人類最後のカストラート:アレッサンドロ・モレスキの声
“カストラート”とは、変声期前である10歳から12歳頃に去勢手術を受けることで男性ホルモンの分泌を抑制し、第二次性徴期に起こる声帯の成長を防ぎ、声が損なわれるのを防いだシンガーのこと。少年の声帯のまま身体は大人へと成長するため、結果、大きな肺活量に対して天使のような声質を持ち合わせるという圧倒的な特徴を持っていた。そもそもの起源は16世紀、女性が教会で歌うことを禁じられたことに端を発する。
彼らはイタリアや訪問したさまざまな欧州諸国のオペラ史に多大な影響を与え、ヘンデル、ヴィヴァルディ、そしてモーツァルトといったヨーロッパの偉大な作曲家たちのほとんどが、カストラートのために曲を書いている。
彼らの栄光は、後の18世紀終わりに教皇クレメンス14世が教会で歌う権利を女性に認めることによって失墜していくことになる。もちろん人道的見地から、カストラートの存在は現在も、そして未来も存在し得ないものだ。
リリースとなったアルバム『ALTUS 奇跡の声-美しきカウンターテナーの世界』には、1922年に亡くなった“最後のカストラート”といわれるアレッサンドロ・モレスキが、1902年にバチカンのシスティーナ礼拝堂で録音した非常に貴重な音源が収録され、話題となっている。同時に人気沸騰中の旬のカウンターテナー、フィリップ・ジャルスキーやデイヴィッド・ダニエルズらも収録され、非常に豪華なコンピレーションと言うべき内容となっている。
100年の時を超えて蘇る、人類最後のカストラート:アレッサンドロ・モレスキの声は、歴史の重みと共に聴く人を幻想的な世界へと誘ってくれる。
◆EMIミュージックウェブサイト
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