増田勇一のライヴ日記 2008年3月1日(土)KANSAI NAGURIKOMI GIG 2008@東京・中野サンプラザホール

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前々から告知してきた<JAPAN HEAVY METAL FANTASY~KANSAI NAGURIKOMI GIG 2008>を観た。というか、単純に観ただけじゃなく「堪能した」と言うべきだろう。

▲16時の会場時にはこんな感じだった場内が、▼1時間後の開演間際には文字通りの満員に。もちろん2階席もぎっしり。
当日、ステージに登場したのはMARINO、EARTHSHAKER、そして44MAGNUM(出演順)。「単なる同窓会では終わらせたくない」と口で言うだけなら簡単なことだが、どのバンドも本当にノスタルジックな心地好さだけにとどまることのない、まさに熱のこもったライヴ・パフォーマンスを繰り広げてくれた。まずは各バンドのセット・リストをご紹介しておこう。

【MARINO】(1)Midnight Believer (2)Break (3)約束の丘 (4)Brave As A Lion (5)Shake Down (6)Target (7)Faraway (8)From All Of Us (9)Impact

【EARTHSHAKER】(1)EARTHSHAKER (2)WALL (3)COME ON (4)愛の技 (5)欠片 (6)GARAGE (7)FUGITIVE (8)MORE (9)RADIO MAGIC

【44MAGNUM】(1)YOUR HEART (2)THE WILD BEAST (3)NO STANDING STILL (4)I'M ON FIRE (5)IT'S TOO BAD (6)NIGHTMARE (7)YOU LOVE ME DON'T YOU ? (8)She's So Crazy. Make Me Crazy (9)STREET ROCK'N ROLLER (10)I JUST CAN'T TAKE ANYMORE (11)LOCK OUT (12)TOO LATE TO HIDE 
《encore》(E1)SATISFACTION(session)

当日、会場は文字通りの満員状態。予想通り、オーディエンスの平均年齢はかなり高めではあった。が、中野サンプラザホールの広い場内に充満していたのは、緩やかにレイドバックした空気ではなく、「この瞬間の到来を待ち焦がれていた!」という熱気だった。全席指定であるにもかかわらず、開場前から長い入場列ができていた事実も、あらかじめファンの飢餓感の高さを物語っていた。また、敢えて名前は伏せておくが、彼らの影響下にある世代の同業者たちのなかには、正午過ぎに開始されたリハーサルの段階からずっとこの日の一部始終を見つめていた者たちもいたし、2階席に多数詰め掛けていた同世代ミュージシャンたちのなかには「次は俺たちがこの熱を引き継ぐ番だ」と感じた人たちも確実にいたことだろう。

例によって、ライヴ自体の細かい流れについてはこの場では触れずにおく。が、とにかくバンドもファンも素晴らしかった。少しだけ具体的なことを言うならば、“個”のぶつかり合いともいうべきMARINOのステージに漂っていた独特の緊張感は、まさに往年の彼らのライヴを思わせるものだったし、LEOの声量がかつて以上に豊かなものに感じられたことも付け加えておきたい。また、今回の出演者中、近年もコンスタントな活動を続けてきた唯一の存在であるEARTHSHAKERのステージは、“現役感”なんて言葉を安易に使うことが躊躇われるほどに説得力に満ちたものだった。黄金律を踏まえた“鉄板”なセット・リストに2曲だけ組み込まれた新曲、「愛の技」と「欠片」(ともに3月12日発売の『QUARTER』に収録)が、少しの違和感もなくそこに溶け込んでいた事実もそれを象徴していた。

そして44MAGNUMのステージは、涙無しでは観られなかった。正直、オープニングの瞬間、PAULの「オマエたちのケツを蹴り上げるぜ!」という声が聞こえてきただけで震えをおぼえたし、久しぶりに遭遇したBANが、かつてと同じたたずまいでステージに飛び出してきたのを目の当たりにしただけで涙腺のダムが決壊した。「この曲よりもあれが聴きたかった」とか、「あそこのソロ・パートはこうじゃないほうが良かった」とか、そんなゴタクを並べる気がまったく起こらなかった。病魔と闘っているPAULのMCは、薬の副作用もあって、かつてのように滑らかではない。が、彼の吐く言葉のひとつひとつには重みが感じられたし、何よりも、あの“声”が健在であること自体に感慨をおぼえずにはいられなかった。同時に、PAULをサポートしながらツイン・ヴォーカルを聴かせた彼の実息、STEVIEの歌声には“水よりもずっと濃いもの”の強さを感じさせられた。

終演後、各バンドのメンバーたちは、異口同音に「楽しかった」「気持ち良かった」と言い、「これを、ここで終わらせてはいけない」と語っていた。そして、学校の同窓会並みにたくさんの人が集まった打ち上げの席でも、思い出話ばかりではなく未来の話に花が咲いていた。『NAGURIKOMI』はまだまだ終わらない。ロックがなぐり込みをかけていくべき現状がそこにあるかぎり。というか、少なくともこの日の出演者たちには、何よりもまずこうした機会を関西でも設けるべき責務があると思うのだが、いかがだろうか?

増田勇一
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