コールドプレイ『美しき生命』を紐解く、インタヴューVol.2
◆コールドプレイからメッセージ映像
https://www.barks.jp/watch/?id=1000022149
──ニュー・アルバムの録音について教えてください。教会でもやってますよね?
クリス・マーティン(以下クリス):ほとんどはここから遠くないところにあるスタジオ「ベイカリー」で録音して、バルセロナの教会でもやった。バルセロナでのレコーディングは楽しかったよ。
──死ぬ前に、後世に残る曲を書きたいとの思いでこのアルバムを作ったと聞きましたが、そんな曲は見つかりました?
クリス:見つかってないと思う。僕たちはいつも「次こそは」と思っているからね。ネヴァー・エンディング・ストーリーだ。
──アルバムに100%満足しているわけではないのですね。
クリス:誤解しないでほしいんだけど、これ以上いいものは作れなかったよ。どの作家もソングライターも、次を求めて活動しているんだ。
──「ヴァイオレット・ヒル(Dancing Politicians)」のビデオを作った意図は何だったのですか? アイディアを出したのは誰ですか?
クリス:「ヴァイオレット・ヒル」では2つのビデオを作ったんだけど、ひとつはテレビ用で、もうひとつはインターネット用だ。テレビ用では、今のバンドをみんなに見てもらいたかった。僕たちがどういったルックスなのか、どういう衣装を着ているのかといったことをね。それから、踊る政治家の映像をまとめたビデオを作った。そういった映像をひとつのビデオにまとめたらおかしいだろうと思って作ったんだ。このヴァージョンは、あまりにも政治的でテレビでは放送しないだろうね。だから、インターネット用なんだ。
◆「ヴァイオレット・ヒル(Dancing Politicians)」※インターネット用
https://www.barks.jp/watch/?id=1000022088
──前回の米大統領選挙では民主党を支持していましたよね? 今回のビデオではオバマやヒラリーを含むいろんな人たちが出ていて、曲の中でもあなたは“a carnival of idiots on show(愚か者たちのお祭り騒ぎ)”と歌っていますよね。あなたは今の世の中は大バカ者の集まりで、信用できる人はひとりもいないと思っているのですか?
クリス:このビデオではどの政党もひいきしていないよ。だけど、ここでこっそり教えると、僕たちはバラク・オバマを支持しているんだ。
──ジャケット写真にいつもメンバーが登場しないのはなぜですか?
クリス:僕たちは過去の音楽から離れ、新しいパワーを導入しようとしている。かつて人は革命を起こすのに、宮殿まで行って、門を破って、そこを占拠していた。それで、宮殿にあるような絵画にスローガンを書いたらいいんじゃないかと思ったんだ。自分たちがアルバムのジャケットになるのは好きじゃない。ルックスがビヨンセみたいだったら別だけど。
──このアルバムがU2の『焔(The Unforgettable Fire)』(『美しき生命』と同じブライアン・イーノがプロデュースした1984年作品)と比較されることは、どう? U2には「40」という曲があって、今回君たちには「42」という曲がある。
クリス:もしU2に似ているサウンドがあるなら、「僕はU2が大好きだから、そういうふうになることもあるさ」とはっきり言うよ。ロックン・ロールの58年間の歴史があって、僕たちはそこから引用できること、学べることがたくさんある。一方、自分が完璧にオリジナルになることはないんだ。それでも、僕は構わない。インターネットが発達した今、100年もの間に存在している世界中の音楽を聴くことが出来るようになったんだ。
──今回のアルバムの中で、特に何かに影響されて書いた曲はありますか?
クリス:ああ、それだったら「ロスト!」に関してはカニエ・ウェストの「ジーザス・ウォークス」だよ。聴いてもわからないかもしれないけど。
──『X&Y』や『静寂の世界』を作って、今回もっと前進しようとしましたか?
クリス:僕たち全員が、自分たちの実力よりも知名度の方が先行しているように感じていたんだと思う。それで、本当に小さなスタジオである「ベイカリー」を購入して、というか、レンタルして、これまで使っていたトリックは使わないことにしようと決めた。いかにもコールドプレイという曲はボツになった。特にブライアン・イーノともうひとりのプロデューサーであるマーカス・ドラヴスが関わり始めてからは、そうだった。マーカスに関しては、そういった意味でブライアンよりももっと厳しかった。
──「申し訳ないけど、ブライアン、君のことは好きだけど、もういい加減にしてくれ」と言ったような状況はありましたか?
