを表現してやるんだっていう、強い決意で臨んだ2ndアルバムなので。バンドのことを知ってほしいっていうのもあったし、それと同じくらい、TASSHIというドラマーがいるぞっていう自分の存在価値を証明したくって。かなりメラメラしてた時期でしたね(照笑)。

――今や作品から、ライヴから、5人5様のキャラが滲み出てるから。

OKP-STAR: 濃すぎるって噂もね(笑)。

一同: あははははは。

「いただいた学生さんのパワーや熱量みたいなものを、余すことなくこの曲に入れたいっていう気持で必死で演奏しましたよね」(mayuko)

――せっかくなので、ウォークマン“Play You.”キャンペーン・ソングであり、ベスト盤にも収録されている新曲「最後まで」の話もうかがいたいんですが。

太志: このプロジェクトは結構長かったですよ。部活をやってる中高生のコたちから、部活の仲間へのメッセージをホームページに投稿してもらって。それを見るだけじゃなくて、実際に学校にも行ったし。野球部は、本気で汗流して、メチャ泥んこになってて。あとは吹奏楽部が目の前で演奏してくれたり、女子バスケ部と5対5のフリースロー勝負やったり。彼らはいつも通りの練習をしてるだけなんだろうけど、大人になってから見る機会ってないでしょ? 溢れ出る、すごくポジティヴなバイヴスを、僕らは楽しみながら感じさせてもらって。あの体験がなかったら、「最後まで」は絶対できてないと思う。

――そっか。この曲の一緒に突っ走ってる感と、モーレツなる疾走感は、学生から得た刺激でもあるんだな。

mayuko: やっぱり、いただいた学生さんのパワーや熱量みたいなものを、余すことなくこの曲に入れたいっていう気持ちはすごいあって。だからホントに一緒に走ってるような気持ちで、必死で演奏しましたよね。

――Disc 1はこの新曲がラストだし、Disc 2はさっき話していた「白い森」で終わる。相変わらず一区切り感はなく、未来に続いていく感じがとっても潔くて。

一同: うんうんうん。確かに。

――今、見えている未来像みたいなものはありますか?

太志: 制作でも、ライヴでも、なんでも、今までの延長というより、ガラッと進化したいんですよね。

OKP-STAR: 本当の意味で、音楽をもっと楽しむ、みたいなところだと思うなぁ。

太志: 今までは、これはナシっていうのをたくさん作っておいて、それ以外は全部やってきたけど。これからはなんでもアリの自由な発想の中から、どれをチョイスするか。それを素直に差し出せばいいんだっていうところまでこれましたね、やっと。

――そうなれたときに、Aqua Timezからどんなものが出てくるのかなって想像すると、楽しみな反面、末恐ろしい感じもあり。

一同: ムフフフフ。

太志: ただそれは、僕たちにとっても、聴いてくれる人にとっても、ワクワクするものであってほしいよね、うん。

取材・文●山本祥子

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