RAG FAIR、『カラーズ』特集内インタビュー

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20代で出せる最後のアルバムということで、30歳っていうことをものすごく意識した(引地)

――全員が多忙なRAG FAIRだけど、アルバム『カラーズ』を作り始めたのはいつ頃?

引地洋輔(以下引地):2007年1月のNHKホールのライヴで「夏風便り」を歌って、その数日後にその曲をシングルとして録り始めたんです。それから11月まで毎月のようにスタジオに入ってましたね。ある程度録って3ヵ月後にまた続きを録る、という曲もありました。

――『カラーズ』というタイトルにはどんな想いを?

引地:最初にレコーディングした「夏風便り」のでき上がりが自分たちでも気に入ってたので、アルバムも“季節”をキーワードにしたんです。『カラーズ』というのは、季節ごとの色とかその中での心の移り変わりをイメージしています。他の曲については、「夏風便り」の主人公についてもっと掘り下げた曲を作りたいと思ってた。だから『カラーズ』は「夏風便り」から派生した曲を集めたアルバムという感じなんです。

――収録されている12曲は、とても多くの曲の中から選んだそうだね?

引地:聴いたデモは100曲以上ありました。それを僕が最初に聴いてセレクションしたので、今回はとくに僕の好みが大きく出てると思います。自分が10代のときに好きで聴いてたアーティストたちからもいろいろ曲をもらったんですが、アルバムのテーマに沿うように話し合って作ってもらったり、歌詞を直してもらった曲もありました。

――とくに細かいところまで話し合ったのはどの曲?

引地:「早春ラプソディ」ですね。主人公が「夏風便り」の心境に至るまで、前2枚のシングルではどうなっていて、この二人はどういう関係でどういう付き合いがあって、みたいなことをずいぶん話し合いました。

――ストーリーがつながってるんだね。

引地:そうです。10月に出したシングルの「赤い糸」が失恋のどん底、「早春ラプソディ」で少し前向きになって、さらにそれをちょっと懐かしく思ってるのが「夏風便り」。僕は全部そうなんですよ。主人公の通勤はどうなんだろう、飲み屋で友達と何をしゃべるんだろうとか色々考える。

――その主人公は引地さん自身とも重なってる?

引地:ええ、かなりかぶってますね。

土屋礼央(以下土屋):もうまったく一緒です(笑)。

引地:僕はもうすぐ30歳になるんですけど、20代で出せる最後のアルバムということで、30歳っていうことをものすごく意識した。30歳って、それまでの若い日々をかなり振り返ったりする時期なんじゃないかと僕は思うんです。

――RAG FAIRといえばやっぱりハーモニーだけど、ハーモニーは最初の段階からできてるの?

引地:いや、色々パターンがあります。この曲はアカペラでいこうと思って最初からハーモニーありきで曲を作ることもある。でも基本はまずメロディと歌詞が一番よく伝わるようにするところからスタートして、次にバンドのアレンジができて、それからそこにコーラスをどう足すか、あるいはどう引くかを考えます。今回は、足し過ぎて間引いていく作業のほうが多かったかも。

――「ピリオド」とか「Beer Friends」は楽器が入っていないアカペラだけど、やっぱりこういうアカペラにこだわりがある?

引地:いや、とくにこだわるということはないです。今までだとギター1本とかピアノ1台あればあとはコーラスで、っていう感じだったけど、今回はそういう制限をなくして、入ってたほうが伝わるなら何でも使う、コーラスもその一部っていう感覚です。

――小林建樹さんの「告白」をはじめ色々な方の曲が入ってるのに、どれもRAG FAIRらしく感じるね。RAG FAIRらしさを出すためになにか意識してる?

土屋:間奏が間奏らしくないっていうのがRAG FAIRらしさのような気がしますね。普通に一人が歌っているけど、1番が終わったら待ってましたとばかりにコーラスの男たちが出てくるっていう。僕が主旋律を歌うときも、彼らの間奏にかけるプライドみたいなものをいつもすごく感じるんです。楽器がないアカペラのときより、普通の歌でコーラスを歌うときのほうがみんな研ぎ澄まされてる。だから僕、間奏は誇らしいですよ。

引地:そこはデモテープにない部分ですからね。曲を受け取ってからRAG FAIRで作り出す部分。間奏なんて下手したら歌詞カードにも乗らないけどっていうところなのに、そこを誰かが中心になって歌詞と照らし合わせながら色々練っていくんです。

土屋:もう加藤(※加藤慶之)と健一(※荒井健一)なんて間奏になると“こち亀”のバイクに乗った本田さんみたいに豹変しますから(笑)。加藤なんか“今日は体調が良くないです”とか言って間奏だけのために一日ずらしたりするし(笑)。

引地:こう歌うだろうなっていうイメージがあって作ってる部分もあるんで、コーラスは彼らにおまかせってことも多いです。

土屋:それぞれの特徴とか、どこでテンションが上がるかっていうのがわかってるからまかせられるんですね。今回の洋輔プロデュースでうまくいった要因はそこです。それぞれがヴォーカリストだから、昔はやっぱりみんな自分の色を出したくなってたんですけど、今回はうまく配分できた。ただこの人、レコーディングになるとスイッチが入っちゃって、もう誰にも止められなくなっちゃう。

――引地さんのどういうところが止まらなくなるの?

引地:CDってライブと違って確実に残るじゃないですか。これまでは完成後に聴いて、なんでああしなかったかとか、ああこんな方法もあったか、って思っちゃったりしてた。それを今回なくしたかったんで、細かいところまでこだわりましたね。

土屋:彼、けっこう空気読むタイプなんですけど、レコーディングになるとほめてくれないんですよ(笑)。OKだけどもっといけるだろ? とか。

――厳しいプロデューサーだったんだ。

土屋:一番すごかったのは、僕が録り終わったときに5秒くらいコレ(※ミキサーのトークバック)を押さない(笑)。すぐOKって言ってほしいのに。録り終わって周りの人たちとまずゴニョゴニョ話してから“OK”って。その5秒に何があったんだ!(笑)

――そういう厳しさの中で作ってきたからこそ、満足のいく仕上がりになったんだね。

土屋:そうですね。洋輔なんか、自信を持って自分が聞きたいと思えるアルバムはこれが初めてだって言ってた。あんまり断言する男じゃないんですけど、今回はこの男がそう断言してくれているというのは、これほど頼もしいことはなと思いました。あと、元来声を張り上げるのが嫌いなんですよ、このオトコ。

引地:僕ダメなんですよね、熱い感じって。なんか一歩引いちゃう。

土屋:それがねえ。このオトコは熱かったんですよ、武道館の時と、それとこの『カラーズ』に関しては。

――それは礼央さんの影響なのかな?

引地:それはものすごく受けてるでしょうね。音楽もそうだし発想とかも。

土屋:たとえばどんな影響を受けましたか?(笑)

引地:奥村と土屋さんって、僕にとってメンバーの中では特殊な二人なんです。彼らは僕が見てこなかった世界を見て育ってきていて、なんでそんなところに注目するのかというところにこだわる二人。彼らを見て得るもの、発見するものは多いですね。

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