クリス:最初の2~3週間は僕たちもまったく理解できなかった。ピンとこなかった。ピアノはだめ、ファルセットもだめ、チャイムもだめとなって、ブライアンはまるで器械体操のように僕たちに音楽のエクササイズをするように指導したんだ。音楽の腕立て伏せをやらせたんだ。そうすることで、僕たちが解放されるようにね。そうしている時、僕たちはお互いの顔を見ながら、「この人は気が狂ってる」と思ったこともあった。
──有名になって得したことと、損をしたことを教えてください。
クリス:有名になって得したことは何かって(笑)? 難しいな。そんなこと、今まで訊かれたことなかったからな。名声、それ自体がくだらないものだろ? 『マダム・タッソー館』に自分たちの蝋人形が飾られるまでは有名とは思えないな。まだそうはなっていないからね。
──ニュー・アルバムは前作よりももっとダークな感じで、死や死すべき運命について歌っているけど、それは君が31歳になって年をとったからかい?
クリス:いや、僕は53歳なんだ。
──若く見えるね。
クリス:ありがとう。そういったことは13歳の頃にも考えていたよ(笑)。その時にはいい歌詞が思いつかなかったんだ。
──君が13歳の時には、黒い服を着て、ザ・スミスやジョイ・ディヴィジョンを聴いていたのかい?
クリス:そんなもんだけど、それよりもa-haとか蛍光色のTシャツを着ていたな。「Hunting High And Low」は、人生における探求についての究極の曲だ。どんなに暗い状況でも、決して負けを認めない、決して諦めないということを歌ってる曲なんだ。“I'll always be hunting high and low”、最高の曲だ!
──「Cemeteries of London」ですが、僕はこれまでにハイゲイト墓地に2度ほど足を運んでいて、君も行ったことがあると思うけれど…。
クリス:あるよ。この曲のタイトルは、主にザ・スミスの曲が影響しているんだ。ザ・スミスの曲のタイトルみたいだ。陰気すぎるタイトルかなと心配になったけど、いや、これでいいんじゃないかということになった。モリッシーもこういうタイトルにしただろうからね。この曲は、魔女が川に溺れてしまったという伝説が本当にロンドンであった実話なのか知りたいと思ったことから生まれた曲なんだ。それが本当かどうかはまだわかっていないんだけど、このことに関する本を読んでいて、あらゆるところを探しても、求めているものが見つからないということを歌っている曲なんだ。でも、伝説に関しては、はっきりとした結論は出なかった。誰も裏付けすることが出来なかったんだ。
──あなたは自分がとてもハッピーな時ととても悲しい時に曲を書くと言いますが、どの曲が最もハッピーな時の曲で、どの曲が最も悲しい時の曲ですか?
クリス:「Strawberry Swing」という曲が最もハッピーな曲だ。想像上の場所なんだ。ビートルズへのトリビュートでもある。最も怒っている、最もダークな曲はおそらく「Cemeteries of London」だろうな。
──来世はあると思っていますか? 「42」には「Those who are dead are not dead(死んだ人は死んでいない)」という詩がありますね。
クリス:それは僕が一番気に入っているライムなんだ。カート・コバーンのことを考えると、今も彼が生きて歌っているかのように思える。僕の頭の中ではまだ生きているってことなんだ。誰もそういったことを言った人はいない。
──楽曲「42」は日本語だという説がありますが、そうなのですか? 「42」の発音は、日本語ではdead personを意味するんですよ。
クリス:えっ、ウソだろ!? マジで? 冗談だよね?
──本当なんですよ。発音すると「死人」=dead personということになるんです。4はdeadで、2はpersonになるんです。
クリス:素晴らしい話だ! それ、いただくよ!! 本当なんだよね?
──本当ですよ。
クリス:「42」は僕の一番好きな数字なんだ。
◆「42」試聴 ※期間限定[2008年6月9日(月)18時~6月10日(火)24時]
https://www.barks.jp/listen/?id=1000022148
2008年5月23日(金)@ロンドンにて
インタビュー:EMIミュージック・ジャパン 通訳:新堀真理子
https://www.barks.jp/watch/?id=1000022149
──ニュー・アルバムの録音について教えてください。教会でもやってますよね?
クリス・マーティン(以下クリス):ほとんどはここから遠くないところにあるスタジオ「ベイカリー」で録音して、バルセロナの教会でもやった。バルセロナでのレコーディングは楽しかったよ。
──死ぬ前に、後世に残る曲を書きたいとの思いでこのアルバムを作ったと聞きましたが、そんな曲は見つかりました?
クリス:見つかってないと思う。僕たちはいつも「次こそは」と思っているからね。ネヴァー・エンディング・ストーリーだ。
──アルバムに100%満足しているわけではないのですね。
クリス:誤解しないでほしいんだけど、これ以上いいものは作れなかったよ。どの作家もソングライターも、次を求めて活動しているんだ。
──「ヴァイオレット・ヒル(Dancing Politicians)」のビデオを作った意図は何だったのですか? アイディアを出したのは誰ですか?
クリス:「ヴァイオレット・ヒル」では2つのビデオを作ったんだけど、ひとつはテレビ用で、もうひとつはインターネット用だ。テレビ用では、今のバンドをみんなに見てもらいたかった。僕たちがどういったルックスなのか、どういう衣装を着ているのかといったことをね。それから、踊る政治家の映像をまとめたビデオを作った。そういった映像をひとつのビデオにまとめたらおかしいだろうと思って作ったんだ。このヴァージョンは、あまりにも政治的でテレビでは放送しないだろうね。だから、インターネット用なんだ。
◆「ヴァイオレット・ヒル(Dancing Politicians)」※インターネット用
https://www.barks.jp/watch/?id=1000022088
──前回の米大統領選挙では民主党を支持していましたよね? 今回のビデオではオバマやヒラリーを含むいろんな人たちが出ていて、曲の中でもあなたは“a carnival of idiots on show(愚か者たちのお祭り騒ぎ)”と歌っていますよね。あなたは今の世の中は大バカ者の集まりで、信用できる人はひとりもいないと思っているのですか?
クリス:このビデオではどの政党もひいきしていないよ。だけど、ここでこっそり教えると、僕たちはバラク・オバマを支持しているんだ。
──ジャケット写真にいつもメンバーが登場しないのはなぜですか?
クリス:僕たちは過去の音楽から離れ、新しいパワーを導入しようとしている。かつて人は革命を起こすのに、宮殿まで行って、門を破って、そこを占拠していた。それで、宮殿にあるような絵画にスローガンを書いたらいいんじゃないかと思ったんだ。自分たちがアルバムのジャケットになるのは好きじゃない。ルックスがビヨンセみたいだったら別だけど。
──このアルバムがU2の『焔(The Unforgettable Fire)』(『美しき生命』と同じブライアン・イーノがプロデュースした1984年作品)と比較されることは、どう? U2には「40」という曲があって、今回君たちには「42」という曲がある。
クリス:もしU2に似ているサウンドがあるなら、「僕はU2が大好きだから、そういうふうになることもあるさ」とはっきり言うよ。ロックン・ロールの58年間の歴史があって、僕たちはそこから引用できること、学べることがたくさんある。一方、自分が完璧にオリジナルになることはないんだ。それでも、僕は構わない。インターネットが発達した今、100年もの間に存在している世界中の音楽を聴くことが出来るようになったんだ。
──今回のアルバムの中で、特に何かに影響されて書いた曲はありますか?
クリス:ああ、それだったら「ロスト!」に関してはカニエ・ウェストの「ジーザス・ウォークス」だよ。聴いてもわからないかもしれないけど。
──『X&Y』や『静寂の世界』を作って、今回もっと前進しようとしましたか?
クリス:僕たち全員が、自分たちの実力よりも知名度の方が先行しているように感じていたんだと思う。それで、本当に小さなスタジオである「ベイカリー」を購入して、というか、レンタルして、これまで使っていたトリックは使わないことにしようと決めた。いかにもコールドプレイという曲はボツになった。特にブライアン・イーノともうひとりのプロデューサーであるマーカス・ドラヴスが関わり始めてからは、そうだった。マーカスに関しては、そういった意味でブライアンよりももっと厳しかった。
──「申し訳ないけど、ブライアン、君のことは好きだけど、もういい加減にしてくれ」と言ったような状況はありましたか?
クリス:最初の2~3週間は僕たちもまったく理解できなかった。ピンとこなかった。ピアノはだめ、ファルセットもだめ、チャイムもだめとなって、ブライアンはまるで器械体操のように僕たちに音楽のエクササイズをするように指導したんだ。音楽の腕立て伏せをやらせたんだ。そうすることで、僕たちが解放されるようにね。そうしている時、僕たちはお互いの顔を見ながら、「この人は気が狂ってる」と思ったこともあった。
──有名になって得したことと、損をしたことを教えてください。
クリス:有名になって得したことは何かって(笑)? 難しいな。そんなこと、今まで訊かれたことなかったからな。名声、それ自体がくだらないものだろ? 『マダム・タッソー館』に自分たちの蝋人形が飾られるまでは有名とは思えないな。まだそうはなっていないからね。
──ニュー・アルバムは前作よりももっとダークな感じで、死や死すべき運命について歌っているけど、それは君が31歳になって年をとったからかい?
クリス:いや、僕は53歳なんだ。
──若く見えるね。
クリス:ありがとう。そういったことは13歳の頃にも考えていたよ(笑)。その時にはいい歌詞が思いつかなかったんだ。
──君が13歳の時には、黒い服を着て、ザ・スミスやジョイ・ディヴィジョンを聴いていたのかい?
クリス:そんなもんだけど、それよりもa-haとか蛍光色のTシャツを着ていたな。「Hunting High And Low」は、人生における探求についての究極の曲だ。どんなに暗い状況でも、決して負けを認めない、決して諦めないということを歌ってる曲なんだ。“I'll always be hunting high and low”、最高の曲だ!
──「Cemeteries of London」ですが、僕はこれまでにハイゲイト墓地に2度ほど足を運んでいて、君も行ったことがあると思うけれど…。
クリス:あるよ。この曲のタイトルは、主にザ・スミスの曲が影響しているんだ。ザ・スミスの曲のタイトルみたいだ。陰気すぎるタイトルかなと心配になったけど、いや、これでいいんじゃないかということになった。モリッシーもこういうタイトルにしただろうからね。この曲は、魔女が川に溺れてしまったという伝説が本当にロンドンであった実話なのか知りたいと思ったことから生まれた曲なんだ。それが本当かどうかはまだわかっていないんだけど、このことに関する本を読んでいて、あらゆるところを探しても、求めているものが見つからないということを歌っている曲なんだ。でも、伝説に関しては、はっきりとした結論は出なかった。誰も裏付けすることが出来なかったんだ。
──あなたは自分がとてもハッピーな時ととても悲しい時に曲を書くと言いますが、どの曲が最もハッピーな時の曲で、どの曲が最も悲しい時の曲ですか?
クリス:「Strawberry Swing」という曲が最もハッピーな曲だ。想像上の場所なんだ。ビートルズへのトリビュートでもある。最も怒っている、最もダークな曲はおそらく「Cemeteries of London」だろうな。
──来世はあると思っていますか? 「42」には「Those who are dead are not dead(死んだ人は死んでいない)」という詩がありますね。
クリス:それは僕が一番気に入っているライムなんだ。カート・コバーンのことを考えると、今も彼が生きて歌っているかのように思える。僕の頭の中ではまだ生きているってことなんだ。誰もそういったことを言った人はいない。
──楽曲「42」は日本語だという説がありますが、そうなのですか? 「42」の発音は、日本語ではdead personを意味するんですよ。
クリス:えっ、ウソだろ!? マジで? 冗談だよね?
──本当なんですよ。発音すると「死人」=dead personということになるんです。4はdeadで、2はpersonになるんです。
クリス:素晴らしい話だ! それ、いただくよ!! 本当なんだよね?
──本当ですよ。
クリス:「42」は僕の一番好きな数字なんだ。
◆「42」試聴 ※期間限定[2008年6月9日(月)18時~6月10日(火)24時]
https://www.barks.jp/listen/?id=1000022148
2008年5月23日(金)@ロンドンにて
インタビュー:EMIミュージック・ジャパン 通訳:新堀真理子
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